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#ネタバレ 映画 「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」

「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」
監督もお人が悪い
2017-12-13 15:57byさくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

寅さん映画とは、「美人で人懐っこい(そしてどこか無神経な)ヒロインが登場し、寅さんに、『もしかして…俺に惚れてる!?』と、哀しき誤解をさせる話」だと思っていました。

だから、この映画「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」を観始めても、美人過ぎる芸者・ふみ(松坂慶子さん)が出てきたとたん、「寅さん、かわいそう」と思ったものです。今回はまた、ナンパに近いほど、積極的に行動した寅さんでしたし。

しかし映画の中盤、旅先の寅さんの宿を訪ねてきて、「寅さん、泣いていい?」と、甘えながら寅さんの膝枕で眠る“ふみ”を見ておやっと思いました。あまりに濃い情念があったからです。

でも、「彼女と同じ部屋で一夜を明かすことはできない」とばかりに、(やぼな)紳士でいる事を選択した寅さんに、「寅さん、迷惑なら言ってくれればいいのに。これからどうして生きていくか、一人で考えます」と、「ふられた恨み」を漂わせるような置手紙を残して消えた“ふみ”を見て、心が騒ぎました。

「据え膳食わぬは男の恥」とか申しますが、女にとっても恥なのでしょう。と言いますか、色恋の問題で、女に恥をかせたことが男の恥なのかもしれませんね。

さらに、その後、もう逢えないと思っていた“ふみ”が、突然「とらや」を訪ねてきて、着いた早々、店番まで買って出たのです(内心、「嫁」になりたいのかとも思いました)。

聞けば、“ふみ”は芸者を辞め、田舎で寿司屋の嫁になるのを、寅さんに報告に来たとか。

でも夕食後、歓談の席での“ふみ”の態度が微妙なのです。

そして、あの瞬間が訪れます。

寅さんを含め「とらや」の面々は、「いつもの失恋か」と、予定調和の会話を続けていますが、“ふみ”がそれをさえぎるように「寅さんの顔を覗きこみ」何か言おうとしました。しかし、その時“おばちゃん”が無神経に口を開き、“ふみ”のチャンスを奪ってしまったのです。

あの時“ふみ”は何を言いたかったのでしょう。

きっと、「寅さんに、寿司屋との結婚を止めてほしかった」のです。

「俺と結婚しよう!」と言ってほしかったのです。

そう誘導するような言葉を言いたかったのでしょう。

「寅さんは…それで(私が寿司屋の嫁になっても)良いの!?」と。その為に、意を決して「とらや」に来たのです。私はそう感じました。

これは「お見合で結婚が決まりそうな人が、最後にもう一度、忘れられない人に逢う事がある」のと、似ています。

しかし寅さんは動かなかった。

寅さんは“ふみ”の本心に気づかないし、結婚したい寅さんも、本当に結婚する勇気までは無かったのかもしれない。

“ふみ”が去った後、「とらや」には、寅さんの「宿賃の未払い分」を請求するために男(芦屋雁之助さん)がやってきました。いわゆる借金取りですが、これは“ふみ”の行為をダメ押しするシナリオだと思います。

“ふみ”も寅さんからの「(借金)プロポーズの言葉を貰いに来た」のですから。

★★★★☆


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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