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ビザスクの功罪

数年前からビザスクというサービスが普及し、コンサルティングファームでも多用されるようになりました。

ビザスク|日本最大級のスポットコンサル (visasq.com)

ビザスクとは、インタビューをしたい人とインタビューを受けて小遣いを稼ぎたい人とをマッチングするサービスです(同社はスポットコンサルと呼んでいます)。

コンサルティングでは、外部のエキスパートインタビューをすることがしばしばあります。ビザスクのようなサービスが出てくる前は、自力でエキスパート(業界知見者など)に自力や人づてでアプローチし、相手に対するメリットを訴求しながらインタビューのアポをとる必要がありました。インタビュー一つアレンジするのに相当な労力と時間を要することも多々ありました。アップルも、この業界に入ったばかりの頃は、コールドコールでインタビューのアポをとることをよくやっていました。

そうした中、2015年頃からビザスクが台頭し、インタビューアレンジの労力をお金で解決できるようになりました。

「こんなエキスパートに話が聞きたい」とビザスクに依頼すると、要件に該当するエキスパートのリストが提示されます。そのリストの中から誰にインタビューをするかを決め、1時間程度のインタビューを実施します。一人ひとりの単価は異なりますが、10~15万円/時間と高額の料金が設定されているエキスパートもたくさんいます。料金の一定割合をビザスクが手数料として抜き、残りがインタビュイーに対価として支払われるというビジネスモデルです。

このサービスは便利です。コンサルティングファーム、特に単価の高い戦略ファームはプロジェクト経費を湯水のごとく使うので、「労力をカネで買う論理」で一気にコンサルティング業界に広がりました。

しかしこのビザスク、アップルは功罪の両面あると思っています。功は言うまでもなく便利なことです。お金さえ払えば、様々な分野のエキスパートに労力と時間をかけずアプローチできます。この価値は大きいです。だからこそビザスクのサービスは成長し、同社も2020年に東証マザーズに上場しました。

一方で、「罪」もいくつかあります。

①コンサルタントが準備を怠る → 育成へのマイナス効果
ビザスク前は、「貴重な時間をもらってインタビューをさせて頂いている。ちゃんと準備してのぞまなければ」という意識だったのが、ビザスク後は「こちらがお金を払ってインタビューをしている。まあ、特に準備せず、ほどほどにやるか」という意識に変わりました。

インタビューの論点を考えたり、インタビューでぶつける仮説を考えたりなど、インタビューの準備がコンサルタントの非常に有効な訓練だったのが、ずいぶんと手抜きになりました。

②踏み込んだ情報がとりにくい
ビザスクでマッチングしたインタビュアーとインタビュイーは、まったくの赤の他人です。両者の間に信頼関係はありません。したがって、インタビュイーが話す内容は、どうしても杓子定規になります。企業秘密にタッチするような情報にはもちろんガードが固くなりますし、「〇〇さんだからここまで話しちゃいますけど・・・」というよもやま話も基本的には起きません。

自分の人脈、信頼関係の中で得た情報に比べると、薄い情報にとどまると言えるでしょう。

③高い
需要が供給を超過しているためか、以前に比べて料金が高くなっているように感じます。いくらコンサルティングファームとは言え、湯水のように使える金額ではなくなってきました。ビザスクに依存して潤沢な一次情報をとることは、かなりのコストを負担することになるため、サステナブルとは言えないでしょう。


このように、便利なサービスの裏側には、必ず影が生まれます。ビザスクは、適時適切にうまく使う分には有効なツールですが、ビザスクに「依存」するのはリスキーです。上記で示したような「罪」のインパクトが大きくなります。

ビザスクに依存せずとも、自分の人脈で広くエキスパートにアプローチできるような状態を作る。
便利なサービスが出てきても、これがコンサルタントにとって大事であることに変わりはないでしょう。


今回はここまでです。
最後まで御覧いただきありがとうございました!

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