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あらすじ 一人暮らしの祖母が体調を崩した。 高校二年の夏休みを翌日に控えていた夏生は祖母…
うちの母 駅から家まで徒歩で十分ほどの距離があったが、本日は母が車で迎えに来てくれると…
祖母の田舎 ほどなくして、今度こそ目的地で車輪を止めた車は、最後に大きくラジエターのフ…
おばあちゃん どこか遠くのほうでチューニングの合っていないラジオが鳴っている。 やが…
墓参り 視線の先に板張りの天井があった。 幼かった頃は、その木目の中に人の顔のような…
午後の海 三時を少し回った頃になって自然と目が覚めた。 慣れない畳の上で寝たせいか腕…
第二章 小学5年あっちゃん 小学五年の夏休み。 僕と両親と三人で隣の県にある祖父母の家に来ていた。 お盆の恒例行事だったそれは、同時に夏休みの一番の楽しみでもあった。 なぜなら、ここには僕の家の近くにはないものがすべてあったからだ。 海と山、カブトムシやクワガタ、駄菓子屋に花火大会に盆踊りと、それこそ本当にすべてがあった。 唯一、一緒に遊ぶ同世代の男友達だけはいなかったが、祖父や祖母、それに年の近い親戚が僕の相手をしてくれるので、そのことに関しては特に不満もな
あの子 「明日那と夏生も、あんまり遅くならんうちに帰ってこいよ」 大人たちはそう言うと…
夜の楽しみ 玄関を開けた途端に、廊下の奥から大きな笑い声が聞こえてくる。 居間に行く…
宿題とおつかい 僕が目を覚ましたのは、あっちゃんが伯父の車で部活動へと向かった少し後だ…
レアリティー シャワーで身体を洗い流し居間に戻ると、ひと目で二日酔いわかる祖父と父がち…
ロマン 昼飯を終えたあとの僕は、午前以上に暇を持て余していた。 テレビも落語やゴルフ…
盆踊り 西の空が朱鷺色に染まり始めた頃になり、ようやく僕の車酔いは快方へと向かっていた…
祭りのあとに 頃合いを見計らって盆踊りの輪から抜け、広場の隅で僕たちの踊りを見ていた大人連中の元へと戻ってきた。 「お疲れ様。あんたら踊りがなかなか堂に入ってたよ」 母が発したど直球の褒め言葉に思わず腰が引けそうになったのは、僕という人間があまり褒められることに慣れていないせいだろう。 運動神経が良いとはいえない僕にとって、自発的に運動をする機会自体がそう多くなくなかった。 もしかしたら今夜の盆踊りで、夏休み全体の総運動量の半分くらいは費やしたかもしれない。 早く