日銀レポートに見るFX個人投資家の進化?
日本銀行のウェブサイトには様々なリサーチペーパーが掲載されていますが、個人投資家を取り上げたものは限られています。
1年近く前の2023年6月に「2022年を中心とした最近の個人FX取引」と題された日銀レビューが掲載されていました。日銀がFXの個人投資家動向を取り上げたレポートは2018年以来5年ぶりとなります。
個人投資家による外国為替証拠金取引(いわゆる個人FX取引)は、2022 年に過去最高を記録し、年間取引高が初めて1京円を超えた。~こんな書き出しで始まる、本レポートを読むと、この10年でFX個人投資家の動向が大きく変わったことが読み取れます。
個人的に目を引いた部分は次の3点です。
①個人投資家の進化として「ドル円のシェアの上昇」
取引高に占めるドル円の割合は2012年の26%から2022年には75%へと激増しています。ドル円は最もスプレッドが狭く、FX会社にとっては最も「儲からない」通貨ペアです。つまりそれだけ個人投資家に有利な通貨ペアなのです。取引がドル円に集中していることは、結果的に個人投資家の進化を示しています。
もちろん要因は別のところにあります。1つは2022年にドル円のボラティリティが急上昇したこと。もう一つは、米国が積極的に利上げを行ったことでドルが高金利通貨となり、それまで「スワップ狙い」で取引されていたAUDやNZDといった(高金利通貨通貨という名の)「スプレッドが広く顧客に不利な通貨」を取引する理由がまったくなくなったことです。
話はそれますが、「ミセス・ワタナベ」という言葉があるように、日本の主婦がFX取引で相場を動かすようなイメージがメディアによって作られましたが、現実にはFXの個人投資家の女性の比率は2割を下回る程度ではないでしょうか。日本の主婦が為替相場を動かしたことなど、そもそもないのです。そして、女性は男性に比べて取引頻度が低く、スワップ収益を好む傾向があります。クロス円が右肩上がりに上昇し、スワップ収益も稼げたリーマンショック前の2000年代はFXで成功した女性は、クロス円の右肩上がりの時代の終焉とともに激減しました。
②個人投資家の取引環境の改善点として「実質的なスプレッドの低下」
ドル円が100円から150円へと1.5倍に上昇したときに、FX会社がスプレッドを変更しなければ、実質的なスプレッド率は1.5分の1,すなわち3分の2に低下したことになります。FX会社としては当然スプレッドを広げたいのですが、自社だけスプレッドを広げると他社に顧客を取られる恐れがあるためできなかったはずです。
この状況は顧客の取引環境の改善につながっています。
③個人投資家が勝てないことを示す「カバー率の低下」
さて、一番の問題がここにあります。
と②からこの10年で顧客の取引環境は大きく改善した=個人がFXで勝ちやすい状況が整ったということになります。その分取引量も大きく増えているわけでが、FX会社にとっては薄利多売に拍車がかかったわけです。
FX会社はこの状況をカバー率を下げることで乗り切っています。
レポートの「図表2」にあるように、2012年から2022年にかけて個人のFXの取引高は円ベースで7.2倍に増加しています。(ただし、この間ドル円はほぼ2倍になっているのでドルベースでは3.6倍程度の上昇にとどまるでしょう。)一方、東京為替市場参加行による個人投資家関連取引(=FX会社との取引)は「図表8」を見る限りドルベースで2倍弱に増えたに過ぎません。FX会社の銀行とのカバー取引は、顧客との取引量の増加分に見合うほど増えていない、つまりFX会社は明らかにカバー率を下げているのです。
先ほど書いたように、この10年で個人の取引環境は明らかに改善しています。その環境改善の結果、実際に個人が勝てるようになったのならFX会社はカバー率を上げないと収益が悪化します。顧客のフローをカバーしなければ、顧客の利益がそのままFX会社の損失になるからです。しかし、顧客が負けてくれるならカバー率を下げた方がFX会社の収益は増えます。
特に①と②による実質的なスプレッドの低下でカバー収益が低下する状況では、顧客が負けることがFX会社の収益を支えてくれるのです。
余談ですが、FXの記事を探していると「顧客取引をすべてカバーする業者は信頼できる業者」などというアフィリエイト記事にぶつかります。
顧客取引をすべてカバーする業者は決して「信頼できる業者」というわけではなく、単に「規模の小さな業者」です。
詳しくはこちらの記事をご参照ください。
なぜ取引環境が改善したのに、顧客はさらに勝てなくなっているのか?
では、どうすれば勝てるのか?
その答えは日銀のレポートをじっくり読めば、答えは書いてあるも同然です。
どうしてもわからない方や、答えを確かめたい方は、こちらのサービスをご利用ください。
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