見出し画像

#ネタバレ 映画「ブルークラッシュ」

「ブルークラッシュ」
2002年作品
宝物
2003/6/29 18:02 by 未登録ユーザ さくらんぼ 
(修正あり)

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

早く仕事が終わった日には、夕食前のひと時、いつもサンセットの海を見ながら、良い音楽を肴に缶ビールを飲んでいる、などと言うと羨ましがられるかも知れないが、海はライブカメラでの映像である。

私が始めて海外へ行ったのはハワイ。その時この世に楽園は本当に存在するのだと、ちょっとオーバーに本気で思ったことを覚えている。あれから色々あって最近は行っていないので、そろそろまた行きたいと思い始めていた。それでなくても季節は夏である。海へ行きたい。リゾートホテルに泊まりたい。満足に泳げないのにボディーボードぐらいしてみたい。

そんな私はこの映画を大変楽しみにしていた。ずっと昔に映画「ビッグウエンズデー」に感激した記憶があるので、今回も映画館の中央前の方へ陣取り、津波の様なビッグウエイブにまみれる疑似体験と、スピーカーが壊れるのではないかと思えるほどの波のクラッシュを聞きたいと思った。これは映画館で観るべき映画である。

そうすると、ひとつ予期せぬオマケが付いてきた、画面いっぱいにアップになる女優さんの水着姿から、彼女の陽に焼けた肌の体温さえ、頬に感じられる気がしたのである。

そして映画は期待を裏切らなかった。ハワイをディープに旅した気分にもなった。「ビッグウエンズデー」は感傷的なテイストを持つ作品だったが、今回はトムクルーズの映画「トップガン」を思わせるほど切れのいいエネルギッシュな映像と音楽が売りである。並みのアクション映画など太刀打ち出来まい。

(追記)
2003/6/30 21:46 by 未登録ユーザ さくらんぼ 


ハワイへ一週間ほどバケイションに行く観光客は、一週間しかいないのだからと、貪欲にハワイの伝統文化を吸収する。フラを見るのも、サーフィンの手ほどきを受けるのもその一つである。

逆にハワイのロコたちは、どうせ一週間で去って行く人たちだからと、本気で観光客とは交流を持とうとしないらしい。彼らにとって観光客はただお金を落としてくれるだけの存在なのかもしれない。

でも、「それってロコの君達にとって、もったいなくないかい。異文化交流は色んな勉強になるに・・」という監督の声が聞こえてきそうな作品である。

だから主人公の三人娘がホテルの客室係なのは計算されたシナリオだ。でも現実の交流は難しい。本気でお客様に対峙した彼女はホテルを首になってしまう。でも、悪い事ばかりではなかった。それがきっかけになって彼女に恋人ができたのである。でも気をつけないとココナッツ通信という名の島の噂話がすぐ広まってしまう。島は狭いのだ。

ところで、彼女たちがホテルで本気で怒った事柄、あれはいわゆる「旅の恥はかきすて」であり、ロコたちにしてみれば、観光客を密かに軽蔑する理由の中では代表的なものかもしれない。

そうして、もう一つトラブルがある。ロコたち専用の海岸から追い出されるエピソードである。ロコ同士でも生粋の島っ子は、またいっそう頑固のようである。ここらあたりに真面目な映画のメッセージが見える。

そして映画の後半、「お説教したらぶっ飛ばすわよ!」と彼女。しかし「そんなことはしないよ」と言いつつも、やさしく、それとなくアドバイスする彼。それで勇気を奮って彼女は再び海へとトライするのだが、沖に出てからまたも立ち往生。ところが海の中でもまた別の女性から、なんと彼女のライバルからも優しくアドバイスされ、素直にそれに従う彼女。

そう、そう、それでいい。よそ者も、本当は宝物なのかも知れないのです。

追記Ⅱ
2003/11/12 17:18 by 未登録ユーザさくらんぼ

この映画は「勉強」について描いていると思った。だから本文には、それにまつわるエピソードのいくつかを書いた。しかし、タイトルにするには「勉強」では少し硬いと思ったので、あえて「宝物」とした思い出がある。

ところで、今から25年程前、サーフィン映画の名作「ビッグウェンズデー」が公開された。あの時リアルタイムに映画館の大画面で観た興奮は今でも忘れられない。

言い換えると、実に25年ぶりに本格的なサーフィン映画「ブルークラッシュ」が再来したということだ。この歴史的な機会に映画館で観る事の出来た人は幸運だったと思う。これぞ大画面、大音量である映画館の魅力を十分に発揮する作品だからである。そして季節も海の恋しい季節だった。

今回DVDが発売された。映画館で観た人には小さなテレビ画面でも思い出が蘇ると思う。それから余談だが「ブルークラッシュ」を観たとき、「ビッグウェンズデー」の方が、さらに波が巨大だった様な気がしたのでDVDで見比べてみたら、やはり巨大に見えた。

情感たっぷりに描きこんだ「ビッグウェンズデー」は、軽快な「ブルークラッシュ」とは、また一味違った味わいのお勧め映画である。

追記Ⅲ
2004/3/14 7:49 by 未登録ユーザさくらんぼ

海は女性の象徴である。

映画の冒頭、主人公がサーフィンで大波に巻き込まれ、サンゴに額をぶつけてケガをするシーンが出てくる。これがきっかけで主人公は大波に臆病になるのだが、そのシーンの中にほんの一瞬だけ、主人公が幼き頃、母親に捨てられた時の様なシーンが挿入されている。

彼女のケガのトラウマは、実は母親に捨てられてたトラウマを表していたのかもしれない。そして、さらには父もいない。

彼女は幼い妹と暮らしているが、妹も主人公のせいで母親が出て行ったと思っていた。例え兄弟姉妹でも、親との本当の関係(心の軌跡)は本人にしか分からない。そんな孤立無援の哀しい境遇の主人公を支えていたのが二人の女性の友達だった。

DVDのジャケットの表の写真を見ると、主人公が一人前面に出て笑顔を見せている。そして後ろに二人の女性がまるで夫婦の様に肩を寄せ合って笑顔で写真に納まっている。

ジャケットの後ろ面にはサーフボードを抱えてビーチで大波を眺める三人の後姿の写真がある。真ん中には黒髪で黒半ズボンの女性がいる。

もしかしたら主人公の二人の友達には、映画では彼女の両親の役目が設定されているのではないだろうか。黒髪、黒半ズボンの人が父の役である。

孤独で哀しかった彼女は、知らず知らずの内に両親の代役的な雰囲気を持つ人を友に選んだのかもしれない。二人は彼女を支えた。

やがてそれは恋人へ、そしてライバル選手へとバトンタッチされて行き、主人公は母親に捨てられたトラウマを克服していくのである。

華やかなサーフィン・シーンの背後にある、そんな陰の物語を、ふと思ったのだ。

追記Ⅳ 20220.11.1 ( お借りした画像は )

キーワード「サーフィン」でご縁がありました。抱きしめたくなるような海ですね。そのままでも良かったのですが、少しUPして上下しました。ありがとうございました。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)




#映画感想文

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?