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#ネタバレ 映画 「蝉しぐれ」

「蝉しぐれ」
2005年作品
現代にも生きるテーマ
2005/10/4 15:00 by 未登録ユーザ さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

少年時代、道場で剣術の稽古をしていると、突然、友人が先生から叱られるシーンがあります。

先生曰く「打たれなければ、剣術の上達は無い」。

しかし友人は、打たれる前からその痛さを想像することが出来るらしく、「自分には向かない」と剣を棄ててしまいました。そして彼は学問の道へと進む決心をします。実に素早い転身でした。

この「打たれる者の痛み」は、映画のラストに、文四郎が「討たれる者の痛みを知れ」と上役に迫るシーンのセリフと符合しています。

その後友人は江戸へ出て勉学に励み、ついでに、ちゃっかりと遊びにも精通し、陽気な姿で文四郎たちの元へ帰ってきます。

友人は文四郎の父がなぜ罪に問われたのかも調べてきました。また文四郎とふくとの恋愛関係にも気づいている様子で、ふくの消息まで調べてきました。

友人は人の心の分かる人間でした。「痛みが分かる」はその伏線だったのでしょう。

「本当に大切なものは目には見えない」と、サンテグジュベリの言葉を思い出しました。友人は大切なものが見える才人だったようです。

妖剣も出てきました。勝てない文四郎に「心の目で見るのだ」とアドバイスをしてくれる人がいました。

嵐の夜、村人を集めて土手の上から工作の支持をする役人は、目の前に広がっていたであろう田んぼの稲が目に入りませんでした。

江戸へ行くときに、ふくは文四郎の家に行きました。このときふくの胸の内にあった一生に一度の大決心を、応対した文四郎の母も、心が通い合っていると信じていた文四郎自身も、気づきませんでした。

また、文四郎の上役も、名誉回復をして雇ってやったのだから恩義を感じているはずだと、ふくの子をさらう命令を与えますが、実は、この世で絶対にこの役だけは頼んではいけない相手だとは、夢にも思いませんでした。

そして映画の終わりごろ、文四郎とふくを乗せた小船が、敵が大勢待つ橋の下を通り抜けるシーンがでてきます。友人は天狗のお面をかぶり、敵を騙して文四郎たちを助けます。

あの橋の上の敵は、後でこう言い訳するでしょう。

「皆でしっかりと川の上下を見ていたが、怪しい者は一人も見えなかった」と。

「本当に大切なものは目には見えない」ものなのです。



(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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