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【2020年版】台湾越境ECの現状と広告代理店が教えてくれない苦戦話

こんにちは!

台湾でデジタルマーケティングの会社の代表を務める applemint 代表の佐藤です。
applemint は主に現地の日系クライアント及び越境EC を運営しているクライアントのお手伝いをして早3年になります。

台湾現地の日系クライアントは比較的にうまくやれている一方で、越境EC は大苦戦です。
そして、台湾現地にいる私から一言お伝えしたいことがあります。

これは私の感覚ですが、台湾向けの越境 EC は恐らく 6-7割はうまくいってないと思います。

というか普通はこんな事を書くと広告代理店は仕事を依頼されなくなるので、越境EC のパフォーマンスが悪いなんて書きません...

では私はなぜこんなことを書いているのか?

どうやら聞いた話によると、台湾進出のサービスを提供したい会社がよくセミナーで無責任に台湾の越境EC は好調という話をしているようだからです。

私は自分たちのサービスを売りたいからと言って、一部の好調なクライアントを引き合いに出してあたかも台湾の越境EC全体が好調みたいに話すのには疑問を持ちます。

例えばサッカーで日本人が海外で好調と聞いてピンとくるでしょうか?
好調なのは一部の選手で、それ以外は苦戦しているのが現状だと思います。

そこでこのブログでは今後台湾の越境ECをやろうと考えている方に対して、広告代理店が教えてくれないような現状と、うまくいっていない施策をきちんとお伝えしたい思います。

また、うまくいった施策もお伝えすることで、事前に対策をとっていただけたらと思っています。

台湾越境ECの現状

台湾現状

まずは台湾に越境ECで進出する日本の会社数を挙げたいところですが、残念ながら私の手元にそのような資料はありません。
そのため、今から申し上げるのは私の感覚になることをご容赦ください。

私の感覚で申しますと、ここ2-3年越境EC の進出は増え、現地法人及び現地販売は減っている気がします。

ではなぜそのようなことが起きているか、簡単に越境EC と現地販売のメリット・デメリットを話した上で原因を探りたいと思います。

台湾越境ECのメリット

まず台湾越境ECのメリットは以下と思われます:

・2000元以下の商品は関税なし (2000元以上は抜き打ち検査)
・広告表現が比較的に自由
・地理的に近いことによる物流コストの安さ

こんなところじゃないでしょうか。
次に台湾越境ECのデメリットをまとめます。

台湾越境ECのデメリット

・送料/物流負担 (ユーザーが送料を負担する場合は CVR が下がる)
・配達までの日数が長い
・現地決済に一部対応できない (コンビニ受け取りなど)
・そもそも商品が届かないという不安は消費者に残る

他にもあるかしれませんが、これぐらいにしておきます。
次に現地で販売するメリット・デメリットを簡単に書きます。

現地販売のメリット

・送料を抑えられる(台湾国内からの配送)
・コンビニ決済や現地の決済導入
・タイムリーな配送
・通常コールセンターとかつけるので顧客は安心する

もう少しあるかもしれませんが、これぐらいにして次はデメリットを書きます。

現地販売のデメリット

・成分表、輸出許可証、原産地証明書、製造証明書などの準備
・広告表現の制限
・倉庫/カート費用/コールセンターなどの固定費用

つまるところ、越境ECが増えている理由は始めやすさとメリットがデメリットを上回るからだとわかります。
台湾ドルに対応したカートと LPさえ準備すればすぐにでも始められます。
最悪、台湾ドルに対応しなくても売れます。

一方、現地で販売をしてきた会社がなぜ最近になってよく撤退をしているかというと、私は売れなくなってきているからだと思っています。

例えばある会社は越境で割とうまく行ったので、満を持して現地での販売を始めたら広告表現の制限に苦しめられ、商品の機能を伝えられぬまま売上が下がり撤退しました。

また、商品が売れないと、倉庫やカート費用、コールセンターはただの固定費としてのしかかります。
商品が売れているときは配送費を節約できて越境ECよりも儲けがでかいのですが、儲けられなくなった時のリスクが大きいとも言えるでしょう。

現地販売をして撤退した日系企業の多くは共通して大体 3年ほどで撤退しています。(全てではないですが、3-4年ぐらいで撤退している会社が多い印象です)
ちなみに台湾撤退は設立よりも費用と時間がかかるのでご注意を!

