産学連携と景表法7条2項
水素サプリ「レナトス」と大阪大学
まず,問題があると思われる実例を紹介する。似たような例は他にもあるが,旧帝大の複数の学部・研究室が関わっているため,社会的影響が大きいと考えられるので,このケースを取り上げる。
レナトス(RENATUS)という水素サプリメントを販売している企業がある(https://renatus-japan.co.jp/)。レナシアプラス,というのが商品名の一つで,レナトスシリーズとして商品展開をしている。この商品の宣伝に,
といった表現が並んでいる。
製品の実体はケイ素製剤で,これを飲むと腸に達した時に水素を発生し,それが「水素のチカラで健康をサポート」するという触れ込みである。
こういった宣伝を消費者が普通に読むと,阪大の研究グループがケイ素製剤を開発して水素サプリへの応用まで試験を行ったのだろう,と受けとるだろう。しかし,宣伝から受ける印象と,実際に行われた研究の間には大きなギャップがある。
論文・報文をチェックする
宣伝に登場するScientific Reportsに掲載された論文とは、"Renoprotective and neuroprotective effects of enteric hydrogen generation from Si-based agent"(2020)( https://www.nature.com/articles/s41598-020-62755-9 )のことで、Open Accessなので誰でもpdfファイルをダウンロードして全文を読むことができる。こちらを[SR]として参照する。
これ以外に参考になりそうな資料としては、関東化学株式会社が出しているケミカルタイムズの2019年10月の記事「シリコン製剤による体内水素発生と医薬応用」(記事一覧はhttps://www.kanto.co.jp/times/backno8.html、全文はhttps://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/CT254_01.pdf)がある。こちらを[KC]として参照する。
論文の内容
小林らが開発したシリコン製剤による水素発生は、pHが高い環境で多く起きるという特徴がある。[SR]のFig.1ではpHが8.3より高い条件で水素発生を確認しているし、[KC]の図1ではpHが7.0より高い条件で水素発生を確認している。pH7.0では水素発生が遅いが、pH7.1以上で水素発生が増加する。
小林らは、シリコン製剤による水素発生の反応式や、イオンの移動の活性化エネルギーなどを詳しく調べた。さらに、シリコン製剤の粒径や凝集状態についても調べた。
シリコン製剤の薬理作用を動物実験で確認した。腎不全のラット、パーキンソン病のマウスにシリコン製剤を与えて、対照群と比較し、抗酸化作用の効果がみられたという結果を得た。
ヒトに適用できる結果ではない
pHの問題
小林らの狙いは、シリコン製剤を投与する→腸内で水素発生→発生した水素が吸収される→水素の抗酸化作用が病状の改善に役立つ、というものである。動物実験で一定の結果が出たろいう論文を根拠にした、サプリメントとしての宣伝・販売が行われている。医薬品ではないので、効果効能を謳うことはできず、「健康をサポート」といった表現にとどまってはいる。
ヒトの腸内のpHの変化は、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10421978/ によると、十二指腸でpH6、小腸では空腸から回腸末端までの間に徐々にpH7.4まで増加、盲腸までいくとpHは5.4に低下、再び増加して直腸でpH6.7である。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3410329/ によると、腸に入って1時間ほどのpHの平均が6.6、回腸末端でpH7.5、盲腸に入るとpH6.4に低下、その後は徐々に上昇、とある。つまり、複数の研究が、小腸のpHは回腸末端に至るまで徐々に増加するもののずっとpH7.4以下で、大腸内でもpH7を上回ることがないという結果を出している。しかし、[KC]では、「水液(pH〜8.3)の分泌によってアルカリ性環境となる腸内で水と反応して水素が発生することを示している」と、ヒトの腸内のpHの実測値を無視した記述がある。
普通に考えれば、胃酸で酸性状態になった食物にpH8.3の膵液を加えればある程度中和されるだろうが、最終的なpHが8.3になるはずがない。中和反応とはそういうものである。
