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IASB IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」の概要

IASBは、2024年4月9日にIFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」を公表しました。

IFRS第18号は2016年から議論がはじまったプロジェクトであり、2019年から2020年にかけて公開草案のコメントが募集していました。2023年7月にコメントを踏まえた再審議を完了し、今回文書として結実したものとなります。新たな基準は現行のIAS第1号「財務諸表の表示」を代替するものであり、2027年1月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

主要な改訂

1. 損益計算書の比較可能性の向上

IFRS第18号では、損益計算書に営業区分、投資区分、財務区分という3つの定義された区分を導入し、この区分における小計の開示を求めます。また、段階利益として営業利益、財務・法人税控除前利益( profit before financing and income taxes)、当期純利益の開示を求めます。これらの改訂は異なる企業間の損益計算書の比較可能性を高めるものと説明されています。

営業区分
営業区分は将来キャッシュ・フローを予測する出発点としての営業利益小計に利用されます。営業区分は他の区分に分類されないすべての収益と費用が含まれる残余の概念です。営業区分には下記のようなものが含まれます。
・変動的または異常であるかどうかにかかわらず、企業の事業活動から生じるすべての収益と費用を含みます
・追加的な活動からの収益と費用など、他の事業活動からの収益と費用も、他の区分に分類する要件を満たさない場合は、営業区分に分類されます

投資区分
投資区分は企業の事業活動とは別に単独の投資からのリターンを分析することに利用されます。投資区分には下記のようなものが含まれます。
・企業の事業活動とは別にリターンを生み出す資産からの収益と費用。例えば、企業は投資不動産から賃貸料を回収したり、他社の株式から配当金を得たもの
・現金及び現金同等物、関連会社及び共同支配企業への投資からの収益及び費用

財務区分
財務区分と財務・法人税控除前利益の小計によって、投資家は企業の財務の影響を受ける前の業績を分析することができます。財務区分には下記のようなものが含まれます。
・銀行借入金や社債などの負債に係る収益と費用
・リース負債や年金負債など、その他の負債に係る支払利息
財務区分にはすべての負債に係る支払利息が含まれます

2. 経営者が定義した業績指標の透明性の向上

IFRS第18号では、詳細な開示を注記に含める必要があるため、企業は経営者が定義した経営者業績指標(MPM)を特定することが求められています。MPMは以下のような指標です。

・収益と費用の小計であり、フリー・キャッシュ・フローなど、収益と費用の小計ではない指標は、MPMにはなり得ない。
・企業が財務諸表以外の公表資料で使用する収益と費用の小計。
・企業全体の財務業績の一側面に対する経営者の見解を表すもの。

企業は財務諸表中期においてMPMに関する情報を開示します。MPM は企業全体の財務実績の一側面に関する経営者の見解を提供するものであり、他の企業が提供する同様のラベルや説明を共有する指標と必ずしも比較できるものではないという記述が含まれます。

3. 財務諸表における情報のより有用なグループ化

IFRS第18号では、主要な財務諸表(primary financial statements)と注記(notes)の役割を明確にしています。

主要な財務諸表には以下のものが含まれます。
・財政状態計算書(貸借対照表)
・損益計算書(収益計算書)
・包括利益を表示する計算書
・持分変動計算書
・キャッシュ・フロー計算書

財務諸表と注記には補完的な役割があります。

財務諸表の役割:
・企業の財政状態、財務業績、キャッシュ・フローに関する構造化された概要情報を提供する
・情報を標準化された方法で提示し、企業間および期間比較を可能にする
・企業の財務情報の主要な情報源となる

注記の役割:
・財務諸表に表示される情報を説明し、補足する追加情報を提供する
・財務諸表利用者が企業の財政状態、財務業績、キャッシュ・フローをより深く理解するのに役立つ
・会計方針、見積り、判断などの追加的なコンテキストを提供する

主要な財務諸表は企業の財務情報の中核をなすもので、標準化された形式で提示されます。一方、注記はこの情報を補完し、より詳細な説明と背景を提供するものです。

財務諸表と注記は一体となって機能し、利用者に企業の財務状況に関する包括的な情報を提供します。


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