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#ネタバレ 映画「スイス・アーミー・マン」

「スイス・アーミー・マン」
2016年作品
どこか「落語」みたいな
2017/10/17 8:59 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

「 死体の腐敗ガスの推進力で、孤島から脱出する男の物語 」。

この話を聞いただけで敬遠しました。ポスターもなにやら尋常ではありませんし、私は「きれいなお姉さん」の出てくる映画が好きなのですから。

しかし、運命のいたずらでこの映画を観ることになってしまい、そして今、こうしてレビューを書いています。

結論を言いますと、意外にも悪くありませんでした。

映画「ギャラクシー・クエスト」などもそうでしたが、「おバカ映画」の体で進行していき、「哲学的感動」が、ラストに不意に訪れます。

今、映画芸術にも、このような新天地を切りひらいているアーティストも少なくないようですね。

★★★★

追記 ( 映画「2001年宇宙の旅」 ) 
2017/10/17 9:18 by さくらんぼ

タイトルの「スイス・アーミー・マン」は、どうも「スイス・アーミーナイフ」の洒落言葉みたいです。あの「ネジ回しや、ハサミ」なども付いている多機能ナイフ(骨)ですね。

あの延長線上には「ロボット」があると思います。そして最終形は「鉄腕アトム」になるわけです。ですから「スイス・アーミー・マン」とは「鉄腕アトムのようなA.I.ロボット」(A.I.宇宙船)の記号だと思います。ロボットだと思えば気持ち悪くありませんね。

そして、それに乗って孤島(地球)を脱出します。

もうお分かりだと思いますが、この前半は映画「2001年宇宙の旅」の匂いがします。現時点ではオマージュだと言うつもりはありませんが。

追記Ⅱ ( 想い出の価値 ) 
2017/10/17 9:29 by さくらんぼ

ロボットは人間の求めに応じてどんどん進化します。それが面白おかしく描かれています。

また、ロボットは、いきなり成人として誕生するので、成長してきた記憶がありません。だから主人公が自分の昔話、身の上話をして、ロボットにメモリーしてあげるエピソードも出てきます。

すると、一人の女性をめぐって三角関係になったりするわけです。人情話が落語的ですね。

追記Ⅲ ( 映画「猿の惑星」 ) 
2017/10/17 10:08 by さくらんぼ

映画の終わり、無事故郷に帰還できた主人公は一躍有名人になります。

しかし、彼は「警察により検視の済んだ死体(埋葬される予定)」と親交を結んでいるので、埋めさせないために、周囲に「生きている」と言うものだから狂人扱いされます。

さらに、主人公が愛していた「大切な人」とは見知らぬ他人であり、孤独な彼が「片想いで憧れていただけ」だったのです。そのうえ悪いことには、彼がケータイで撮った写真を彼女に見つかってしまい、気味の悪いストーカー扱いされてしまいます。

何をどう説明しても、周囲には気持ちを理解してもらえそうもない状況。

故郷へ帰るんだという希望が、故郷では暮らせないという絶望に変わってしまう瞬間です。

ビーチでの絶望。

ここには、どこか映画「猿の惑星」の、あのラストの匂いもします。

とは言っても、あの映画のような救いのない絶望ではなくて、落語的な救済も描かれていますから、良い気分で映画館を後に出来ました。

追記Ⅳ ( ケータイ ) 
2017/10/18 7:42 by さくらんぼ

ケータイでの盗撮は、映画「2001年宇宙の旅」で「HALが人間たちの行動を監視していた」ことを思いだします。

また、映画「猿の惑星」なら「自由の女神はどこ?」という声もあるかもしれませんが、「ビーチに横たわる死体」がそうですし、それで足りなければ、主人公が「ケータイを高くかざして電波を受信しようとする姿」は自由の女神を彷彿とさせます。

追記Ⅴ ( 私はカモメ ) 
2017/10/18 18:20 by さくらんぼ

>もうお分かりだと思いますが、この前半は映画「2001年宇宙の旅」の匂いがします。現時点ではオマージュだと言うつもりはありませんが。(追記より)

いかん、いかん、チラシにある白いカモメくんが「放り投げられた骨」に見えてきました。

乗っている死体が「A.I.宇宙船」ならベストショットになってしまいます。

追記Ⅵ ( 「寂しいんだ」 ) 
2017/11/5 10:21 by さくらんぼ

映画の冒頭、海が映り、いろんな小物が流れてきます。よく見るとそこには「誰か助けてくれ」「無人島にいるんだ」「腹ペコだ」「寂しいんだ」みたいな言葉が書いてありました(正確ではありませんが)。

その冒頭に出てきた「寂しいんだ」が、映画のラストエピソードに繋がるのです。つまりスイス・アーミー・マンを「友として守ろうとする」のですね。だから人間がロボットに心を持たせようとするのは、「人の性(さが)」なのかもしれません。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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