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#ネタバレ 映画「ホテルビーナス」

「ホテルビーナス」
縮図
2004/3/7 9:38 by 未登録ユーザ さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

どこか見知らぬ街に逃げるようにやってきて、隠れるようにひっそりと古びたホテルで暮らす彼らは、様々な理由で社会生活から落ちこぼれた人たちである。

しかし、人が集まればそこにもまた小さな社会が生まれる。さらに、そこから引きこもる少女も現れる。「静かな暮らし」を破るように、拳銃を振り回す人も出てくる。

他人に干渉されないように、かかわらないように、しばらくは療養生活者の様に生きるつもりの彼らだったが、皮肉な事に、今度は他人に積極的にかかわり問題解決をする役目を負わされる。なんと言っても少ない人数である。逃げたり、見て見ぬふりなどできない。

結局のところ、人と暮らす以上、何処へ行っても人間関係のゴタゴタから逃げる事などできないのだ。

しかし、それが彼らに幸いした。知らぬ間に再起への機が熟していた彼らに、再び他人を助ける役目を負わせることで、彼ら自身の中にも生きる力が湧いてくるのであった。

ラスト近く、老いた女主人であるビーナスの杖が床にころがり、ホテルビーナスが節目を迎えている事を暗示していた。

古すぎるが、どこか味わいのあるホテル。ワイド画面にほとんどモノクロの映像。そして繰り返し流れる「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァー・ミー」の優しいボーカル。

そうそう、ラストに少しのお笑いセンスも良い。はまる人も多いかもしれない佳作である。

追記 ( 日本的美徳 ) 
2016/9/17 9:57 by さくらんぼ

( 注・映画「たそがれ清兵衛」についてふれています。)

映画「たそがれ清兵衛」の主人公・清兵衛は、毎日黙々と事務をしていました。そして同僚とのつきあいもせず、すぐ帰宅してしまうので「たそがれ清兵衛」と、あだ名がついたほど地味な人間でした。

しかし、ひょんな事から「剣の達人」であることがバレて藩主に呼ばれ、「ある人殺しを命令」されてしまうのです。

実は、彼は殺生が大嫌いなので、剣の達人であることを隠し、事務職を選んだみたいなのです。今と違って当時の剣術はスポーツではありませんからね。だから藩命とは言え、「人殺し」だけは、どうしても辞退したい仕事なのです。

その時、彼の口から出た言葉が「剣術をやっていたと言っても、私は道場の『末席を汚していた』だけで…」というものでした。

この「末席を汚す」という言葉は以前より知っていましたが、この時初めて「美しい言葉だ」と感じたのを覚えています。他国にもこの様な表現があるのかは知りませんが、ギラついたものを嫌い、「謙遜が美徳の、いかにも日本的情緒の言葉」だと。



(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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