君はね。これを読むといいよ。
東京に、行きつけの本屋さんがある。
行きつけと言っても、僕は東京に住んでいないので、出張とかで用事があるときに、この本屋さんに寄るようにしている。
わざわざここに寄る理由はいろいろあるのだけど、ここの店主さんが僕は好きだ。
「何をお探しですか?」
不意に話しかけられてビクッとした僕を見て、その人は笑っていた。
「僕はね。ここに置いてある本はだいたい読んでるからさ。」
「オススメしようか?」
びっくりした。
僕の知っている本屋さんにこんな人はいない。
レジにずっと座っていて何やら仕事をしているか、本棚の整理をしているか・・。話す時は会計の時だけで、本を吟味しているときに話しかけられた経験はこれまで一度もなかった。
「オススメ、、。してくれるんですか?」
「ええ。しますよ。ただ、あなたが今日来た理由とか教えてもらわんと。」
どうやらこの人は、僕の話を聞いて、それにあった本を選んでくれるらしかった。
なんだろう。初対面なのに僕はもうその人の魅力に引き込まれてしまって、最近の悩みとか、探している本とか話しをしていた。
「なるほどねえ。消防士さんでしたか、、。それで日々の仕事にもっと刺激をね・・。」
時間にして5分くらいだろうか。ふむふむとあごひげを触ると、こっちにおいで。と僕を本棚の一角に案内した。
「君は、これを読むといい。」
彼はそういうと、僕にこの本を差し出した。
彼は僕にこのように言った。
本を開くと、最初の1ページがアコーディオンみたいになっていて、大きく開くことができた。ここには詩が書かれていて、下には大きな・・魚の骨??の絵が書かれている。
僕は、勧められた椅子に座って、この詩を読んだ。
とても力強い言葉。励まされてるような、叱れれているような。でもとても温かい。
彼の方を見上げると、ニヤッとしてビールを飲んでいた。
(え?仕事中じゃないの?)
その後もその彼は、僕に邪魔にならないように側にいてくれて、「本選びはね。直感ですから。」「気になったものをまず手に取ったらいい。」と教えてくれた。
目に止まった本を手に取ると、
と、こんな感じであっという間の1時間。
選んでもらった本は全部で5冊。
全部僕の宝物で、本棚の一番高いところに置いてある。
また行きたいな。
あの本屋さんに。
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