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#ネタバレ 映画「PERFECT DAYS」

映画「PERFECT DAYS」
映画「羅生門」を連想
2023.12.29

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

役所広司さんたちが出演し、日本語で話し、東京が舞台の作品でも、情念はさらりとしており、やはり「(西洋人である)監督の個性なのかな」と感じました。

それから、意外にも映画「羅生門」を連想しました。オマージュかはまだ分かりません。

追記 2023.12.30 ( 映画「羅生門」 )

映画「羅生門」を感じたのは、トイレの清掃員として働く主人公・平山(役所広司さん)の趣味が、木漏れ日の写真を写すことであり、さらに、何回となく、モノクロ映像のような形で、空にゆらめく葉っぱも出て来るからです。

映画「羅生門」は、若い頃にTVで断片的に見た記憶があるだけなので、細部は知りません。なので、もしかしたら違う映画かもしれませんが、木漏れ日のシーンは記憶しています。だから、直感で繋がったのです。

①映画「羅生門」と言えば、印象的な、片方が崩れた山門がありましたが、②映画「PERFECT DAYS」では、いきなり退職し、電話一本で去って行った平山の同僚に置き換えられていたのだと思いました。その為、二人分の仕事をこなさなくてはならなくなった平山は、パンクしそうになり、会社に対して「誰でもいいから代わりを…」と怒ることになります。

①と言えば、微妙に違う証言が何回も出て来ますが、②では、同じようで、同じではない、そんな日常が繰り返し描かれています。さらに、②のトイレのデザインが個性的で微妙に違うのも、違う証言の記号なのでしょう。

そして、あるトイレの中(スキマ)には、「三目並べ」の紙が隠すように置いてあり、清掃中に偶然見つけ(ピンときた)平山が、毎日、どこの誰か分からぬ相手と、一手づつ楽しむエピソードもありました。あれは、①の事件の謎解きのつもりでしょか。

又、①には捨て子が出て来るようですが、②にも、トイレの中で泣いていた小さな子供のエピソードがありました。

追記Ⅱ 2023.12.30 ( 映画「イエスタデイ」 )

映画「PERFECT DAYS」からは、映画「イエスタデイ」も連想しました。あの中で、ビートルズの盗作をした主人公・ジャックは、良心が痛み、無名のジョン・レノンを探して謝罪します。

しかし、78歳になるジョン・レノンは「自分は結婚して幸せな人生だった」と言うのです。「幸せはお金では買えない」というモチーフがここにも出て来ましたね。これを聞いたジャックは、自分が出世のために彼女を捨てたことを後悔し、盗作を世に告白し、あらためて彼女に求愛し、受け入れてくれた彼女のもとへ帰っていくのです。

映画「PERFECT DAYS」の話に戻りますが、単調な日常にも変化はあり、そこにも幸せは隠れている。出世してお金持ちになるだけが幸せではないという、映画「イエスタデイ」の世界観につながりました。

追記Ⅲ 2023.12.30 ( 「羅生門」的なクライマックス )

映画「PERFECT DAYS」の平山は読書好きです。なじみの古本屋で安く買ってきます。劇中に出て来た本は、幸田文の「木」と他者の「11」(11の後にまだ文字あったかどうかと、作者名は覚えていません)というタイトルの本です。

私はこのタイトルに左右の対称性を見ました。それは完成された羅生門でもあるのでしょう。半分崩れた羅生門でもある平山は、遠目にはPERFECT DAYSしているように見えますが、内面は「かけた半分」を求めていたのです。劇中、会社に怒るシーンがありますが、あれは、仕事仲間の不足を怒っているだけでは無いのでしょう。「影が二つ重なって濃くなった」のです。

だから、クライマックスの、飲み屋のママ(石川さゆりさん)をめぐっての、元夫(三浦友和さん)との、三角関係(が作られているのだと思います。そう言えば「三目並べ」はこの伏線だったのでしょうか。

ママと元夫が抱擁しているところを平山に見られたママは、(たぶん)元夫に頼んで追いかけてもらい、平山の誤解を解いてもらいます。

ママが「平山の誤解を解いて欲しい」と言ったのなら、元夫は、平山がママの大事な男だという事に感づいたはずです。

だから、平山の誤解を解いた後、「(私がいなくなった後は)ママをよろしく」と言ったのでしょう。

突然のことに、「いや、そういう関係じゃ・・・」と言った平山でしたが、ママと平山は相思相愛のようですので、やがて、二人はハッピーエンドになるのでしょう。

これが、私の解釈ですが、表面だけを見れば、ママは恋愛の告白などしていませんし、平山も断っています。元夫の早とちり、勘違いに見えるかもしれません。

「羅生門」してますね。

追記Ⅳ 2023.12.31 ( 一枚の写真 )

映画『PERFECT DAYS』ヴィム・ヴェンダース監督インタビュー──「孤独」の強さと美しさを描く | GQ JAPAN  この中の写真の一枚に、ヴィム・ヴェンダース監督の左右にイスを置き、監督が手をかけているものがあります。偶然なのかもしれませんが、このポーズ、私には左右対称の山門に見えます。もしかしたら、監督からのメッセージでしょうか。

そう言えば、日本的美意識では左右非対称を好むらしく、オーディオのプリメインアンプのデザインも概ね左右非対称になっています。しかし、欧米では左右対称を好むらしいと、どこかで読んだことがあります。ちなみに、私が使っている国産製品は左右対称で(そこに惚れた)、そのデザインから、類似デザインの欧米メーカーとの関係を想像するレビューを読んだことがあります。真相は謎ですが。

追記Ⅴ 2023.12.31 ( レンズカバーと、トイレのドアと、山門と )

木漏れ日を撮影するカメラとして、平山はオリンパス製品みたいなものを使っていたように見えました。レンズカバーを左右に開いて撮影するものです。同型かは分かりませんが、私も似たものを使っていました。                         

固定焦点レンズなので、被写体の方向へ向けるだけでOKです。だから、宴会中でもカメラを覗かずに、そしらぬふりで素早く写せるので、皆の生き生きとした表情が残せ、「撮影が上手」だとほめられました(うぬぼれてます)。平山の撮影風景も、カメラを覗きませんので、同じ手法ですね。

ちなみに、レンズカバーを開く動作は、門の開閉の記号なのでしょうか。その為に、わざわざあのカメラを選択したのではないかと思っています。トイレのドアも門の記号ですね。トイレはプライバシーの高い場所ですから、謎多き羅生門の山門のつもりだったのかもしれません。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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