スペインの名作曲家紹介〜マヌエル・フォント・デ・アンタ

皆さんこんにちは。今月はスペインの知られざる名作曲家として、マヌエル・フォント・デ・アンタ(Manuel Font de Anta, 1889-1936, Manuel Font y  de Antaとも表記されます)を紹介していきます。

フォント・デ・アンタはセビリア生まれの作曲家で、トゥリーナから作曲を教わりました。
ピアニストや指揮者としてスペインのほかアメリカ大陸などでも活躍しましたが、共和国派の讃歌を書くことを依頼されていたことや、息子が共和国派だったことを理由に、スペイン内戦時に殺害されるという悲劇的な最後を迎えました。
生涯で4000点もの楽曲を残したという記述があるものの、現在演奏されるもの、楽譜や音源にアクセス可能なものは数曲しかありません。
内戦時に楽譜も処分されてしまった可能性がありますね…

フォント・デ・アンタの主要作品は、オーケストラのための「苦しみ(Amarguras)」、「ソレア、手を貸して(Soleá dame la mano) 」が挙げられますが、個人的には暗くて少々冗長な印象を受けます。

ただ、ぜひ皆様に聴いていただきたいのが、ピアノのための組曲「アンダルシア」です。
「アンダルシア」は各3曲・3巻の9曲から成り、1913年から21年にかけて作曲されました。
R.シュヴァルツの演奏で全曲聴くことができます。
https://youtu.be/HGLe001XiF4?si=J0u4lCo6AAKRlOP5
楽譜は2023年11月28日現在でimslpにアップされています。
https://imslp.org/wiki/Andaluc%C3%ADa_(Font_y_de_Anta%2C_Manuel)
フォント・デ・アンタの作品で 楽譜がimslpで入手できるのは、現在「アンダルシア」のみです。
また、マドリードの”Union Musical Ediciones”から第1巻・第2巻が出版されていることも確認できました。
https://www.prestomusic.com/sheet-music/composers/4205--font-de-y-anta-manuel

以下、組曲の構成です。
第1巻
1.マリア・ルイサ公園にて(En el parque de Maria Luisa)
2.マカレナ(Macarena)
3.アラメダ・デ・エルクレス広場にて(En la alameda de Hércules)
第2巻
1.アルハンブラ(Alhambra)
2.葡萄園の近くで(En barrio de la viña)
3.漁網掛け場(Perchel)
第3巻
1.モスクにて(En la mezquita)
2.セビリアの中庭にて(En un patio sevillano)
3.闘牛場にて(En los toros)

第1巻の3曲はいずれもセビリア市内の場所・地区が曲名に含まれており、第2巻の作品ではそれぞれの楽譜の冒頭に、グラナダ、カディス、マラガと題材になった都市名が書かれています。
第3巻は第1曲の楽譜の冒頭にコルドバと記載されており、第2曲は曲名にセビリアと入っていますが、第3曲には具体的な都市名は書かれていません。
キャッチーなメロディが出てくるわけでもなく、作品の構成が分かりやすいものでもないので、コンサート会場でかしこまって聴くのにはあまり向かないかもしれません。
それでも、聴いているとアンダルシア地方の街や自然の中を歩きながら、様々な美しい情景を見ているような気持ちにさせられる、素敵な作品と言えるのではないでしょうか。



参考資料
・Naxos Music Library「マヌエル・フォント・デ・アンタ」 https://ml.naxos.jp/composer1/269904 2023年11月24日閲覧。
https://www.lalineacofrade.com/patrimonio-musica/manuel-font-de-anta/  2023年11月24日閲覧。
https://sevilla.abc.es/pasionensevilla/opinion/sevi-la-muerte-font-anta-144650-1553251783-201903230010_noticia_amp.html 2023年11月24日閲覧。
https://imslp.org/wiki/Andaluc%C3%ADa_(Font_y_de_Anta%2C_Manuel) 2023年11月28日閲覧。
https://www.prestomusic.com/sheet-music/composers/4205--font-de-y-anta-manuel 2023年11月28日閲覧。

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