ではこんなメリットだらけで非常にハードルが低い越境 EC が台湾でなぜ苦戦しているのでしょうか?

私の見解をお伝えしたいと思います。

台湾越境EC 苦戦理由その1-安心感の欠如

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例えばあなたが日本で、日本語で書かれた聞いたことのないアメリカのブランドの LP を見たらどう思いますか?

まずちょっと怪しいと思いませんか?
僕は怪しいと思います。

台湾も同じです。

私は日本の多くの会社さんが台湾の消費者に安心感を与えずにレスポンス (CV) ばかりを狙って Google や Facebook 広告を行うのが苦戦する理由だと思っています。

では、どうすればいいか?

私は「安心感」が鍵だと思っています。

まず海外から日本に進出した通販会社で安心感を与えた一例をお話します。
ニキビケアの「プロアクティブ」です。

彼らは進出初期の段階で真鍋かをりさんを使って CM を流しました。
CMに出る商品 = 安心して使える商品というイメージを与えるためだと思います。
もちろんその当時は広告の選択肢が少なかったので僕が間違っているかもしれませんが、少なくともこの CM の結果、「怪しくない」イメージは消えたと思います。
(さすがに通販の会社とあって、CM はインフォマーシャルでしたが...)

また、その後はニキビに悩む中高生をターゲットに、ジャスティン・ビーバーをイメージモデルに起用したのもさすがと思いました。

台湾ではケーブルテレビ文化で視聴が分散されるため、テレビCM が安心感を与える方法かどうかは要検討が必要ですが、重要なのはまずは消費者に安心感を与えることだと思っています。
越境EC は安心して買えるサイトであること、商品は安心して使えるとコミュニケーションを取ることです。

折角越境で費用を抑えて進出をしたのなら、浮いた費用を使ってまず台湾における「安心感」の構築が必要と感じています。
この考えが確信に変わったのは2019年なのですが、その話はまた後でします。

台湾越境EC 苦戦理由その2-スモールスタート

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越境EC を希望する会社の半分ぐらいはスモールスタートを希望されます。
まずは低い広告予算で様子を見て、徐々に広告予算を上げたいというパターンです。

残念ながら私の周りでスモールスタートで始めてその後調子を上げて予算を上げた会社はほとんどいません。

「その1」でも述べましたが、安心感や認知度がない状態でレスポンス (CV) を取りにいっても購入に至らないのです。
また、越境EC は私が見る限り、カート追加後の脱落者が通常よりも多い気がします。
理由を探るには分析が必要ですが、みなさん根っこにあるのは「不安」だということだと思います。

結果スモールスタートで始めた会社の多くは上がるタイミングを逃し、いつまでもスモールなままズルズル時間だけが経過することが多いです。
私はこのパターンで撤退をした会社も知っています。

では、スモールスタートがダメか?というとそうではないと思っています。
後ほどうまくいった事例をお伝えします。

台湾越境EC 苦戦理由その3 - 決済

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台湾の方の多くがコンビニ決済や着払いを希望します。
特に現地の通販 LP の買い物はコンビニ決済や着払いを選ぶ傾向が多い気がします。
(返品率も結構高いですが....苦笑)

これも「安心感の欠如」が根本的な原因と思います。

やはり台湾の消費者はどこのメーカーのものかわからない商品に対して、心理的に届くか不安になるのだと思います。

「いやいや、日本のメーカーですからちゃんと届けますよ」と思いの方!