シリコン製剤が活発に水素を発生させるのは、pH7.4以上である。シリコン製剤を飲んだとしても、腸内pHの実測値に基づくなら、腸内を移動するほとんどの間は、水素発生には不利な条件が続くことになる。
さらに[KC]では、表面処理をしたシリコンについて、腸内疑似環境下として36℃、pH8.3という条件を設定して水素発生量を求めている。これでは、現実のヒトの腸のpHとは大きくかけ離れているので疑似環境とはいえない。なぜ、現実のヒトの腸の環境と同じpH6.6程度で実験しなかったのか。表面処理をしたシリコンでは、400mL/g以上の水素ガスが発生するという結果が、pH8.3で得られたものであるなら、ヒトの腸にそのままあてはめることはできない。
腸内細菌が水素を作る
ヒトの腸内のpHが、シリコン製剤による水素発生に適していないとはいえ、腸内でシリコン製剤が全く水素を発生しないというわけではなく、ゆっくりであれば水素の発生は起こりうる。腸内にいる時間が長いので、服用したシリコン製剤が全て反応して水素を発生することがあってもおかしくはない。
ところが、ヒトの腸内細菌も水素を作る。
便秘の治療目的で、食物繊維と腸内発酵の関係を調べるために、呼気中の水素濃度を測定するという実験が行われた。
(https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/4/46045/20180713111504280095/k7461_2.pdf)
これは学位論文の審査結果の要旨で、同じ内容の投稿論文が存在するはずなので、現在検索中である。見つけ次第参考文献として掲載する。この研究では、12時間以上の絶食の後、パンを食べた被験者の呼気中の水素濃度が上昇した。
食物の消化が起きる時に腸内細菌は常に水素を作っており、その水素は血液中に取り込まれる。呼気中の水素濃度は、腸内発酵の指標となる程度に変化する。
「水素水は怪しい水でしょうか?」という解説には(https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/54909/20170502133553995840/129_9.pdf)
「水素は腸管内で日に4〜12Lもつくられている」「あくまで一般的な条件であるが、糖質1gを腸内細菌が消化・発酵すると200〜300mLのガスを産生し約50mLの水素ガスが発生するといわれている」という記載があり、文献も参照されている。
日本人が1日に摂取している糖質の量はおよそ300gで、糖質制限する場合は130g以下が目安である。摂取した糖質が完全に発酵・分解されるわけではないとしても、発生する水素の量は50mLの数倍程度にはなるだろう。
レナトスは1日に1粒で、350mgのシリコン製剤を含むとの記載がある。[KC]の図1のように水素が発生するのであれば、1g全てが反応すると水素ガスは45mL発生するので、1粒に含まれるシリコン製剤が全て反応したとすると、約16mLの水素が発生することになる。但しこれは時間をかけて腸内を通過する間に全て反応が終わった、という、最も良い条件での推定であり、腸内のpHが低ければ、全て反応する前に排泄されてしまうこともあり得る。
そう考えると、シリコン製剤の水素発生効果は、元々腸内細菌が作っている水素ガスの量を20%かそれ以下だけ増やすものになると予想される。
より多量の水素を発生させる,表面処理を行ったシリコン製剤の結果と比較するべきだという考え方もあるだろうが,pH8.6と,実際の腸内の環境とはより隔たった条件で実験されているため,試験管内の水素発生量と同じ量だけ腸内でも水素が発生するとは考えられない。このため,比較のためにはpH7.0での実験結果を使うしかない。
上記学位論文によると、食物繊維の種類の違いによって水素発生量が違っている。ということは、腸内細菌が作り出す水素の量は、食物の内容によっても違ってくることが予想される。その違いを十分上回るだけの水素がシリコン製剤によって発生するのでなければ、シリコン製剤を飲んでもほとんど意味がないことになる。
既にサプリメントとして販売しているのだから、絶食時間と食物の内容をコントロールし、シリコン製剤の投与の有無によって呼気中の水素ガス濃度に違いがあるか、といったことは確認できるはずである。現状では、呼気のモニタリングの結果を欠いたまま、試験管内で水素が発生したということや動物実験の結果を根拠として、サプリメントの宣伝が行われている。
