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ドッキリドッキリドンドン

「おはよ〜ございま〜す、みなさん起きてますか〜。珪子で〜す。本日の企画は〜寝起きドッキリ〜。ということで、今ホテルで寝ている薆ちゃんの部屋の前から生配信してま〜す。小声で聞き取りづらかったらごめんなさ〜い。えー、今日あたしたちは東京でイベントがあって前乗りして来てるんですが、薆ちゃんは普段から朝弱い〜って言ってるので、あたしがこれから突撃して起こしてあげようと、思いま〜す。
と、いうのは嘘で〜、薆ちゃんが寝起きドッキリだけは絶対NG!って前から言ってたので、実はもう今日突撃することは薆ちゃん知ってます!ごめんなさい!
でも〜それじゃリスナーの皆さん納得出来ませんよね?あ、やっぱガッカリってコメント来てますね〜。あ、ここで観るのやめちゃう人!このドッキリまだ続きありますよ!
なんと薆ちゃんには内緒で、起こすときにこれ使っちゃいたいと思います〜。見えてますかね、そうみんな大好き大人のオモチャですね〜。これで起こすとど〜んな反応をするのか、というのが今日のホントのドッキリの内容になってま〜す。
ということであらためて本日の企画は!寝起きドッキリだと思って寝たフリしてる薆ちゃんに大人のオモチャ使ったらどんな反応するのか生配信してみた〜、です!
お〜コメント盛り上がってますね〜、ありがとうございます〜、あ早くしろってコメントもありますね、では早速突撃したいと思います!

ガチャ、

あら、ベッドの方電気付いてますね、うっすら明るい、、。音を立てないように慎重に、、。慎重に、、、、。ん、?
え!誰!!キャッ!ちょっ!!やめ、、

ドンッ!

はあ、はあ、誰?あ、薆ちゃんは!?薆!?
どこ、あ、いた!大丈夫!?何があったの!?あ、まだ配信中だ!

ピッ。」

生配信は突然終わった。
この配信の切り抜きがファンに拡散されると大きな話題になった。部屋に入った珪子が襲われ、抵抗しながら持っていたオモチャでぶん殴っている部分だ。
翌日。
2人は動画配信者のイベントに出演予定だったが会場には現れなかった。その代わり昨晩の一件がニュースになっていた。
薆はドッキリのために鍵を開けていた。そのため薆の部屋に男が忍び込んだ。そこに突撃してきた珪子に驚き、襲いかかった。珪子はとっさに持っていた器具で抵抗。突き飛ばされたストーカーは壁に頭を打ち、当たりどころが悪く死亡。正当防衛が認められるか。といった内容だった。
ファン達は拡散された動画から当然正当防衛を認めるべきだと盛り上がっていた。

この事件の数ヶ月前。
つまり動画配信者イベントの数ヶ月前。
イベントの主催者から薆に出演オファーがあった。
イベント出演のオファーをしてきた主催者と薆に面識はなかったが、薆は主催者が業界の首領と呼ばれる有名人だと知っていた。
しかしそのオファーには条件があった。その内容はいわゆる枕営業と呼ばれるものだった。この条件をのむなら出してあげるがどうか、と。
2人はこれを快諾した。
それほど2人の状況は切迫していた。一時期の勢いはなくなり完全な落ち目だった。イベントの出演を新たなファン獲得のチャンスにしたい。

その後、首領とその取り巻きとは何度か枕を交わした。約束通りイベントへの出演は決まった。
しかし初めて首領達と会った頃くらいからストーカーからの手紙が届くようになった。
『枕をして売れようなんて考えるな 今すぐに止めろ いつも2人を見ているファンより』
というような内容だった。
初めは驚いた2人だったがもう引き返せないと思った。チャンネルにあげる動画も再生数が取れるエッチで過激な内容が増えてきていた。自分達の賞味期限を縮めている自覚はあった。それでもこの業界で生き残るためには仕方がないことだと割り切るしかなかった。
その後も何度か手紙は届いたが、全て無視した。すると『忠告を無視するのなら週刊誌に暴露する そうすれば君達は終わり』
と書かれた手紙とホテルのエントランスでの写真が届いた。