これを私が書いているのが2020年の4月28日なのですが、弊社某日系クライアントは詐欺サイトの対応に追われています....本当です。
確認できただけで3つ見つかりました。
いずれの詐欺サイトも誰かがクライアントの素材を勝手に使って、クライアントの商品の半分の値段で「Buy1 Get1 Free」をしていました。

ありえないプライシングなので恐らく商品が届かない詐欺サイトと思われます。

台湾越境EC がそこそこ好調なクライアント - コスメ

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では越境EC は全てうまくいっていないかと言うとそうではありません。
比較的に上手くいっている例をご紹介したいと思います。

弊社の某コスメクライアントはスモールスタートですでに1年ほど経ちましたが、CPA は単価と同等ほどに抑えられています。

なぜでしょうか?

私の見解ですが、商品がめちゃくちゃわかりやすいのです。
ここでは具体的な商品名は言えませんが、まず機能のアピールが非常に簡単な商品を売っています。

ビフォー・アフターが面白いぐらい一瞬で現れるので Facebook で動画広告をするとブランド名や安心感を通り越して機能性に惹かれて購入する人がいるのだと思います。

また、このクライアントは日本の某有名ユーチューバーの動画を買い取り、台湾で動画の配信を行うことができました。
このユーチューバーを台湾の人が知っているかはわかりませんが、日本では割と有名な人なので CV に一役買っているかもしれません。

この動画の CPA は非常に低いです。

このことから機能性がズバ抜けている商品はブランド名があまり認知されていなくてもいけるのではないかと思いました。
また、スモールスタートで多くの層にリーチできないためバカ売れすることはほとんどありませんが、その分毎月安定して CV が来ています。

台湾越境EC が比較的にうまくいったクライアントの施策その2 - 店舗誘導

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弊社の某クライアントBさんは非常に単価が高い商品を越境EC で売っています。

このお客さんは越境EC で苦戦が続きましたが、ポップアップストアに勝機を見出しました。
不定期に台湾で現地の企業と共同でイベントを行い商品を売り、あるイベントでものすごく商品が売れました。

これは何を意味するか?

商品が高くても、その商品に魅力を感じるターゲットがいれば売れるということだと思います。

「そんな当たり前のこと言われても.....」と思いますよね? 笑

ではなぜ越境EC ではなぜ苦戦したのでしょうか?
台湾の現地イベントで購入した台湾の消費者は越境ECの送料を節約するために購入したのでしょうか?

私はイベントで売れたのは「安心感」が理由だと思っています。
実物を見たことで本当に買えることがわかったため購入したのだと思います。

台湾の消費者にとって越境EC はやはり詐欺サイトの可能性があるので安心感がありません。
この仮説が正しいかはわかりませんが、私はこのイベント以降、「安心感」ということを強く意識するようになりました。

まとめ

つまるところ越境EC の攻略の鍵は「安心感」だと思っています。
如何にして台湾の消費者にサイト及び商品は「安全」「本物」と訴えられるかではないでしょうか。

また、某コスメ会社のように機能がズバ抜けている商品の勝算は高いと思いますが、みんながみんなそんな商品を持っている訳ではありません。

なので最後にもう一つだけうまくいってる事例をご紹介します。

某日系会社は越境EC で2020年の1~2月に台湾に進出しました。
進出当初はレスポンスよりも露出や認知を優先し、テレビに積極的に費用を投じました。
またレスポンス目的というよりは、認知を優先したインフルエンサーの起用も行いました。

まだ進出して日は浅いですし、それなりの費用を投じているので参考にはならないかもしれませんが、最近になってレスポンスが取れるようになってきています。
これはやはり「安心感」を伝えた結果ではないでしょうか?

つまるところ、KOL やインフルエンサーの起用も誰が CV を取れるか、誰がフォロワーが多いかで判断するのではなく、誰が「安心感」を与えられるかという軸が大事な気がします。
なので大事なのは、紹介している人が信頼できる人かだと思います。

ちなみに越境EC で失敗している企業のもう一つの共通点は単価の安いマイクロインフルエンサーを多く起用している点です。
お金ばかり減って認知度アップにも貢献しない最悪なパターンです。
台湾のインフルエンサーについて興味のある方以下のブログをどうぞ!

このブログがみなさんの参考になれば幸いです!

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