動物実験の結果しかない
小林らの論文では、腎不全のラットやパーキンソン病のマウスを対象として、シリコン製剤の薬理作用を調べた。こういった動物でなにがしかの効果があるという結果が得られたとしても、その結果をもってヒトでも効果があるという結論を出すことはできない。動物に対して治療効果があっても、ヒトで臨床試験をすると効果が無かったり、副作用があったりすることが多々ある。このため、薬は、ヒトでの臨床試験を経たものでないと、使われることはない。ラットやマウスで腎不全やパーキンソン病に効果がありそうだという結果を得た場合、ヒトで臨床試験を始める根拠にはなっても、ヒトに効果があるという根拠にはならないのである。
パーキンソン病については、順天堂大学が2019年に水素吸入の効果を確認する臨床試験を行った(水素ガス吸入のパーキンソン病に対する無作為化二重盲検並行群間試験)が(https://center6.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000039217)、結果は未発表である。順天堂大学の臨床研究情報検索システム(https://www.gcprec.juntendo.ac.jp/kenkyu/)で、「水素」をキーワードにして検索しても、この試験は出てこない。
動物実験の結果からは、シリコン製剤による水素がヒトに何らかの利益をもたらすという結論は導けないのである。
なお、有害事象についてはヒトで確認することが倫理的に許されないので、動物実験の結果をある程度参考にせざるを得ない。
ヒトでの確認は疾病ごとに行う
仮に、動物実験の結果が、めでたくヒトでも再現されて、腎不全やパーキンソン病になにがしかの効果があることがわかったとしよう。この結果が、シリコン製剤をサプリメントとして販売する時の根拠になるか?というと、答えは否、である。
特定の病気や症状の改善を確認するために行った臨床試験の結果は、あくまでも試験の対象にした病気や症状についてしか使えないのである。特定の病気の治療効果や症状の改善効果があることと、健康維持の効果とは全く別である。
シリコン製剤に「健康サポート」の効果があることを主張するのであれば、健康な人を対象にした試験を行い、長期にわたって病気の発生具合や体力維持の具合など、予想される効果について確認する必要がある。シリコン製剤を使った群とそうでない群で差があれば、健康サポートの効果があるといえるかもしれない。その場合でも、「健康サポート」の中身が具体的に何であるか、特定の病気の発生を抑えるのか、基礎体力の維持などに関わるのかといったことは明らかにする必要がある。
ケイ素の行方が十分確認されていない
[KC]によると、水素発生に伴って生じた二酸化ケイ素は、シリコン微粒子の表面を覆うようにできていき、微粒子の表面が二酸化ケイ素で覆い尽くされると水素発生反応が止まる、とされている。ケイ素の粒子が残っている状態で水素発生が止まることの説明としては妥当である。
しかし、生じた二酸化ケイ素の全てが微粒子表面に存在するのかどうかの確認は行うべきだろう。試験管内で実験して反応が終わった後の溶液中のケイ素濃度を定量すればいいだけなので、比較的簡単にできるはずである。
[KC]には「同じシリコン系の材料であり円盤状の形状を有する珪藻土は、食品添加物として認可されている。シリコン製剤も球状に近い形状を有してサイズも大きいため、上述したように毒性試験を行っても弊害は認められていない。」との記載がある。これは、誤解を招く記載である。
珪藻土は、濾過助剤として食品製造時に不純物を吸着するために用いられており、不溶性で、使用後は食品から除去されるという使い方を想定して、食品添加物としての使用が認められ、表示免除されている。製造された食品からは除去されることが前提の珪藻土と、飲ませるシリコン製剤を同列に並べて有害か無害かを議論すること自体が不適切であり、ミスリードである。なお、二酸化ケイ素(シリカゲル)も指定添加物で、乾燥剤の袋には「食べてはいけません」と書いてあるのが普通である。どちらも、胃腸の中に入れることは想定していない。
