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#ネタバレ 映画「四月の永い夢」

「四月の永い夢」
2017年作品
ふと、イングリッド・バーグマンを
2018/6/6 21:58 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

映画「カサブランカ」

あれはリック(ハンフリー・ボガート)の物語でしたが、再会するまでの、恋人イルザ(イングリッド・バーグマン)の、心の軌跡はどうだったのか。

それを想像し、モチーフにして作ったのが、この映画「四月の永い夢」だったのかもしれません。

劇中にも映画「カサブランカ」が出てきて、スクリーンいっぱいに、愁いを帯びたイングリッド・バーグマンのアップが映り、一瞬、なんの映画を観ているのか分からなくなりました。

そう言えば、朝倉あきさんは、どこかバーグマンにも似ていますね。きっと、そんな理由もあって、ヒロインの座をつかんだのでしょう。ピタッとはまり役です。

これは、希なほど純文学している、佳作。

★★★★☆

追記 ( ハンフリー・ボガート ) 
2018/6/7 8:45 by さくらんぼ

濃いキャラを持っている桐谷健太さん。好きな俳優さんですが、失礼ながら、ラブコメなどで、デフォルメ気味の演技をすると、濃すぎる感がありました。もし高倉健さんが喜劇をしても、きっと同様でしょう。

だから今回、この純文学で、朴訥で真面目な好青年を演じたのは、正解だと思ったのです。

この、「濃い役者が、押さえた演技をする」のは、まさに、映画「カサブランカ」のリック(ハンフリー・ボガート)や高倉健さんと同じですね。

つまり彼は、リック役だったのです。

と、一人で納得していましたら…

実は彼、桐谷健太さんではなかったのですね。彼は三浦貴大さんだったのです(〈父〉三浦友和さん・〈母〉三浦百恵さん)。

ネット上でも、「似てる」との声がありますが、大変失礼しました。

追記Ⅱ ( 「君の瞳に乾杯」 ) 
2018/6/7 9:02 by さくらんぼ

映画「カサブランカ」と言えば、名セリフ「君の瞳に乾杯」ですね。

それが、映画「四月の永い夢」の、どこにあるのかと思いを巡らしましたら、それらしきものを見つけました。

映画の終わり、亡き、元彼の実家からの帰り道、乗る予定の電車が30分も遅れたので、駅前食堂で軽食をとるヒロイン。

ガランとしたオフタイムの食堂で、なぜか真空管式の、古いラジオが鳴っています。

注文を終え、深い湖の底に沈んでいるような気持ちで、聴くともなく聴いていると…

そのラストカットが、(彼と観客から贈る)「君の瞳に乾杯」になっているのです。

追記Ⅲ ( ガメラ ) 
2018/6/7 9:10 by さくらんぼ

いろいろと書きましたが、このような「女性の繊細な気持ちのひだを描いた作品」は、私の最も苦手とするひとつで、実際の所、今回も、ヒロインの内面は、ほぼ分かりません。

きっと、ガメラの方が感情移入しやすいと思います。

追記Ⅳ ( わかれてもすきなひと ) 
2018/6/7 9:45 by さくらんぼ

そう言えば…

私も若い頃、「すでに終わってしまった恋」なのに、周囲の、現在進行形だと思っている人たちから、事あるごとに冷かされた思い出があります。

嫌いになったから別れたわけではないので、そのたびに痛痒い感情が…そして、だんだん、それも、つらくなって…みたいなことが。

追記Ⅴ ( 心の傷を視覚化する ) 
2018/6/7 16:54 by さくらんぼ

ヒロインの所へ、恋人からのDVに怯えた女が逃げてきました。「顔と脚には、ぶたれた青あざ」が。後に出てくる男は、気の弱そうな青年で、ときどき発作的に暴力をふるうみたいです。

彼女は、ヒロインの「心の傷を視覚化するため」に配置されたのでしょう。

ヒロインは元彼を愛していました。しかし、一つ嫌いなところがあって、悩んだあげく、別れたのです。そして、その直後に彼は死んだ。

その間の悪さもあるし、彼がこの世からいなくなってみれば、別れたことを後悔する気持ちもわいてきたし…そこで、ヒロインの時計は止まってしまったようです。

追記Ⅵ ( 視覚と聴覚 ) 
2018/6/7 17:12 by さくらんぼ

ヒロインの新たな恋人になる男性(三浦貴大さん)は、染め物職人で、「きれいな手ぬぐい」を描いています。みんなで花火を見にいくエピソードもありました。

一方、ヒロインはTVを持たず、ラジオと音楽だけの生活。

もう一度観なければ良く分かりませんが、どうも、ここらあたりにも、意味があるようで、この映画の場合、男性は視覚的世界にいるけれど、女性は聴覚的世界にいるようです。

もしかしたら、それが元彼との溝だったのかもしれません。

でも、映画のラストでは、男性(三浦貴大さん)の投書が、ラジオから聴こえてくるのです。

追記Ⅶ ( 「As Time Goes By」 ) 
2018/6/8 8:53 by さくらんぼ

>嫌いになったから別れたわけではないので、そのたびに痛痒い感情が…そして、だんだん、それも、つらくなって…みたいなことが。(追記Ⅳより)

類似の話は、「死の前に別れていた」ことを知らない元彼の両親が、今でも「まるで新妻みたいに接待する」エピソードとして、映画「四月の永い夢」にも出てきました。

これは、映画「カサブランカ」の名曲、「As Time Goes By」を、リックが演奏禁止にしたエピソードが、元になっているのかも知れません。

その他、列車とか、切符とか…もう一度映画「カサブランカ」を観て、細部を比較すると、いろいろ面白いと思います。

追記Ⅷ ( 歩幅 ) 
2018/6/8 8:57 by さくらんぼ

昔、ある売れっ子の女性歌手が、着物姿のビデオクリップを公開しました。

私の好きな歌手の一人でしたが、それを見て残念に思ったことを覚えています。

ジーパンで街を闊歩する時と同じような歩幅で、歩いていたからです。

私は行儀作法の専門家ではありませんが、TVの時代劇や、舞妓さんたちの姿を見て、「歩幅はふだんの半分」ぐらいが美しく見えると感じています。

今回、映画「四月の永い夢」でも、浴衣姿のヒロインが、スマホのイヤホンで軽音楽を聴きながら、さっそうと夜道を闊歩するシーンがありました。

あれは映画「雨に唄えば」を思いだすような、ヒロインの喜びを表現したシーンなのでしょうが、つい、私のトラウマを思いだしてしまったのです。

追記Ⅸ ( 青春時代 ) 
2018/6/8 9:15 by さくらんぼ

4月とは、人事異動もあり、出会いと別れの季節です。

ほどんどの人は、そこから再スタートを切れるのですが、一部の人は、つまづいて、なかなか転職先が見つからなかったり、引きこもりになってしまったりします。

そのような人にとっては、4月で時間が止まっているのかもしれませんね。

私も就職したての4月には、落ち込んで、食欲もなくなり、体力が落ち、何にもない処でつまづいたこともあるほどです(たぶん、床材の摩擦係数の違いで)。

でも、今から思えば、すべてが懐かしい。

追記Ⅹ ( 送り火 ) 
2018/6/9 9:28 by さくらんぼ

映画のラストに、元彼からの手紙を、台所で燃やすシーンがありました。

あれは、ある意味「お盆の送り火」だったのでしょう。

元彼とは本当に別れ、ヒロインが再起するための。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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