尾身会長の仮説は正しいのか?Part Ⅰ 「若者が感染拡大の原因」
(2021.4.29)
今の緊急事態宣言の主目的は「人流の抑制」。
提唱者は政府の分科会であり、その中心は言わずとしれた尾身会長。尾身会長とは普段衆院厚労委員会でよく質疑させていただいているが、その謙虚かつ献身的な姿勢にはいつも尊敬の念を抱いている。
ただ、その学説というかお考えには、疑念がある。尾身説の集大成が令和2年12月23日の新型コロナウイルス感染症対策分科会で提示された「現在直面する3つの課題」という資料。
ここでは、20代の若者と飲食店がやり玉に挙げられているが、今回はPart 1としてまず前者について検討する。
現在の主流の考え方は、尾身氏に倣って「若い世代から流行が始まり、中高年世代に遷移し、入院者や重症者を増やしていく」というもの。これは若い世代の感染者数が多いことを根拠にしている。上記資料はその根拠として以下のグラフを挙げている。
(厚労省Webより引用)
しかし、この推測はかなり乱暴。年齢階級別に罹患率も感染把握率も均等であるにも関わらず20代だけが二次感染を多く出している、とすれば20代が感染拡大の主因と言うことも出来るだろうが、実際はそうではない。
同じ環境にいて、同じようにウイルスに晒されていて、同じように体内にウイルスを取り込んだとしても、20代は感染に対する防御反応の一つである発熱などの症状が出やすいため、「新規陽性者」として補足されやすいに過ぎないのではないか?
元々この感染症は、年代別の罹患率がきれいに階段状に分かれている。あまりにも綺麗に分かれていることからすれば、これは行動パターンによるものではなく、免疫システムが完成し免疫力がもっとも高いのが20代なので、発熱などの症状が出やすく、補足されやすいだけ、という解するの素直なところだろう。10代以下の数が少ないのは免疫システムが未完成なので、高齢者と同様、罹患しても発熱などの反応が現れず、把握されないだけなのだろう。
(厚労省Webより引用)
最近、この推測に有力な証拠が加わった。それは新型コロナワクチンの副反応の年齢階級別発生頻度。このワクチンは、抗体生成に伴い、副反応として発熱などの短期的副反応が起きるといわれている。つまり、感染が起きたのと同じ状況がワクチン接種者に発生しているのだが、これも年齢階級別にハッキリと階段状になっている。
(厚労省Webより引用)
要は20代が無謀な行動をしているから感染しているのではなく、同じように感染していても、20代は症状が出やすいので把握されやすいだけなのだろう。
このことは、データを精密に開示している大阪府の下記のグラフからも読み取れる。
(大阪府WEBより引用)
20代・30代が先行して人数が増えている様子は窺えず、どの世代も同じように感染は増えている。
若者等を悪者にしても感染拡大は止まらない。また、大学をオンライン授業にしてもあまり意味はないだろう。 こういったエビデンスが薄く理屈も立たない対策は見直していくべきだろう。 なお、Part Ⅱで「飲食店主犯説」を検証する予定です。
【補足】この感染症の重症化は、ウイルスの作用というより、免疫暴走(サイトカインストームによる激しい炎症反応)によって惹き起こされる。宮坂先生によると最新の知見では、炎症反応が糖尿病などの慢性疾患に深く関与しているため、持病のある方は重症化し易いのだろうということ。だから、同じように免疫力が低い子供たちと高齢者で、後者だけが重症化するのだと推認される。
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