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The girls make me happy

この記事はエイプリル・ゴースト(以下A)とジューン(以下J:Aのメンター的存在だが、多くは謎に包まれている人物)との対話形式でお送りします。

A:Jさん、この2ヶ月くらいハマりものを探した日々は無駄じゃなかったかもしれません。
J :なに⁈ この前は「自分が何をやっているかわからなくなった」って嘆いてたのに…?
A:…ですね。ここにきて「これは来た!」っていう手応えを感じています。
J :なんだ〜。しばらく抜け殻状態になるんじゃないかと心配してたけど、よかったじゃんか。
A:私としても多少の諦めはあったんです。土地勘のないところで彷徨ってはみたものの何処にも辿り着けない不毛な感じがしていて。そうなってしまったのはやはり探す方角を間違えていたからなんじゃないかと気づきまして…。
J :それで、Aちゃん本来の守備範囲に引き戻したんだ?
A:そうですね。あちこちに手を出した挙句、自分のキャパの狭さを思い知らされましたね…(苦笑)。
J :まぁさ、実際試してみないと分からないからね。Aちゃんも自分のやり方を再確認できたんなら、めでたしだ。で、その収穫は何なの?
A:やっぱり音楽にありましたね。日頃から頼りにしているライターさんが書いている音楽ブログのツイッター(@monchicon)を何気なく見ていたら、Horsegirlというバンドにぶつかったんです。そこには私的に引っかかるワードがたくさんあって……。
J :ふ〜ん…。ホースガール……
A:あっっ! 今和訳しようとしてるでしょ。
J :ふふっ、そうね。頭に浮かんだのはネット広告なんかでよく見る育成ゲームの名前なんだけど(笑)。
A:もうそうなっちゃいますよね(笑)。そのゲームとの関連性はほとんどないと思いますけど。でもピチピチでカワイイところは共通点でしょうか。あ、こんなこと言うと、若い女性に対する性差別的な発言だと捉えられちゃうかな……でもこのHorsegirl、本人たちがそれを気にするかどうかはさておき、少し前まで高校生だったというんだからむしろそう表現して然るべきだと思うんですが。
J :新人さんなの?
A:はい。アメリカ・イリノイ州出身の女性3人組です。バンドは2019年あたりから活動していて、これまでに自主制作で音源をリリースしてるみたいですけど。老舗レーベル・マタドールと契約して6月にデビューアルバムをリリースしたばかりです。デジタルだけでなく、フィジカル(CD)も発売するっていうから、早速予約しちゃいました!現時点でまだ手元にないんですけど、もう早く聴きたくて仕方ないです!
J :おぉ、結構な熱量だね。一体どんな音楽なの? 
A:私はmonchiconのツイッターから辿って彼女たちの曲 “World of Pots and Pans” のMVを見たんですけど、これにやられました。音も好きだし、歌声も好き。このギターサウンドはもうモロに私の好み。プロデューサーに起用した人物はソニック・ユースやダイナソーJr.を手掛けてたらしいから、私がHorsegirlのサウンドに90年代前後のインディバンドのような懐かしさを覚えてしまうのも無理はないなって感じで。

Horsegirl/World of Pots and Pans

A:あと、先のツイッターに「“Worlds of Pots and Pans”の歌は、Gang of Fourの“Damaged Goods” の歌詞《Sometimes I'm thinking that I love you, But I know it's only lust》のloveとlustの位置を入れ替えて歌っている」みたいなことが書かれていて、思わずGang of FourのMVまで見ちゃうし(これもむちゃくちゃカッコイイ!)。どちらの詞も真なりだなぁと思いながら両方のビデオを何度も見返してしまいました。Horsegirlの歌詞やサウンドを掘り進めていくと、各層ごとにお宝が埋まっていて、しかもそれら全部が私の好きなものと繋がっているんですよね。
J :なるほど。Aちゃんが親愛しているもののオマージュ・オンパレードなんだね。

Gang of Four/Damaged Goods

A:Horsegirlの音楽は私をノックアウトするために現れたとしか思えない。
J :はは(笑)。じゃあさ10代がよく陥る「この曲は自分のことを歌っている!」っていう感覚はあったりするのかな? 共感のあまり自他の境界線が消滅してしまう、一時的な錯覚。
A:ん〜……確かに何かがシンクロするような感じはあるけど、ちょっと違うような。「私のための曲だ」とは思うけど、「私のことが歌われている」とは思っていない…かな。ただ、彼女たちの2.5倍の年齢の自分がHorsegirlの曲にどうしようもなく惹かれてしまうのは、未成熟なティーンの部分が私にもまだ残っているということなのかな…(苦笑)? あるいは彼女たちの方が実はティーンの仮面を被ったミドルエイジだったりして?
J :(笑)。若い心を失わないのはいいことじゃない? そういう瑞々しい気持ちが蘇ってくる機会があと何回訪れるのかって考えたら、今巡ってきたそれを楽しまない手はない。
A:そうですかね。
J :そうですよ。それに不惑超えたら若者の音楽聴くべからずってもんでもないだろうに。
A:それは本当にHorsegirlの曲が良いから。年齢関係なく聴けるっていうのはありますね。デジタル盤1曲目の「Anti-glory」もいいんですけど、アルバムには入っていない2020年のシングル(?)の「Ballroom Dance Scene」は若かりしBelle and Sebastianの曲を彷彿とさせるし、そのカップリング曲「Sea Life Sandwich Boy」を聴いた日にはもうHorsegirlに恋せずにはいられないですよ。
J :恋と認定しちゃったのね(笑)。
A:いやもう、それと同等の感情が芽生えてますね。
J :調べてみるとHorsegirlが結成されたイリノイ州ってTouch&Go、Drag City、Thrill Jockyとか良質レーベルが立ち並んでる環境じゃんか。良い音楽が生まれて当然の土地柄だよね。
A:そう、そうなんです。そういうところもまたプラスポイントというか。彼女たちの環境が羨ましくもあるけれど。
J :Aちゃんは楽器弾こうとか、バンドやろうとか考えたことなかったの?
A:う〜ん……。そう言われると、なんでやらなかったんだろうって思いますけど。それこそ10代の頃にHorsegirlみたいなバンドに出会えていたら、何かしら音楽的なことやっていたかもしれませんね。というのは言い訳で、やりたかったくせに、「私にはムリだ」と行動する前に諦めていた気がします。私の学生時代は思い出すほどのこともないくらい空っぽだったような…。
J :その空白の部分を今埋めようとしてるのか…?
A:多分そうですね。10代の時に味わえなかった感覚を取り戻そうとしているのかも、Horsegirlに同化して(苦笑)。やばい、私けっこう溺れてますね。


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