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<号外>EURO 2024 準決勝 オランダvsイングランド レビュー

ヘビー級ボクサー対決の様相。互角の打ち合いの果てに・・・

個々の技術、身体能力、またチーム戦術、戦術理解度、勝利へのハングリーさなど、ほぼ全ての要素において互角。体格でややオランダが、アジリティでややイングランドが有利か、という印象、先入観に過ぎない程のわずかな違いがあるだけで、まさにサッカー強国同士ががっぷりよつに組んだ、
「重厚」な試合でした。

6分、まさかの時間帯に早くもゲームが動きます。オランダ、チャビ・シモンズが虚をつくようにバイタルに持ち込み、身体を投げ出すようにシュート。瞬発力、キレを見せつけるような、スピード、コース共に素晴らしいものでした。

対するイングランド。13分、べリンガムのサカへの見事なパスから最後はケインの浮き球ボレー。なんと判定はPKになります。
このボールに対するドゥフリースの対応は自然なもので、スローで見返しても足はボールに行っており、飛んだボールの勢いからしてもケインの足に強くヒットしたとは思えません。ケインのやや大袈裟な演技、強国としてのわすかな "格” の差によって生まれたPKだったように思います。

問題のシーン。もしこのシュートが決まっていたら、
ケインは痛がる姿を見せただろうか。

試合を通じて感じていたのですが、レフェリーの笛が若干イングランドよりだったのではないでしょうか?
「なんで今のがオランダのファウル?」 というシーンが多々ありましたし、ゲームの面白さが中断されてしまうようなレフェリングも散見されたように感じます。いずれにしても、このVARでのPK判定はオランダにとっては不運としか言いようのないものだったと思います。

強国同士の対決を”エンターテイメントとして”
上手く演出してほしかった。


守備プランを変更したオランダ。勝負を分けたのは・・・?

後半に入り、オランダは守備の洗練度を上げます。ライン間、スペースへの侵入を許さないような意識を持ちつつ、ボールに対し人垣を2重、3重に作る隊形を保つ、陣形をよりコンパクトにする守備コンセプトを打ち出したのです。
この辺りは流石守備の名手だったクーマン監督の手の打ち方だったと思います。攻撃、アイデアの起点となるフォーデンやサカ、べリンガムらの力を封じ込めるコンパクトネス、中から外への守備ベクトルの強度を高く保つコンセプトの徹底、またハーフタイムでそれら戦術変更を見事に体現するオランダ代表の選手達には大きな賞賛が与えられるべきでしょう。実際にそれまでのゲームの様相が変わり、オランダがポゼッションで上回る展開になる程にまで機能したのですから。

攻撃のキーマン、サカ。
試合を通じてオランダの脅威であり続けた。

後半はガクポを中心に、オランダ攻勢の時間帯が続きます。 
勝負を分けたポイントですが、80分のイングランドの選手交代にあったのではないかと思います。
【ケイン、フォーデンOUT、ワトキンス、パーマーIN】
機能しなくなったエース格の2人から、飛ぶ鳥を落とす勢いを見せる切り札へ。展開、状況を見極めた上での効果的なカードの切り方に、サウスゲイト監督の大胆な勝負度胸を感じました。

終盤まで高い集中力を切らさなかったオランダですが、あのコンパクトネスを保つのにもやはり脚を使います。相手ボールへの寄せが次第に甘くなるのが隠せなくなっていきました。選手交代によるイングランド攻撃陣のフレッシュさにも、相対的に自分達の消耗度をより大きく感じた事でしょう。そして先に触れたややイングランドよりのレフェリング。最後まで勝利への執念を持ち続けたイングランドに比べ、メンタル面でほんの少し見劣りしていたように感じました。

ウォーカーに追いつかれたガクポ。
1歩か2歩先に触れれば、GKと1対1だったが・・・

意地とプライドを示し、勝ち上がり続けてきた強国同士の決着は何が分けたのでしょうか?
イングランドの、交代策にも表れる勝利への執着心、オランダの、守備の強度を高めた事によるスタミナ面の消耗、レフェリングに対するメンタル面でのほんのわずかなブレ・・・
90分のワトキンスの渾身のシュートは、目には見えないほんの小さな差によって生まれたものだったのではないでしょうか。


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