「珪ちゃんどうしよう、、。」
「どう、ってストーカーの口を封じる方法?」
「そ、そんなこと出来ない、、。初めからあんなじじいの誘いに乗るんじゃなかった、、。」
「今更それを言ってもどうしようもないでしょ。とにかくこれから、どう、するのかを考えないと。」
「これから、、普通に就職して働こうかしら、、雇ってくれるところあるかなあ。」
「薆はすぐそう後ろ向きになる!ダメよ!あたしたちはこれからスターになるの!そうよ、それをこんな訳わかんないストーカーに邪魔させない!」
「でも、、。」
「、、あたしにいい考えがある。」
「考え?」
「ええ、ストーカーを、殺そう。」
「!、、いやそんな、無理、、。」
「大丈夫。ほんとには殺さない。社会的にってことよ。薆の協力があればできるはず!」
「、、出来ないよ私には。」
「聞く前から無理とか言わないで!やるしかないの!あたし達にはもうそれしかない!」

珪子の計画♡
ストーカーには今回の一件が無理矢理やらされている(;ω;)って伝えて
それで次ホテルに呼ばれた時には力を貸してって(つД`)ノってゆってホテルに来させる!
部屋に来たら入ってきた人を捕まえて欲しいってストーカーにお願い(>人<;)
そこに生配信しながら部屋に入れば、ストーカーは自分を捕まえようと襲ってくるはず!
そこをバッチリ撮って逆に脅すネタを作るってワケ( ̄^ ̄)ゞ
ストーカーからの被害を事前にSNSで匂わせておけば疑われることはない*\(^o^)/*
完璧な計画♡

居駒がドアマンとして働いているホテルには多くの芸能人が訪れる。そしてそのほとんどが若い女、おそらく駆け出しアイドルを連れたおじさんだった。おじさん達が何の仕事をしているのかは知らないが服装からお金持ちであることは推測できた。大方パパ活か枕営業でもしているのだろう。
ある日、見覚えのある女の子2人組がホテルに来た。薆と珪子だった。
2人は居駒の高校の同級生だった。2人は居駒と目があったがそのまま通り過ぎた。居駒のことは全く覚えていないようだった。学校のマドンナ的存在だった2人とは対照的に全く目立つ存在ではなかった居駒のことを2人が知らないのも無理はない。だが居駒の方は薆のことが高校の頃から密かに好きだった。そして2人の動画も欠かさず観ていた。
2人はエントランスにいた年配の男と合流した。有名なイベントプロデューサーだと聞いたことがあるその男は、頻繁に当ホテルを利用し、毎度違う女の子と合流していた。そして近いうちに大きなイベントがあるらしく、ここ最近は毎日のようにホテルを利用していた。
「あの2人も、、。」
止めさせないと、と居駒は思った。一ファンとして、昔の同級生として、そして昔から薆を好きな男として枕営業なんて止めさせたいと思った。

仕事後、すぐに手紙を書いた。
仕事中に言葉は色々考えたがストレートに言うのが一番だろうと思った。
『枕をして売れようなんて考えるな 今すぐに止めろ』
しかし送った甲斐なく、2人はその後もホテルに現れた。その後も手紙を送ったが効果はないようだった。
何としてでも止めたい居駒はこっそり仕事中に写真を撮った。そして手紙に
『忠告を無視するのなら週刊誌に暴露する そうすれば君達は終わり』
と書き、写真と一緒に送った。

数日後、珪子が1人でホテルに来た。誰かを探してキョロキョロしている様子だったが見つからないのか居駒に話しかけた。
「怪しい人、多分男の人だと思うんですけどそうゆう怪しい感じの人見てません?」
「いいえ、見てませんが。」
「そうですか、、お客の写真をこっそりこの辺から撮ってる人がいると思うんですけど。」
「し、写真ですか。私の勤務中にはいなかったかと思います。」
「そう、、もし居たらコレ、あたしの名刺渡してもらえますか?ここにSNSアカウント書いてるので。ここにDMしてくれって。」
「え、あ、怪しい人から連絡なんかさせて大丈夫でしょうか。」
「ええ、相手はあたしの名前を知ってると思うので渡すとき知らなさそうなら渡さなくてもいいんですが知ってそうなら渡してください。」
「、、かしこまりました。」
「お願いしますね。」
居駒は珪子がストーカー男と連絡を取ろうとしていることに驚いた。探しているストーカー男が自分であることはおそらく間違いない。
居駒はドアマンから名刺を受け取った、とDMを送ってみることにした。
するとすぐに返事があった。
自分達は脅されて無理矢理枕営業をさせられていること。
でもあなたからの手紙で反省したこと。
今度別のホテルでまた会うことがあるがもうこういうことはやめたいこと。
自分だけでは怖いのでマネージャーという体で同席して欲しいこと。
居駒はこれで2人が今後健全に活動できると思い喜んだ。同席するのはちょっと恐いが2人を守れるなら、と思い承諾した。それに薆に会えると思うとついついニヤけが止まらなくなった。

