そこのみにて光輝く(2014年)

画像1 そこのみにて光輝くは佐藤泰志原作の小説を、呉美保監督が映画化した作品。
画像2 仕事もせず、パチンコや散歩でダラダラと毎日を過ごしている達夫(綾野剛)。ある日、火を貸してくれとある若者に声をかけられ、懇意になり家に招かれるが…。ブリーチして根元が伸び切った髪の毛、「○○しろや〜」「○○べや〜」など、田舎のヤンキー風味ただよう方言。ガサツで落ち着きのない拓児(菅田将暉)、いわゆるDQN臭プンプンw
画像3 座れと言われるがままに腰を下ろした達夫。奥から出てきた姉の千夏が作ったチャーハンを、フライパンごとこれまたガサツにかっ喰らう拓児w しかも口にしたスプーンで達夫によそい、食べろと言う。達夫、若干引いてるしww 引き気味でも、受け身ながらにちゃんと「美味いです」と礼儀正しい達夫www 隣の部屋からはじいさんの呻き声…「和子〜ぉぉぉ、か〜〜〜ずこ〜〜ぉぉぉ〜〜!」カオスです…。
画像4 千夏は海辺に散歩に出た達夫を追ってきた。何の仕事してる?結婚してるの?などかなり達夫に興味ある素振りを見せる。出会った日にいきなり貧しくて雑然とした実家の様子や、脳梗塞の父親の性処理を母が受けなければいけない環境を否応なしに見られる羽目になってしまった。その家庭の恥部を「驚いた?」と言って弁解したりするあたり、恋愛対象としてかなり意識している。達夫に幻滅されたくないのね、いじらしいですね。やさぐれ女の顔から一気に無垢な少女の顔に。この辺の演じ分けが秀逸な池脇千鶴、さすがです!
画像5 千夏は昼間は週3でイカの塩辛工場でパートとして働き、夜はスナックの一室で売春をして僅かばかりの副収入を得て、金銭的にギリギリな生活の足しにしている。ところが、ある日酔っ払ってくすぶった達夫がたまたまそのスナックを訪れ、売春していることがバレてしまう。達夫「いくら?」、千夏「8000円」…そこでフッと笑い出す達夫に怒り狂う千夏。達夫にしたらマジかよ?wくらいの笑いだろうが、もしかしたら恋愛になるかも?と淡い期待を抱いていた千夏には絶望感しかない。知られたくなかった…でもこれが私、どうにもならない。苦しい。
画像6 千夏は地元の有力者である中島の愛人でもあった。拓児の日雇い仕事も、中島が経営する造園会社の端仕事をあてがわれたものである。ささいな諍いごとからカッとなって同僚を刺した拓児は仮釈放中で、中島はその身元引受人としても拓児の面倒を見ている。雁字搦めな生活から逃げ出すことができない姉弟の行く末は、どこまでも暗い。
画像7 スナックでの一件で千夏に謝りたいと大城家を訪れた達夫。海水浴に行こうと誘ったが、千夏は1人で行けば?と素直に応じてくれない。しかし、諦めて帰ろうした達夫を止め、結局誘いに乗った。達夫は仕事のことを千夏に話し、2人は互いに心を許し始める。水中で戯れる2人。終始暗いストーリーの中で唯一と言っていいくらい健康的で明るいシーン。楽しそうな2人が子供みたいで可愛い…。
画像8 達夫はかつて石を爆破して採石する仕事の管理者であった。仕事仲間の後輩に急ぎの仕事の指示を出し、誤爆事故が起こった。責任を感じた達夫はそれ以来仕事に戻れなくなり、自暴自棄な生活から抜け出せずにいる。
画像9 事故で石の仕事を離れて以来、罪の意識で戻ることができない達夫を気にかけ、いつも声をかけてくれる仕事仲間の松本から食事に誘われ、拓児と連れ立って行く。しかし事故のシーンがフラッシュバックし、達夫は取り乱してしまう。拓児は朝まで達夫の側に居てやる。石の仕事をやりたいから連れて行けと簡単に考え、しつこく迫る拓児に「お前には無理だ」とイラついて追い返す。真っ当な人間であるがゆえ、仲間を亡くした達夫には、無邪気で安易な拓児の言動が腹立たしかったのだろう。
画像10 事故の場面に何度もうなされ、トラウマを克服できない達夫は、やりがいのあった石の仕事に本当は戻りたくて仕方がない。千夏と付き合い始め、中島との不倫や体を売る仕事を辞めさせたいと思い始めている。
画像11 拓児に中島の居場所を聞き、千夏と別れてくれと直談判しに行く。拓児が達夫を連れてきたことに憤り、2人を殴り倒す中島。達夫は中島の手から千夏を解放しようと真剣になっている。この帰り道、達夫は拓児が石の仕事に就くことを許した。
画像12 これから家族になる彼らのささやかな祝杯。こちらもニヤニヤワクワクしてしまいます。拓児の興奮した嬉しそうな顔!
画像13 達夫は松本に「家族を作りたくなった、仕事に戻りたい」と口にした。ようやく前を向いた達夫の波に乗っかるように、拓児も一緒に石掘の仕事をする!と目を爛々とさせていた。
画像14 達夫と一緒になることを決意し、体を売る仕事を辞めた千夏に依然として付き纏う中島。拓児の身元引受人である立場をいいことに、拓児の仮釈放が無くなってもいいのか?と千夏を脅し、車に乗せる。
画像15 車は街から遥か遠ざかり、人気のない場所に連れて来られた千夏。車中には重い空気が流れる。相変わらず千夏に関係を強要する中島。やってやるから早く済ませろと反抗的な態度を取る千夏。気丈に振る舞うものの、中島の乱暴なセックスに大声で泣き喚く。体を売る商売も辞め、もう達夫にしか許したくない千夏の心の変化が現れた衝撃的なシーンである。
画像16 石の仕事の件で達夫と松本との打ち合わせから帰ると、千夏の顔に傷ができている。中島にやられたと知ると、今までの我慢が爆発した拓児は家を飛び出した。花火と祭囃子の音の中、拓児は中島の元へと向かった。祭会場で中島に千夏のことを侮辱され、ついに理性が壊れた拓児は刺し殺すつもりで中島を襲った。
画像17 絶望の中、中島を刺した祭会場から逃げ出した拓児。達夫の家の前で茫然と達夫の帰りを待っていた。達夫は衝動的に馬鹿な行いをした拓児への怒りがおさまらない。
画像18 石の仕事一緒にできなくなったと、泣きじゃくる拓児の悲しみをしっかり受け止める達夫。千夏を養うために石の仕事に戻る選択をしたり、売春を辞めさせたり、未熟な拓児を正しく導いたり、過去の作品にはなかった父性に満ち溢れた剛くんが何とも頼もしく思えた。
画像19 ひととおり拓児を殴った後、2人でタバコをふかすシーン。それは義兄弟として一生付き合っていく誓いの盃を交わした瞬間のようにも思える。
画像20 主演の綾野剛、助演男優・女優の菅田将暉、池脇千鶴らは、国内外の幾多もの映画賞を獲得しました。淡々と進むストーリーですが、ディテールを説明せずとも言動や表情から人物描写や情景が丁寧に表現されており、音楽の効果などもよく考えられている優れた作品です。私個人的にも心に残る一本となりました。
画像21 共に経た絶望からの再生。ラストの微笑み合う2人の表情が最高。この2人に幸あれ!と願わずにはいられない。

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