「健康食品」の安全生・有効性情報の素材情報データベース(https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/indiv.html)でケイ素・ケイ素化合物を調べると(https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail579.html)、有害性情報として、二酸化ケイ素を含むサプリメントを継続摂取したことによる健康被害の発生例が掲載されている。生後2〜8ヶ月の男児、ライム病、骨関節炎、胆石、過敏性腸症候群の既往がある38歳女性で腎臓結石がみられた。「通常の食品に含まれる量の摂取はおそらく安全だが、多量に摂取した場合の安全生については、信頼できる十分な情報がないため避ける」とされている。シリコン製剤を摂取したら腸内でできるものは二酸化ケイ素なので、二酸化ケイ素を含むサプリメントをとったのと同じことになる。どういう影響があるかは摂取量に依存するので、安全生を確認するためには、水素発生が終わった後の水相のケイ素濃度の定量が必要である。
こういった健康被害は、健康な成人であれば生じなくても、何らかの既往症がある場合に生じる可能性があるので、サプリメントを売るのであれば、ケイ素の過剰な摂取を避けなければならないのはどういう人であるか、注意喚起する必要があるだろう。ケイ素はカルシウムやマグネシウムの代謝に影響するということも示唆されている。
シリコン製剤の水素発生反応そのものと動物実験の結果だけを報告するのであれば,ヒトの被害事例の報告の論文の参照は必要なく、動物実験の結果有害性が確認されなかったと記載しても何も問題はない。しかし,ヒトでの有害事象について全く検討していない論文を,ヒトがのむサプリメントの宣伝に利用させておくのは、不誠実ではなかろうか。
何が問題なのか
「合理的な根拠」たり得ない
レナトスの宣伝のキーポイントは、
シリコン製剤を使うことで腸内で水素を発生させる
水素が健康をサポートする
大阪大学産業科学研究所が開発したシリコン素製剤をサプリメントに利用した
というところにある。しかし、根拠とされた論文の内容は、
ヒトの腸内のpHはシリコン製剤の水素発生に適した条件ではない。
腸内で発生する水素の量を増やすことによって健康のサポートが実現できるという実験的証拠は無く、具体的に何をもって健康のサポートができたと考えるのかも書かれていない。
大阪大学の実験は腎不全やパーキンソン病の動物に対する実験であり、サプリメントの利用者として想定されている健康なヒトとは全く異なる。
という状態であり、材料の開発元に関する記述は正しいものの、サプリメントの効果を支持するような結果は何もない。
不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項では、不実証広告が規制されており、消費者庁が詳しい運用指針を出している(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_34.pdf)。
景品表示法には,消費者庁長官及び都道府県知事から表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を求められた場合、15日以内に提出しなければならないと定められている。提出を求められてから試験をしていたのでは絶対に間に合わないわけで、景表法は、販売開始の時点で表示の裏付けとなる合理的な根拠を備えていることを求めていることになる。
運用指針には、
と書かれている。また、客観的に実証された内容として「試験・調査によって得られた結果」「専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献」があれば良いとされている。
レナトスに対して、宣伝内容の合理的な根拠の提出を求めた場合、[SR][KC]の文献が示されることになるだろう。ところが、腸内よりもpHが高い環境での水素発生の結果や、腎不全・パーキンソン病のモデル動物に対する結果しか書かれていないので、ヒトの腸内での際だった水素発生やヒトの健康サポートの根拠にはなり得ない。レナトスに期待される性能・効果と、論文・報文で実証された内容が対応していないからである。
レナトスの宣伝の問題点は、景表法7条2項の運用指針に引っかかる形で大学側が論文を宣伝に使わせていること・企業側が宣伝に使ったこと、にある。
運用指針に合わせるには
シリコン製剤サプリメントの効果で水素を多く発生、健康をサポートするのに役立つ、という十分な証拠が無いのに、サプリメントを作って販売するというのは、明らかにフライングである。
運用指針に合致させるには、試験した条件と謳っている効果や性能を合わせるしかない。そのためには、次のような試験が必要だろう。
腸内で実測されたpHの条件で、試験管内で水素発生を確認する。
