はさみ hasami(2012年)

画像1 はさみ hasamiは理容美容専門学校を舞台にした青春群像ドラマ。監督は光石富士朗。自己の技術鍛錬の過程で悩みを抱える生徒役の弥生を徳永えり、その生徒に真剣に向き合う講師役を池脇千鶴などが演じる。
画像2 東京・中野が舞台となっていて、窪田理容美容専門学校が全面協力しています。理容美容専門学校をテーマにした映画はすごく珍しいと思いますが、理容美容業界でなくとも若い頃に自分が憧れた世界に入ってみたものの、思うように行かなかったり、本当にこの道で良かったのか進路を見つめ直してみたり、家庭の事情や人間関係に悩んだ経験のある人なら共感できるシーンが多々あると思います。人間味のあるストーリーでとても良い映画だと思いました。
画像3 久沙江先生役の池脇さん。こういう落ち着いたお姉さん役、姉御的役が特にいいですね。なんだろう、安心感というかオカン的な懐の深さがある。
画像4 学生の頃の久沙江も教えたベテラン先輩教員の築木先生を演じるのは竹下景子さん。思い悩む生徒たちに向き合う久沙江に常に的確なアドバイスを送る。
画像5 弥生(徳永えり)はカットの技術がなかなか上達せず、思い通りにはさみを動かせないことに悩んでいた。
画像6 いつも実習室で1人黙々とカットの練習をするいちこを演じるのは、お笑いコンビ大好物のなんしぃ。独特の存在感と演技が光ってます。
画像7 はさみ捌きがとても上手ないちこを見て、弥生はそのコツを聞いたりしているうちに2人は打ち解けて親友になる。しかし、いちこは経済的な問題で学校を辞めざるを得なくなってしまう。いろんな事情で皆自分と真剣に向き合っている。本当に自分の周りにいそうなリアルな人物設定もこの映画の良さだと思います。
画像8 さて剛くんは弥生の彼氏役で登場。ウェブデザイナーとかグラフィックとかそういうお仕事かしら?アーティストにありがちな、モノが少なくておしゃれ風味な部屋に住んでいます。
画像9 弥生とのデートでもちょっと繊細でめんどくさそうなピリついたシーンが出てきます。入った居酒屋で熱く語り合う見ず知らずのサラリーマンに絡んで説教したりと、何かと困ったヤツだ…ロン毛も板について、こういう不安定な若者の役、似合いすぎ(笑)
画像10 仕事を認めてもらえずイライラする亮輔と、学校をサボりがちになっていた弥生。亮輔はストレスから心を病み、電車の中で女性に抱きついて痴漢で捕まってしまう。お互いに将来や仕事のことを見つめ直そうと話し合います。亮輔は仕事も辞めて田舎に帰ってのんびり暮らすことを選択します。
画像11 自分にはこの仕事は向いていないんじゃないかと、諦めそうになっている時、久沙江が親身になって相談に乗ってくれたことをきっかけにやる気を出し、苦手意識を克服して自信をつけていく。やがてコンテストに向けて練習を始めた弥生。
画像12 落ち着きがなく、情緒不安定な洋平(窪田正孝)は授業中に他の学生と喧嘩したり、学校に来なくなったりと先生からも心配される存在。高校時代は引きこもっていたり、人付き合いがあまり得意でないようだ。
画像13 実は洋平は、父親が再婚して幼い弟が生まれたことで複雑な心境となっていたのだった。美容室を営む叔母さんにも相談した結果、昼間は叔母さんの美容室で見習いとして働いて、面倒を見てもらうことになった。学校は昼間のコースから夜間に変更し、国家試験を目指す。自分や人とじっくり向き合う機会を得た洋平は、ここから飛躍的に成長していく。
画像14 実家に帰った洋平を温かく迎え入れる父の再婚相手であり、洋平の新しい母親。弟を抱いて「赤ちゃんてあったかいんだな…」と呟く洋平。今まで複雑だった思いが溶ける瞬間。このシーンが本当に秀逸。窪田正孝の繊細な演技が素晴らしいです。とても静かで淡々と進むストーリーですが、前向きな気持ちになれて、ほっこりするような優しい映画でした。

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