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#ネタバレ 映画「後妻業の女」

「後妻業の女」
2016年作品
後妻つき安楽死請負人
2016/8/31 7:06 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

これはたいへん面白い映画です。幾度もおばさんたちから笑いが漏れていました。私もランチ後なのに眠くならず観られました。と、言いたかったのですが、不覚にもクライマックス辺りで、たぶん5~10分ぐらい、うつらうつらと、してしまいました。けっして映画のせいではありません。

しかし、どうもその辺りで物語が急展開したようで…そんな具合ですから、いつも通り映画の実体とは…微妙な関係のレビューを書かせていただきます。

この映画は、ある意味「必殺仕置人」に似ています。あれは「私刑・人殺しをする悪人が主人公の話」でしたが、「それも有り」だと観る者は納得していました。

ならば映画「後妻業の女」は「後妻つき安楽死請負人」の話なのかもしれません。納得するか否かは観る者しだいです。

おじさんになった人は、たいてい「老後貧乏」の心配をします。幸いにもその心配のない裕福な人は、もう一度「異性にもてたい」、そして「安楽死の夢」を見るのでしょう。

晩年、話し相手もない老人。子供たちの中には「年金目当て」で親を延命治療させ、「絶対死なせないで」と医者に懇願する人もいるらしいし、お医者さまも「医療とは延命である」と基本考えるのかも。

そんな時代、晩年を青春時代に戻ったようなバラ色の生活に変えてくれる天女が現れ、そのうえ危険をおかして安楽死まで確約してくれたとしたら、どうでしょう。

たとえその愛がキャバ嬢のような演技であっても(行ったことはありませんが)、それを承知で「全財産あげても惜しくない」と考える酔狂な御仁が居たとしてもおかしくない、かもしれません。

★★★★★

追記 ( 富の再分配 ) 
2016/8/31 18:20 by さくらんぼ

そして映画の深層では「富の再分配」が主題なのかも知れません。

小夜子の息子は30歳近くになっても自立できず、別居していても金が無くなると小夜子の元へセビリにやってきます。当然、気丈な小夜子とはとっくみ合いのケンカ。

さらに、小夜子が所属する結婚相談所の所長は、小夜子が稼いだ金をいつも折半させます。

小夜子が獲物にしたおじさんたちが亡くなった後、相続人である子供たちが財産目当てに集まってきます。

そして、誤解を恐れずに言うならば、そもそも結婚相談所というシステムそのものが、「余生という富を、新たな出逢いで再分配する場所」、そんな世界だったのかもしれません。

この映画はそこが深層だったのでしょう。それは、子どもの1/6が貧困だと言われている日本の現状とか、そして世界へも繋がっていくのだと思います。

結婚相談所のお見合いパーティーが船上で行われているシーン。あれは「三途川」のようでもありますし、「ボートピープル」のようでもありました。

追記Ⅱ ( 映画「タイタニック」 ) 
2016/9/1 21:43 by さくらんぼ

( 注・映画「タイタニック」についてもネタバレしています。)

>結婚相談所のお見合いパーティーが船上で行われているシーン。あれは「三途川」のようでもありますし、「ボートピープル」のようでもありました。

「大竹しのぶさんがバンザイをし、後ろから豊川悦司さんが腰を支えている」、そんな映画のワンシーンらしい写真があります(記憶が無いので)。

あれは「キリストの十字架」かとも思いましたが、映画「タイタニック」のローズとジャックが帆先で見せる名シーンの再現だったのかもしれません。つまり映画「後妻業の女」は映画「タイタニック」をモチーフとしていた可能性があるのです。

そう言えば映画「タイタニック」のローズは、破算が近い実家を助けるため、お金持ちと政略結婚しようとしていました。この「政略結婚」は「金目当て」という点では「後妻業」とも通じるものがありますね。

そして、そんなローズに本気で惚れたジャックは、結局ローズのために死んでいくのです。映画「後妻業の女」でも小夜子に本気になった男たちは、小夜子のためにジャックと同じ運命をたどりました。

そうすると、結婚相談所のお見合いパーティーが船上で行われた理由、その焦点も定まりましたね。あの船は「タイタニック」のつもりだったのかもしれません。

追記Ⅲ ( 政略結婚 ) 
2016/9/2 8:45 by さくらんぼ

>そう言えば「タイタニック」のローズは破算が近い実家を助けるため、お金持ちと政略結婚しようとしていました。この「政略結婚」は「金目当て」という点では「後妻業」とも通じるものがありますね。

若いころの恋愛は、おおむね映画「タイタニック」のローズとジャックみたいにピュアで衝動的なものが多いと思います。初恋なんてその最たるものですね。

そんなとき昔なら「俺と苦労してくれ」もプロポーズの言葉になりました。まさに「愛があれば何もいらない」の世界ですね。時にはあわてた親御さんが「生活力が無い相手はダメ!」と横から口を出したりしますが。

しかし、人生経験を積んで良くも悪くも分別のついたシニアの結婚は違うようです。先日どこかで読んだものには、「男は『お金が無いけど、看取り』を求め、女は『看取りはいやだけど、お金』を求める」とか書いてありました。

それが本当なら、いつのまにか青春時代のピュアな心はどこかへ消えてしまい、「愛と言うよりは政略結婚に近い」状態になっているのです。

もちろん「俺と苦労してくれ」なんて、晩年のプロポーズの言葉にはならないでしょう。「今より苦労するなら結婚しない」と断られるのが落ちですから。実際、心身の耐性が落ちてきたシニアには、若いころなら平気だった苦労が病気を誘発してしまうこともあるのです。

そんな世界を「デフォルメ」し、小夜子という女性で描いたのが映画「後妻業の女」だったのかもしれません。

追記Ⅳ ( まとめ ) 
2016/9/3 7:35 by さくらんぼ

映画「後妻業の女」は、「愛と言うよりは政略結婚に近い」状態になっている人たちに、「後妻業」を見せつけることで己の姿を再確認してもらい、もう一度青春時代のような「ピュアな愛」を思い出してもらう映画だったのです。

やっぱり、これは映画「タイタニック」でした。

追記Ⅴ ( まとめ ② ) 
2016/9/4 21:04 by さくらんぼ

映画「タイタニック」と映画「後妻業の女」は、「一枚の写真のネガポジの関係にある」とも言えます。

映画「タイタニック」では、ローズとジャックを使い、おもに「ピュアな愛」を描いていました。正攻法ですね。これを「ポジ」と呼んでみます。

映画「後妻業の女」では、小夜子を使い「後妻業(政略結婚)」を描いていました。映画「タイタニック」と比較すると、これは「ネガ」になりますね。

もし映画「後妻業の女」を観て、その「ぶっ飛んだ物語」に困惑された方がいたとしたら、たぶん、それは「ネガ」だったからです。言いかえると映画「後妻業の女」は「反面教師」の話です。

小夜子が最後も逮捕されないのは、小夜子のストーリーを「稀有な他人事」で終わらせないための演出なのでしょう。

小夜子は今もあなたの隣にいるかもしれないし、ひょっとしたらあなた自身の中に潜んでいるかもしれない。観客にそう思わせるまで、あのゴジラみたいにしぶとく生き続けるのです。「私は星を見るのが好きです…」とか言いながら。

追記Ⅵ ( ゴジラ ) 
2016/9/4 21:09 by さくらんぼ

雷が、

ゴジラの足音に聞こえて仕方ない、

きょうの夕立。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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