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#ネタバレ 映画「ローマ法王になる日まで」

「ローマ法王になる日まで」
2015年作品
タフネゴシエーター
2017/6/15 22:34 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

ローマ法王とトランプさんが会談したようです。又、どなたかが北朝鮮問題の仲裁を法王に依頼したという噂もありました。

では、現法王とはいかなる人物なのか。

この映画で観ると、「俺が俺がと、出世を目指すタイプ」ではなく、「下ばかり見ていたら、見上げられる桜になりました」な人なのです。若い頃から人に頼られ、苦悩しながらも、虐げられている人のために体を張って戦ったタフネゴシエーター。

そして法王は、昔から日本へ布教に来たがっていました。上層部の意向で叶いませんでしたが。そんな法王ですから、東アジアの平和のためにひと肌脱いでくださる可能性は少なくないと思います。

映画館にはシスターもいらしていました。日本の強い味方になってくれるであろう雲の上の人、その人間味あふれた青春時代を、彼女たちと目撃できる貴重な映画です。

★★★★

追記 ( タフネゴシエーター ) 
2017/6/16 8:58 by さくらんぼ

以前、放送されたTVドラマ「トッカン 特別国税徴収官」では、悪質高額滞納者に納税させるための秘策として、相手の弱点を探しました。そして、たとえば妻の形見(安いが相手の宝物)だけを差押えすると、相手は返してもらいたいので高額の滞納金すべてを納付しました。

たぶんタフネゴシエーターには、皆そんな得意技があるのでしょう。

しかし、ベルゴリオさん(後の法王)には目立った技はありませんでした。「ただ誠実に話をするだけ」なのです。ここが俗世間の交渉人とは違うところ。

それでも彼にはきっと「神が後ろで助けてくれる」という信心があり、相手には「神には逆らえない」という信心もあったのかもしれません。それがまさに「神技」でありますが。

そんな中に一回だけ、軍の幹部相手に聖職者らしからぬ脅迫めいた手段を使ったことがありました。

ベルゴリオさんは言ったのです。「あなたには最近、出世話もあるそうですね。でも逮捕した人々を釈放しないと悪い評判が立ちますよ。もしそれが上層部の耳にでも入れば、あなたの出世にも響くのでは」と(表現は正確ではありませんが概ねそんな話)。

この直後、ベルゴリオさんは母に会い、怯えと苦悩の表情を滲ませながら手料理を食べます。母に別れを言いに行ったのですね。軍幹部を脅迫したのですから、もしかしたら自分は暗殺されるかもしれないと覚悟して。

しかし焦った軍幹部は、ベルゴリオさんではなく逮捕した人々の方を、条件の良い収容施設に移送すると騙し、睡眠薬か何かを注射して飛行機に乗せ、残酷にも海に捨ててしまったのです。行方不明者にして証拠隠滅を図ったのですね。

やはり聖職者は俗世間の技を使うべきではありませんでした。ベルゴリオさん自身は命拾いしましたが、この事で心に重い十字架を背負ったのです。

映画の後半「マリア様にお祈りすれば、苦悩の結び目を解いてくださる」と、一人の女性から教えられて、以後、マリア様の絵とお祈りの言葉が書かれたカードを持ち歩き、人々にも配るようになったベルゴリオさんに、心の一端が見えるような気がします。

追記Ⅱ ( 信仰と化学 ) 
2017/6/16 9:12 by さくらんぼ

ベルゴリオさんは大学では化学を学んでいました。

化学と言えば「化学反応」「触媒」等という言葉が思い浮かびますね。

たとえば「AさんとBさんが交渉し、そこに神の御意思が存在すると、新たなCという状況が生まれる場合もある」みたいな事を思ったとしたら、それは信心だけでなく、無意識のうちに化学知識も参加していたのではないでしょうか。

追記Ⅲ ( 祈りは脅迫よりも強し )
2017/6/16 13:56 by さくらんぼ

その反省か、ベルゴリオさんはクライマックスのエピソードでは信仰に立ち帰りました。

たくさんの貧しい人たちが住むスラム街に、再開発の話が持ち上がり、人々が強制的に排除されようとしています。

ベルゴリオさんは阻止のため当局と話し合いますが、らちがあきません。

軍部が実力行使しようとしたその時、ベルゴリオさんは上司の神父さん(役職名は忘れましたが、かなり偉い人)と二人で間に立ち、住民とともに祈りを始めたのです。

それを見ていた軍部は、只事ではないと感じ、一人、また一人とヘルメットを脱ぎ、祈りに参加し始めました。そして、いつしか一つの輪になってしまったのです。

祈りが終わった時、そこに敵は存在しませんでした。

追記Ⅳ ( 自分の立ち位置を間違えない ) 
2017/6/16 14:12 by さくらんぼ

軍の幹部は①テニスが大好きでした。彼は個人プレイの魅力を語っていました。

対するベルゴリオさんは②サッカーが大好き。これはチームプレイの競技ですね。

もし脅迫が①の個人プレイであり神父さんにとってアウエーの戦なら、集団での祈りは②のチームプレーでありホームの戦です。

「自分の立ち位置を間違えない」。この映画「ローマ法王になる日まで」の主題は、どうもその辺りにありそうです。

追記Ⅴ ( 祝来日 )
2019/10/2 21:33 by さくらんぼ

「 ローマ法王、長崎爆心地で核兵器廃絶メッセージ検討 」

( 2019年10月1日11時36分 「朝日新聞デジタル」 )

これは若き日の、現ローマ法王フランシスコ(ベルゴリオさん)の物語です。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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