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「中学の時に告白された顔の綺麗な男の子の話」

FBに友人が投稿した「淡く綺麗ないつかの物語」を読んで、いくつかの思い出がよみがえった。それほど素敵でもない、自分でも忘れていた記憶。もしここで改めて考えなければ永遠に失ってしまうかもしれないから、ここに記しておこうと思う。ちなみにこれは3部作。一回目のタイトルは

「中学の時に告白された顔の綺麗な男の子の話」

中三の時、初めて告白というものをされた。
一つ年下の、多分同じ部活の男の子だった。多分、というのはその男の子はいわゆるヤンキーで部活にほとんど顔を出していなかったから。30年前の関東郊外、彼は最後のヤンキー世代だったと思う。

名前も忘れてしまったその男の子は、とても顔の綺麗な人だった。肌は白く、髪は茶色く、目はグレーがかっていた。「つきあってほしい」と言われて、誰だかよく分からないけれどこんなに綺麗な子ならいいんじゃないかと思った。そして私に初めての彼氏ができた。

彼との思い出はたった3つ。
ひとつは田舎の中学生の定番、夏祭り。一緒に行こうと電話があり、ドキドキして隣を歩いた。当時、祭りで一緒に歩いているところを見られてカップルがばれるというのがセオリーだったから、誰かに見られるのではないかという怖いような嬉しいような複雑な感情でいっぱいだった。
(手とか…繋いじゃうのかな…?)
もしそうなったら拒むまい。
少女漫画的展開に心臓が飛び出しそうなくらいに胸がなる。

そのあと彼の友達の家に行き、そこで友達の彼女と二人きりになり無言の30分を過ごした。なぜそうなったのか全く思い出せないのだが、一つ年下の彼氏の友達の彼女(同じ中学なので顔は知っている)と無音の知らない部屋。あんなに気まずいことはそうないだろうという時間だった。30分たっても彼は戻らず、「帰るね」と言い残して家を出た。
手は繋がなかった。

次の思い出は体育祭。私の通っていた中学では、第二ボタンよろしく好きな男の子にハチマキを貰うという謎の伝統行事があった。今思えば、汗のしみ込んだどう見ても綺麗とは言い難いハチマキが欲しいってどんなの?という感じだが、当時は勲章のようなものだったのだと思う。

このハチマキ貰いは基本、憧れの先輩にお願いするものだったような気がする。なので一応付き合っている彼氏に貰うのは違ったのかもしれないが、7月の祭り以来特に何もないままの9月だったので、「私たち付き合ってるんだっけ?」という確認だったのだろう。彼は快く、ちょっと照れながらくれた。

最後の思い出はいつかの授業中。私は窓際の席で外を眺めていた。校庭では彼のクラスが体育をしている。たしか、走り高跳びだったと思う。彼は軽快に走り、飛び越え、体制を崩してマットに倒れこんだ。しばらく待っても起き上がらず、クラスメイトは騒然とし教師によって保健室に運ばれた。

びっくりした。
男の子は色が白く線が細かったから、倒れこむ姿は変な話だが絵になっていて起き上がらないんじゃないかと思った。そして考える。
彼女として、保健室に行ったほうが良いのだろうか。

結論としては一応見に行くも、ベッドの上で友達に囲まれ談笑していてこちらには目もくれなかったので何も言わずに帰った。
なんだかなと思いつつも、こういう時って「いつの間にか私のほうが好きになってた…」という展開を期待するが、そうでもなかったのが現実だ。

その後、ヤンキー気質を発揮しまくった彼が校舎裏で気の弱そうな同級生をこづいている姿を見てしまい、気まずさいっぱいでこの恋は終わる。淡くも美しくも無い、少し情けないお話。

それでも。
ひとつひとつは小さくてどこにも行きつかないような思い出に、私たちは救われていくのかもしれない。もし自分が空っぽになったような気がする時がきても、私の中には「中学の時に告白された顔の綺麗な男の子」がいる。それは多分、灯火のように私を暖めてくれるだろう。なんてことを思うのです。

次回のお話は
「学ランを着た5歳年下の男の子とのデート」
我ながらワードにドキドキします。

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