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2023年4Q新規IPO会社の内部監査体制の動向

内部監査の意義

内部監査は社内で独立した内部監査部門が、監査対象部門における内部管理態勢の適切性、有効性を検証するプロセスです。
内部監査は監査役(監査役会・監査等委員会・監査委員会)監査、会計監査人監査とならぶ三様監査のひとつであり、これらの監査は独立しながらも相互連携して実施されます。

小規模組織における内部監査の担い手

IPO準備会社では少なくとも直前期(n-1期)において内部監査体制の整備・運用が要求されます。内部監査体制を整備するにあたって悩ましいのはその担い手の制約です。

社内人材の活用

内部監査人として、社内の内部管理に通じたスタッフが一見適任にも思われますが、そのようなスタッフが内部監査人に必要な監査の知識があるとは限りません。むしろ、多くの方にとって監査は馴染みがないものでしょう。

また、監査担当者は業務の実施者と分離している必要がありますが、内部管理のキーパーソンは多くの領域の業務に関与していることから監査可能な領域はむしろ狭まってしまいます。
内部監査ではこのような自己監査を防ぐために、相互監査が行われることがあります。これは、業務と兼任する内部監査人が、担当業務について自己監査に陥らないために、他部門の業務と兼任する内部監査人と相互に担当部門を監査する体制です。
相互監査によって自己監査は防ぐことができますが、複数の内部監査適任者を任命する必要があります。管理部門は比較的内部監査に適任の人材を見つけやすいと考えられますが、事業部門や開発部門から管理部門の監査を行う適任者を見つけることはときに困難を伴います。

社外からの登用、またはアウトソーシング

社外から内部監査人の候補者と登用することはひとつの解決策になります。公認内部監査人などの内部監査のスキルを有したプロフェッショナルは内部監査の業務を直ちに行うことができるうえに、社内の業務実施からは独立しているため社内の全領域の監査を担当することが可能です。
デメリットとしてはIPO準備会社はリソースに余裕がなく少数精鋭で回すところ、外部からの登用を行うことで純増になってしまうことがあげられます。

アウトソーシングは会計士などの外部専門家に内部監査の一部を担ってもらう体制です。しかし、上場審査においてはIPO準備会社が主体的にリスクを認識し、方策を立てる体制を確立していることが求められるため、内部監査の全てをアウトソーシングすることはできません。
あくまでも内部監査に必要な人材は社内で確保したうえで、補完的にアウトソーシングを活用しましょう。アウトソーシング自体は外部専門家が協力する内部監査を通じて、広く内部管理体制を高めることができるため、大変有用といえます。

2023年4Q新規IPO会社の内部監査体制の動向

実際にIPO会社はどのような体制で上場を迎えたのでしょうか。2023年10月〜12月の間に東証3市場に上場した23社の体制を比較してみましょう。

有価証券届出書のコーポレートガバナンス等の状況、または監査の状況から内部監査体制がわかる記述を抽出しました。抽出にはOCRを活用しており、原文と相違を含む可能性がある点をご承知おきください。また、兼任専任の判断は記述からの推測を含みます。

グロース市場IPO16社のうち、専任の内部監査人を有している会社は7社でした。兼任の2人による相互監査が6社、3人による相互監査は3社でした。
グロース市場では専任の場合はひとりである場合が多いようです。
外部専門家に言及する記述は2社のみでした。どちらも外部専門家は監査補助である点や、会社の指揮のもと行っている点が記述されておりIPO準備会社が主体的な立場であることを強調しているように見受けます。

一方でスタンダードやプライム上場会社は全て専任の内部監査人を複数人有していました。


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