27歳独身女のひとりごと 痔編② 診察編-初診-

病院へ


そうだ、尻治そう。
実は、そう思ってから2.3ヶ月経ってしまった。
私のケツ意もこんなもんである。

肛門科はもう何度も何度も調べた。
その時御歳26歳。恥ずかしさが勝ってしまい、せめてもの気持ちで女医さんのいるところを調べに調べた。

そしてある時、何がきっかけという訳でもないが「今日しかねぇ!今日だ!!!」という日があった。
電車に乗って少し離れた女医さんがいる肛門科へ向かう。電車の中では心が揺れていた。
恥ずかしい、帰りたい、でも治したい、でも命に関わるわけではないしな、でももう電車乗ってるしな…と心は揺れている。
電車は前を向いて進んでおり、体は前へ前へ揺られている。電車の方がよっぽど前向きである。
なんだかんだ迷っている間に最寄り駅についた。

最寄り駅を降りて大股で医院へ向かう。
大丈夫、もう降りちゃった、行くしかない、女医さんだし、大丈夫、治すって決めたじゃない。
気を抜けば家に帰ってしまいそうだったので、とにかく先へ先へと急いで医院についた。
そして唖然。

閉業…??

臨時休業ではない、医院自体がなくなっていた。おいGo○gle、てめぇ営業中って書いてあるだろうが。医院のHP自体も残っている。再三見た。治療方針とか覚えるほどに見た。医院からのお知らせにも載ってない。ただ、医院の前に張り紙がある。まごうとなき営業停止だ。
念の為電話をした。電話はかかっている。
目の前のシャッターがしまった建物の奥から電話の音がしていた。アホか。

一気に脱力してしまった。涙がポロリと出た。
私の勇気はなんだったんだ、無駄だったのか、神様は私の尻穴に試練を与えるだけでなく通院にも試練を与えるのか。
改札前で天を仰いで…私はヤケになった。
もう行くなら今日しかない、この勇気を無駄にするわけにはいかない。
時刻はすでに19:00にちかかった。
とにかく空いているところを探しまくって、すぐに電車に飛び乗った。
その医院に女医さんはいなかった。レディースデイもあったが、あいにくその日はレディースデイでもなかった。
でももうよい、ジェンダーレスの時代なんだから!!!!!肛門科もジェンダーレスだ!!!!!そういうことにしよう!!!!!!

ジェンダーレスジェンダーレスジェンダーレス…何度唱えたか分からないくらい頭の中で反復してM肛門科についた。

受付にて

とても綺麗な肛門科であった。
清潔感があり、パッと見は産婦人科のよう。
診ているところが産婦人科よりほんの少し下なだけである。大きく変わるまいよ。
とは言うものの、恥ずかしさがやはり拭えずマスクは着用した。
待合室には齢80は超えていらっしゃるであろうご老婦人がおひとり。実質レディースデイである。

マスクの下に恥ずかしさを隠しつつ、本を読もうとしているとご老婦人が話しかけてきた。

「ここってお医者さんは男なの?」

いやあんたも初診かい。というツッコミを飲み込んで
「男性らしいですよ」と返事。
あからさまに嫌な顔をするご老婦人。
「えぇ〜嫌やわぁ…男の人は嫌やなぁ…」とのお返事。

途端、自分の中で
「ですよね、恥ずかしいですよねぇ」の返事と
「誰も80代の尻穴なんか興味無いですよwwww
 1日何人の患者さんが来ると思ってるんですかwwww」の返事が拮抗し、はたと気がついた。
(返事については、どっちも口から出そうだったので目だけではにかんで返事とした)

80を超えているであろうご老婦人も、26歳の私も、心はうら若き乙女であるのだ。やはり男性に尻穴を見られるのは恥ずかしい。婆さんは尻穴を恥じんでもと少しでも思ってしまった自分を恥じると共に、男性医師にとっては80代であろうが26歳であろうが患者には変わりないのだ。同じ穴の狢ならぬ同じ穴の患者なのだ。
変に意識してしまった自分が恥ずかしい。

忸怩たる思いを抱えて、待合室の椅子に深く腰掛けた。その刹那、ご老婦人が診察室に呼ばれた。ご老婦人はもはや戦友に見えている。友よ、歳は違えど心は1つ。共に恥を忍んで尻を治そうではないか。

読んでいる本も頭に入らぬまま、ぼうっと診察室を見ていると自分の名前が呼ばれた。
ついに診察が始まるのである。

診察


ドアをあけるまで少しだけ女医さんを期待したものの、当たり前に男性のお医者さんがいらっしゃいました。
優しそうな東京03の豊本さん似のお医者さんで、少し安心。
先程のご老婦人もきっと同じ思いであることを願っていると問診が始まった。
見張りイボがありそうなことと切除したいことを説明すると、「とりあえず診てみましょうか」と豊本さん。

ついにこのタイミングが来たかと覚悟を決めてベッドに向かう。
気持ちと尻穴を引き締め、ズボンと下着を脱ごうとして、看護師さんに「あっ!膝までで大丈夫ですよ!」と止められた。
冷汗三斗。顔汗がドッとでた。危うくブラックリスト入りの患者になるところであった。おそらく気持ちと尻穴を引き締めた時に、御説明賜ったのだと思うが全く耳に入っていなかった。申し訳ない。
改めて膝まで下ろして、ベッドに横たわり足を曲げて待った。

少し間が空いてすぐカーテンが開かれて、豊本が背面から声をかけてきた。
「はい、ちょっと指入れますね〜」の声と共に、ぐっと尻穴に圧を感じた。
初めて体の出口が入口になった瞬間である。
喜ばしいのか恥ずかしいのか…複雑な思いを抱えていると指が引き抜かれた。
やはり肛門は出口である。

「次にカメラいれますよ〜画面見えますか〜?」と言われ、尻からカメラが入ってきた。ただ虚無に壁を見つめていたが、ここで目の仕事ができた。少し頭を持ち上げてモニターを見つめ、尻穴の2回目の入口としての仕事を見守った。

専門家ではないのでカメラを見ただけではよく分からなかったのだが、
・既に今切れ痔を起こしていること
・軽い炎症があること
・肛門自体に強い緊張があること

以上3点を説明された。
最後3点目は心だけでなく尻穴も緊張してんのかいと少し笑ってしまった。(意味は違う)

何か症状はあるのか?と聞かれたので、なにも自覚症状がないことを伝えると、おそらく【慢性の切れ痔】になっているとのこと。
見張りイボに関しては、やはり取らなくても大丈夫だけどどうする?と。
「取りたいです!」と強固な意志を見せた。
そう、このケツ意だけは固いのである。

「では一旦炎症を抑えるために軟膏出しておきますね。2週間分出しときますね〜」と豊本。

尻に塗るタイプかと思いきや、尻に入れるタイプの軟膏であった。私の尻穴は、入社初日で出口のみならず入口も担当することになった、ブラック企業である。
この日から私は尻穴の炎症を抑える治療が始まった。


さて、ここで大事なことが1つある。

この話は2023年12月の話である。


手術をしたのは2024年5月31日。
そう、約半年空いているのである。
またここから私はM肛門科に行かなくなってしまったのである。

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