ルー語で悔しい思いをした話

今日、さっきのこと。今日はペアでお掃除の仕事をすることになってた。ペアの人は毎回同じという訳ではなくて、現場に集合してはじめましての場合がほとんどだ。今日も私は早めについて寒空の中ペアの人が来るのを待ってた。

それっぽい人が近づいてきていつものように営業スマイルで自己紹介した。ニコニコで挨拶した方がこの後の仕事が円滑に進むからだ。でも様子がおかしい。いつもなら同じような感じで挨拶が返ってくるはずなのに。

「……Sorry、i can't speak Japanese……」

申し訳なさそうに小さな声でそう言った。マスクをしてて気づけなかったけど外国の人だった。

もう、そこからの私、テンパるテンパる。あっ、とか、えっ、とか通常の8倍くらい言ってたし、OKじゃないのにOKOK言いまくって挙動不審なポジティブ妖怪に成り下がってしまった。

英語での会話はできる、日本語は単語を少しずつくらい。スマホの翻訳機能を使ってお互いの言いたいことを伝えることは出来る、ということまで仕事が始まる前に確認できた。

ここで私の英語スキルの話。私は中3の1月から高1の12月までニュージーランドに語学留学をしていた。そういうカリキュラムのある学校に通っていたからだ。だから言ってることは何となく理解できる、でも伝えることができない。日本に帰る頃はペラペラだったのになぁ……。

16歳から考えたくもない年月を経た私の英語スキルは落ちるとこまで落ちていた。

ヴィクトリアさん(仮名)と一緒に何とか現場に入り、お客さんと挨拶してから仕事を始めた。

……もどかしい。

乾いた布巾という単語が出てこなくて
「あー、not wetな、ヤツヲ、Useシテ……」
「Ah……dry?」

え、もしかして私dryって単語が出てこなかった?しかもどんどん日本語と英語混ざってルー語になっていくし。恥ずかし。悔し。dryなんて日常でも使う単語なのに。

他にも整理整頓、とか、洗濯物を畳んで、とか、パッと出てこないものは翻訳機能を使おうとした。圏外。なんでだよ。この瞬間私のスマホは、ヴィクトリアさんとのコミュニケーションを円滑に進めるものから画面バキバキの金属板になった。

仕事が終わり、「my English skill、ベリベリバッド、ソーリーね」と言うとヴィクトリアさんは「そんなことない、私の日本語がダメで、ごめんね」的なことを英語で言ってくれた。この1月に来日して、2月からこの仕事を始めてるヴィクトリアさん。日本語はこれから習得していくんだろう。

外国の働き手が日本にどんどん入ってくると聞くと私は日本人もろくに働けてないのにもっと安いからって買い叩くような真似して……と思っちゃってた。

ヴィクトリアさんは真面目で、仕事も丁寧で、隅々までピカピカにしてくれた。家族のいる国から離れて仕事仲間の人らと日本に来て、寂しいかもしれないのに。リスペクトが止まらない。

同じ現場でまたペアになる確率はあまりない。だからヴィクトリアさんとはもう会うこともないだろう。

ルー語を駆使するテンパりポジティブ妖怪がdryもいえなかった事、どうか忘れて欲しい。そのエピソードを人に話してもいいから顔を思い出さないで欲しい。


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