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<号外>EURO2024 決勝 スペインvsイングランド レビュー

超ハイレベルな攻防 前半戦は今大会のベストバウト

65,600人の観客を飲み込んだベルリン・オリンピアシュタディオン。
最高の舞台に上がる歴戦の雄達。予想通りの、いやそれを上回る超ハイレベルな技術戦が繰り広げられ、前半の両国の攻防は今大会間違いなくベストバウトと言えるものでした。



緩急自在、高い予測能力、絶妙なポジショニング、場所とタイミングを間違わない仕掛けetc… ピッチ上22人誰もが高いサッカーIQ、技術を備えているのが前提となっているので、どの局面を切り取ってもその攻防に心地良いリズム、期待感、緊迫感が満ち満ちているのです。

大きな試合の前半にありがちな、相手の出方を伺う、スタミナ温存、しっかりゲームに入る、というような生ぬるいメンタルは一切ありません。対戦経験も多いメンバー同士、「一瞬のミスが命取り」 を肌感覚で熟知している双方にとって、そんな ”安全運転” では逆にやられてしまう、という感覚なのでしょう。ホイッスルから全開、スリルを楽しむかのように次々と高い技術、パフォーマンスを披露する22人に、目を奪われ、息を飲み、時間の経過を忘れさせられた、そんな濃密な45分だったのではないでしょうか。

サイドで対峙するニコとウォーカー。
スピードを武器とする2人の対決は見ごたえ充分だった。


華麗に、自在に、躍動したLa Roja(ラ・ロハ)

後半早々のニコ・ウィリアムズの得点を号砲とするかのように、ラ・ロハが
躍動し始めます。中盤の底から下支え、常に味方との数的優位を影武者のような動きで作り続けるスピメンディ。
ヤマルを如何に活かすかを意図し、時には近くでサポート、時には偽サイドバックとして中盤に立ち位置を取り、アイソレーションを機能させようとしたカルバハル。
相手中盤ラインの門の背後を取り、ボールを受け、ダイレクトで、あるいは踊るようなターンからのボールタッチで効果的にボールを散らすファビアン・ルイス。
豊富なタレント達を活かそうと、1stDFとして、あるいは2度追い、3度追いも厭わずディフェンスに献身し続けるモラタ。

決勝に復帰したカルバハル。
高い戦術眼と多機能性を発揮した。

左からニコ、中央からはダニ・オルモ、右からはヤマルというクラック達が躍動できたのは、その周りで陰に陽にボールを追いかけ続ける先の4人のプレーが支えていたからだと思います。

また、なんと言ってもフットボールはボールが中心の競技。前半は互角だったとはいえ、ボールの動かし方ではやはりスペインの方が1枚も2枚も上手でした。強靭なフィジカルを誇るイングランドの選手達も、次々とボディブローを喰らうかのようにスタミナを削られていきました。

時間の経過につれ、ゲームの様相も明らかにスペイン優位に傾いていきます。イングランドの攻め筋がほぼ右サイドのサカだけだったのに対し、同等の攻撃力をスペインは左、中央、右と3つも備えているのです。自在にボールを動かし続けるスペインに対し、対応が追い付かないイングランドの守備陣が綻びを見せた2回の失点シーンは、同じような縦パスがきっかけとなったものでした。

技術の粋を見せつけたダニ・オルモ。
ボール1個分のスペースがあれば突破を試みる。

46分、カルバハルからヤマルに入った右アウトでのダイレクトパス。
86分、ダニ・オルモからオヤルサバルに入った同じく右アウトでのパス。

虚を突く、敵の裏をかくパスを最前線に入れる事ができると、絶対的に優位
に立ちます。なんと言っても受け手が敵DFが寄せ切れていない状況で前を向けるからです。ディフェンスは後手後手の対応をせざるを得ません。
ニコが、オヤルサバルが、ダイレクトシュートを決めた2つのゴールシーンはまさに ”一撃で仕留めた” と喩えられる、素晴らしいものでした。

最後まで諦めない姿勢を貫いたイングランド。
推進力、圧力はやはり圧巻だった。


進化を求められる選手

今回のEURO決勝という檜舞台で特に輝きを放ったスペインのニコ、オルモ、ヤマル、イングランドのべリンガム、サカという面々を観て考えさせられたのが、どういった能力が、どれ程の基準で求められていくのだろう、という事です。フットボールシーンの最前線のキャッチアップと、今後求められる選手像について最後に考察していきましょう。

まず大前提となるのがアスリートとしての能力です。
90分、105m×68mという時空間が、大会が進むにつれ短く、狭く感じられたのではないでしょうか?ロスタイムを見積もれば100分、ピッチも当然のごとく全領域をマネジメントできる身体能力が前提として求められる昨今の流れが変わる事はおそらくないでしょう。

現代サッカーの象徴べリンガム。
随所に輝きを放った。

そして戦術的な柔軟性と対応力です。
システム、ポジションや役割、状況が刻々と変化していくのが当然となっている中、シームレスなのはフットボールでは当たり前の事であって、5レーンや4局面などというワードは近い将来、死語同然となるでしょう。あらゆる戦局に臨機応変に対応でき、しかも問題解決し局面を打開できる、そんな選手が先発メンバーに顔を揃える事になると思います。

決勝でも活躍した17歳ヤマル。
高い自在性にルーク・ショーは終始手を焼いた。

最後に「閃き」、「潜在能力の発揮」です。
ベタなワードですが、決定的場面で発揮されるプレーには予測を超えた、
ある意味動物的な身体性、感性が発露している場合がほとんどです。
そのようなシーンでは脳、身体を含め潜在的に眠っている能力が発動し、現況ではゴール前という極限的時空間がそれを引き出す形になっていると思いますが、これからはピッチのあらゆる場所や局面でそのようなプレーが求められていくような気がします。
フットボールの最前線は人間の能力の進化を促す程のテンションを持つ、超ハイレベルな舞台になっているのではないでしょうか。



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