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#ネタバレ 映画「血と骨」

「血と骨」
2004年作品
究極の新天地
2004/11/25 15:45 by 未登録ユーザ さくらんぼ


( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

主人公は済州島からやって来ました。

後から判明するのですが、このときすでに済州島で子供まで作っています。しかし、すべてを捨てて新天地の大阪にやって来たのでした。

彼は大阪で新たな女性を見つけて所帯を持ち、また子供をもうけますが、フラリといなくなった(さらなる新天地を探していた)と思うと、また帰ってきて新商売を始めたり、愛人を作り、家まで新築したりしていました。

その後色々あって、最後にはまた地上の楽園と呼ばれた新天地、北朝鮮へ渡りました。身の回りの世話をさせる奴隷代わりの子供をさらって。

どうもこの映画のモチーフは「新天地」の様です。

主人公は今を大切にするのではなく、つねに未来を夢見ているのです。

別に未来を夢見る事は悪い事ではありませが、彼が周囲の人たちを人間として見つめる事は、愛人一人を除き、ほとんどありませんでした。

この映画はジャック・ニコルソン主演の「アバウト・シュミット」を思い出します。

2作品に共通しているのは主人公に、周りの人(家族など)を大切にしなかった報いが訪れるという点です。映画のテーマはかなり普遍的なものだったのです。

全体の雰囲気としては「アバウト・シュミット」の方が洗練されていると思います。しかし「血と骨」のラストは直接的で衝撃でした。地上の楽園にある小屋の片隅には、究極の新天地である天国への入り口が掘られていたのですから。

追記 ( 小説「高瀬舟」 ) 
2020/4/25 10:09 by さくらんぼ

小説「高瀬舟」の記事が2020.4.8「朝日新聞」(夕)3面にありました。

久しぶりに読んでみて、私はこう思いました。

極貧の中で自殺をし、兄の介助で安らかに天国へ旅立っていった弟。

仕度金をもらい島流しになることで、天国へ旅立つような気持ちになる兄。

被害者と加害者のようでいて、実は兄弟二人は同じことを語っていたのです。

その話を聞いて、判決に(政治に)疑問を持つ役人。

この「高瀬舟」は、(貧しさを放置することへの)密やかな政治批判の映画だったのかもしれないと思いました。

ふと、「(黒人奴隷にとって)この世は辛いことばかりだから、天国へ召されるのは幸せなことだ」とばかりに、陽気にふるまうデキシーランド・ジャズの世界を思い出しました。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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