水素発生が止まった後、水相のシリコン濃度を定量する。
過去の二酸化ケイ素による被害事例と比較し、与えたシリコン製剤が十分少ないかどうかの検討。
ヒトにサプリメントを与えた場合に呼気中の水素ガス濃度にどれだけ変化があるかを確認。食物の違いによって生じる変動幅に対して十分大きいかどうかを確認。
「健康をサポート」が実現するかどうかを確認。
ただ、ケイ素の量によっては被害発生の可能性がある一方で、「健康をサポート」というあやふやな内容を確認する試験を提案したとして、倫理委員会が認めるかどうかは疑問だが……。
もう一つの道は、サプリメントとしてではなく、治療効果のある薬剤としての認可を目指して臨床試験をするルートにのせることだろう。水素の取り込みはガスで吸入するのが最も効率が良いので、ガスで治療効果が確認されたものについて、(水素発生量がシリコン製剤で足りるのであれば)シリコン製剤を用いるという手はある。水素ガスは爆発する濃度範囲が広いので、ガスを使うよりはシリコン製剤を使った方が管理が楽で爆発事故の危険が無いからである。
表示に対するガイドラインが大学側に必要
こういうフライングが起きがちな理由として、大学に対して産学連携せよとか、実際に役立つものを研究しろという圧力が強まっていることが考えられる。阪大の運営がどうなっているかは知らないが、産学連携の件数や特許、商品開発に結びつく成果の有無が教員個人や学内の研究組織の評価に使われることが全国の大学で起きている。そうすると、多少無理をしてでも、役立つ商品につながったという実績を作らなければならなくなってしまう。大学側も、学長の定例記者会見などで、世間受けする目ぼしい応用例をアピールしたがっている。
役に立ちます・応用できます、という研究と宣伝をしなければならないという圧力があるのだから、研究内容と宣伝のギャップを減らす仕組みを同時に作っておかないといけない。一般に,大学の倫理規定は利害関係者との金銭の授受や利益相反の規制にとどまっている。大抵の大学の産学連携規則は、知的財産の帰属については扱っているが、大学の名前をどう使うかまで細かく決めているところは少ないようである。
大阪大学については産学連携表示のガイドラインを見つけることができなかったが,広島大学は産学連携表示についてガイドラインを定めて公開している(https://www.hiroshima-u.ac.jp/system/files/142630/%E7%94%A3%E5%AD%A6%E9%80%A3%E6%90%BA%E8%A1%A8%E7%A4%BA%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%EF%BC%88%E6%94%B9%E5%AE%9A%E7%89%88%E6%A1%88%EF%BC%89_20200401.pdf)。
どこの大学でもこういった規則を定める時は他大のものを参考にするのが常なので,今回取り上げた阪大の例をこのガイドラインにあてはめてみると,おそらく、問題なしという判定になるだろう。このガイドラインは、大学の名前をみだりに商品宣伝に使ったり、大学の貢献の程度が実態と乖離したりしないようににすることを目的として作られているが、景表法7条2項に抵触する可能性についてはさほど念頭に置いていないように見える。
実際の使用条件と著しく異なる条件で得られた試験結果を示しているものが,不実証広告規制に引っかかるよくあるパターンである。
今回の阪大のケースでは、広島大学のガイドラインにほぼ沿う形で表示をしたことが、逆に、大学の研究結果の内容がどこまで商品の実際の使用条件に直結しているのかについて、曖昧にしてしまっている。
産学連携表示をする際に、実際の使用条件と対応しない条件で出した実験結果の論文等は,商品の宣伝に出さない,あるいは,実際の使用条件とは異なることを明示するというルールを大学の規則として作っておく必要がある。
余談
試験管内でシリコン製剤の水素発生を確認する実験,よく撹拌しながらやったのか,シリコンパウダーが容器内の底に固まってる(というか溜まっている?)状態でやったのかを知りたい。写真か動画が欲しいところ。
※筆者は適格消費者団体消費者市民ネットとうほくの検討委員に一人だけ混じった理系メンバーで,普段は法律家による申し入れ活動のお手伝いをしている。そんなわけで,宣伝のあれこれを見ると,景表法からみてどうなのか,ということが気になりがちである。なおこの記事は,団体とは無関係で,全くの個人の責任において書いたものである。