居駒は指定されたホテルの部屋の前にいた。時間もぴったりだ。恐る恐る部屋のドアを開けた。鍵はかかっていなかった。
入り口の電気は切ってあったが奥のベッドの方は暗めに電気がついていた。そこにいたのは薆だった。
「薆さん、、!」
「あ、どうも。あなたが手紙をくれてた方?」
「そうですそうです!ファンとして絶対やめてもらいたくて!そもそも2人はそんなことしなくても人気あるんだから大丈夫なんですよ!美人だし、企画だって最近は伸びてきてるし!まあ昔みたいな緩い感じも僕は好きだったんですけど!」
「は、はぁ、、。」
居駒は緊張と興奮で早口で捲し立てた。薆は勢いに圧倒されたが、計画は進めなければ。珪子がもう少ししたら入ってくる。
「あ、あの、お願いがあって。」
「はい!何でも!何でも言ってください!いやーでも僕にできることなんてあります?無さそうだけどなーでも頑張ります頑張らせてもらいます!」
「まずいったん落ち着いて。これからおじさんがこの部屋に入ってくるんです。大人しく話を聞いてくれるタイプじゃないので、ガッと捕まえてください。その後そっちのソファに座って話をしようと思います。」
「わかりました!」
「じゃあそのソファの陰に隠れて待っててください。すぐに来ると思うので。」
薆はスマホを確認した。珪子の生配信は始まっているようだ。あとは寝たフリをしていよう。
薆はベッドに横になって目を閉じ、音を聞いていた。
入り口のドアが開く音。
ゆっくり人が入ってくる音。
ストーカーが珪子に襲いかかる音。
珪子の叫ぶ音。
珪子がストーカーを殴る音。
生配信を切る音。

「、、ふぅ」珪子はため息をついた。
「ど、どうなったの?上手く、いった?」
「、、いや、うん、なんか、壁に頭ぶつけて。運良くというか悪くというか、、動かないんだけど、、。」
「え、それって死んじゃった、ってこと?」
「、、多分。」
「え、なんでそんな冷静なの?すぐに警察に連絡しようよ!」
「駄目よ!そんなことしてたら今日のイベントのリハ間に合わない!」
「そんなこと言ってる場合!?下手に逃げたりしたらそれこそイベントどころじゃなくなる!」
「それは、、そうだけど、、でも2人でこれまで我慢してやっとイベント出られて、これからなのに、、。」
「そんな、チャンスなんてまた来るわ。その時のためにもここは警察にちゃんと私達は悪くないってことを言わなきゃ。」
「、、、、たしかにそうね、捕まったらもうスターどころじゃないし。」
「ふふっ、こんな状況でもスターになるのを諦めない前向きな珪ちゃんが好きよ。」
「だってこんなことで諦められないでしょ!それに落ち着いて考えるとあれだね、さっきの生配信、あれバズりそうだよね?」
「切り抜きとかも合わせるとかなり回るでしょうね。」
「はっはぁー嬉しいなあ、まさに瓢箪から出た駒って感じね。これならイベント出なくても明日の話題はいただきだわ。」
「またそんな不謹慎なこと言ってー、誰かに聞かれたら炎上しちゃうわよ。」
「ごめんごめん、このストーカーさんに感謝しなきゃね。死んじゃったけど。」
「この人どこかで見たことあるような、、。」
「まあ、どこにでもいそうな顔じゃない?」
「そっか、だからかな。」
「よし、じゃあそろそろ警察に連絡しよっかな。、、ちょっと浮かれちゃってるわ。電話かける前になんか気分が下がること言って。」
「首領の加齢臭思い出したら?」
「おえっ、ありがと。効き目強すぎかも。」

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