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撥水・撥油・防汚加工のはなし〜繊維業界の価値観の変化と加工手段


撥水・撥油・防汚加工は、これまで機能性を高めることだけが重要視されてきました。しかし、最近は、機能性を高めることよりも環境配慮型の加工をしているかが重要な商談のファクターになっていますね。これは、この3つの加工だけでなく、全ての加工についてもいえることです。日本に住んでいると、アパレル製品がどうやって加工されているかなんて気にしないと思いますが、ヨーロッパでは、環境に配慮していないとカッコ悪いという価値観が生まれているみたいですね。

2011年に複数のアパレル、スポーツメーカーがZDHC(Zero Discharge of Hazardous Chemicals)を結成し、有機化学物質の使用・排出を2020年までに0にすることを宣言し、ZDHCの発足以来、フッ素フリー化が進んだりしています。

ここ最近、ヨーロッパの企業だけでなく、ヨーロッパと取引のある日本のアパレル企業でも、環境に配慮した商品のニーズが急激に高まっています。もうすでに、人体への影響配慮もしくは、環境配慮型の加工剤や生地構造を用いた商品でなければヨーロッパの企業との取引が成立しなくなってきています。そのため、新しい開発素材に各社が力をいれなければいけない状態ですね。日本の消費者には、まだまだ、エコ素材の服でなければカッコ悪いといった価値観は浸透していないと思いますが。。。早くそんな価値観が日本にも広まるといいですよね。


撥水・撥油・防汚加工とは?

撥水・撥油・防汚加工は、水や油を弾いて衣服の汚れを防いだり落ちやすくしたりする加工のことをいいます。

撥水・撥油・防汚加工に欠かせないフッ素系加工剤とは?

撥水・撥油・防汚機能には、モノをくっつけにくい性質があるフッ素系加工剤が必要不可欠です。フッ素化合物(PFC)は他の化合物との分子間引力が極めて弱く、これを繊維に加工すると水や油をはじく機能を持たせることができるんですね。

フッ素系加工剤の原料となる化合物は、パーフルオロアルキル基(Rf基)※¹という構造を持っています。このRf基は表面張力が最も低い物質で、これを表面に加工した個体は、ほぼなんでも弾くみたいです。

※¹CF3(CF2)n-。炭化フッ素アルキル基。アルキル鎖の水素原子を全てフッ素原子に置き換えたもの

これから求められる加工剤とは?PFOAフリー、フッ素フリーへ

フッ素系加工剤は、ごくわずかにPFOA(パーフルオロオクタン酸)という物質を含んでいます。2000年頃からPFOAが地球環境や人体に影響を与える懸念されるようになりました。これは、PFOAが難分解性、生体蓄積性、発癌性の3つの条件を満たしているからです。
従来のフッ素系加工剤は、炭素数が8個以上のC8テロマー(Rf基の構造を有する化合物)を原料としており、これにごく微量のPFOAが不純物として含まれていました。
2015年以降、合繊メーカー各社は、従来のフッ素系加工剤を使用せず、PFOAを含まない炭素数が4、6個のC4、C6タイプの加工剤、フッ素を使わない非フッ素系加工剤など「PFOAフリー」「フッ素フリー」の撥水・撥油・防汚素材の開発に力を入れ始めています。特殊な原糸や生地構造の工夫、ナノ技術などを組み合わせて、従来の加工剤と同等の機能を目指す取り組みも見られます。
さらに最近は、C6のようなPFOAフリーであってもフッ素化合物自体を使わない動きも出ています。C6にはPFHxAが含まれており、毒性は示されていないものの、「疑わしきは使わない」というスタンスになっています。

PFHxAの化学式
CF3-CF2-CF2-CF2-CF2-COOH。パーフロロヘキサン酸。

現段階のフッ素フリーの問題点

・撥水性が低い
・チョークマークがでる
・コーティングとの接着性低い
・滑脱しやすい
など

以上、また記事を随時アップデートしていきます。

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