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生き延びたあとの、透明な人生の話

定期的に児童の虐待死がニュースになる。
そのたび、その死を悼んだり、殺した親を責めたり、殺した親を擁護したり、行政機関を責めたりする声と、自身の経験を想起して苦しむサバイバーの方の声など、様々な立場からの声が聞こえてくる。

目に見えないピラミッドの裾野

ハインリッヒの法則、というものがある。

「1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットがある」という、労働災害における考え方である。
労働災害だけでなく、虐待においてもこうしたピラミッド上に当てはめて捉えることができる。

虐待における子の死、というのは重大事故だ。
殺す意志を持って殺す、というよりは普段から行っていた逸脱した行為がエスカレートした結果の事故であることが多い。(もちろん第三者目線で見れば、何故殺意を持っていないのにこんなひどいことをできるのか、と思えるような行為にはしばしば遭遇する)。

しかし虐待における子の死(自死を含む)、というのは氷山の一角で、死に至らなくとも同様の行為が行われているケースが無数にある。その中の一部が行政機関や警察に繋がり、統計計上される。ハインリッヒの法則における軽微な事故の部分として捉えることができる。

そして、統計上把握することが困難な、どこにも繋がっていない虐待のケースはピラミッドの裾野に無数に存在する。

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