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#ネタバレ 映画「グランドフィナーレ」

「グランドフィナーレ」
2015年作品
「人生との和解」
2016/5/2 14:11 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

あの写真は「ジャンプ」に見えましたが、カルト教団が「空中浮遊」という「言葉」を世に広めたため、日本ではそれを語ること自体に「いかがわしい色」がついてしまった感があります

でも「禅」好きの欧米インテリ層は、どうやら修行を極めた者だけができる神秘の技だと今も感じているようですね。映画「スティーブ・ジョブズ」〈2013年〉や、映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」などにも健全な形で出てきますから。

そして、この映画「グランドフィナーレ」にも、主人公が宿泊しているアルプスの高級リゾートホテルに仏教のお坊さんが宿泊していて、なんと「空中浮遊」をするのです。そんな所にいるぐらいですから、修行僧ではなく高僧でしょう。お坊さんでも時にはリゾートするのですね。

彼は普段はデッキチェアーに座って座禅などしているのですが、通りかかった主人公の親友・ミック(ハーヴェイ・カイテルさん)から「浮遊しないのか」と冷やかされて発奮したようです。

きっとあのお坊さんは今までは浮遊が出来なかったのです。本音は悔しかったことでしょう。晩年の彼にはそれが人生の心残りの一つ。“自分の修行は未完成に終わるのか”と自問自答の日々だったのかもしれません。

しかし映画のラストに、お坊さんは浮かぶのです。地上1.5mぐらいも。

お坊さんはきっと歓喜したことでしょう。己を肯定し、人生との和解を果たしたのです。

主人公の作曲家・フレッド(マイケル・ケインさん)も人生と和解できていない一人。だから女王陛下の申し出も断った。女王陛下は「公」の記号、フレッドは「私」の記号かもしれません。80歳近くまで仕事に生き、晩年は最愛の妻が認知症に。これでは引退と同時に「私へのひきこもり」になっても、しかたないかもしれません。この映画は、そんな彼が人生(公)と和解を果たすまでの物語。

全編にわたり美しい映画でした。それはポエムのように、シンフォニーのように。

★★★★

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