合意された手続(AUP)とは
公認会計士が行う業務の一つに「合意された手続業務(AUP:Agreed Upon Procedures)」があります。合意された手続は下記の通り定義されます。
公認会計士の本来業務である保証業務(監査・レビュー)が業務実施者、主題に責任を負う者、想定利用者という3者間関係によって成り立っているのに対して、合意された手続業務は2者で完結可能であり、保証の定義を満たしません。公認会計士法2条2項に定めるいわゆる2項業務の一種です。
具体的には、保証業務と合意された手続業務には以下のような違いがあります。
業務の目的
保証業務の目的
適合する規準を適用して行われた主題の測定又は評価の結果について、業務実施者が、十分かつ適切な証拠を入手し想定利用者に信頼性を付与する。
合意された手続業務の目的
業務実施者が、業務依頼者及びその他の実施結果の利用者との間で合意された手続を実施し、手続実施結果を事実に即して報告する。
業務の報告
保証業務の報告
十分かつ適切な証拠を基礎とした結論を報告する。
合意された手続業務の報告
業務実施者は手続実施結果を事実に即して報告する。実施結果の利用者は、手続実施結果に基づき、自らの責任で結論を導くこととなる。
財務諸表監査に代表される保証業務においては業務実施者である監査人と、被監査会社である業務依頼者との間で、監査手続について細かに合意することはありません(必要な証憑の提供や、スケジュールの調整のためにおおまかには合意します)。監査人は自らの判断で十分かつ適切な監査証拠を得られるよう監査計画を立案し、実施します。監査結果の報告は、ひとつひとつの手続の結果を細やかに説明することはなく、全体としての評価結果を結論として表明します。
一方で、合意された手続業務においては実施する手続は契約において詳細に取り決めを行います。そして、業務実施者は契約の取り決めの通り、業務を実施します。業務の結果は、ひとつひとつの手続の結果を事実として細やかに記載します(例:A文書のXの記載と、B文書のYの記載は合致する)。そして、業務実施者として全体としての結論を表明することはありません(たとえば、「〜手続の結果、良好と判断される」といった主観的判断は行われません)。
合意された手続業務の例として下記のようなものがあります。
法令に基づく業務
・労働者派遣事業等における許可の有効期間更新の事後申立てに係る中間又は月次決算書
・暗号資産交換業者の分別管理の状況
・金融機関の自己資本比率及びレバレッジ比率の算定に係る内部管理体制
任意に実施する業務
・電子開示書類等のXBRLデータ
・特定の部門の作成した棚卸資産年齢調表
・買収先の売掛金明細表及び棚卸資産明細表
合意された手続業務については公認会計士にご相談ください。弊社においても合意された手続業務の提供が可能です。
参考文献:
・日本公認会計士協会 専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」
・監査・保証実務委員会研究報告第29号「専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」に係るQ&A」
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