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「オリンピック中止」を尾身会長に言わせようとするのはピント外れの上に無責任。

(2021.6.5)

このところ、国会の厚労委員会で尾身会長に「オリンピック開催をとりやめるべきではないか。」と毎日のように某党委員が迫っている。中には大声で脅すように「死人が出たらどうするんだ。」と凄む方もいる。そうして無理矢理引き出した答弁をマスコミが大々的に報じる(毎日読売朝日)。

はっきり言って疑問だ。

まず、尾身会長に意見を求めるのは妥当か?という点について。

厚労委員会では、あたかも尾身会長がキャスチングボートを握っているかのように質問されているが、分科会の役割は、新型インフルエンザ特措法6条5項で「政府行動計画」の作成にあたっては、有識者会議の意見を聞かなければならない、と定めれていることに基づくもの。その条項に基づき、閣僚会議の決定で「分科会」が設けられ、審議条項も明確に定められている。

それは、

(1)感染動向のモニタリング

(2)ワクチン接種のあり方、接種の優先順位

(3)「次の波対策」を含めた今後の新型コロナウイルス感染症対策

○ 検査体制、医療提供体制の強化 ○ 保健所機能・サーベイランス等のあり方

○ 市民生活、事業活動における留意事項 ○ リスクコミュニケーションのあり方

○ 研究推進体制や疫学情報共有のあり方

というもの。

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(内閣府Webより引用)

この文書から明白な通り、役割は感染動向のモニタリング、ワクチン接種のあり方、今後の新型コロナウイルス感染症対策に限定されている。オリンピック開催の判断は分科会の役目ではないことは明らか。

そもそも日本政府はオリンピックの契約当事者ではなく、その開催については、東京都とIOCが行うべきものであって、政府が決定に関与するものではない。したがって、尾身会長の公的な場でその是非について意見を求めるのは筋違い。

分科会はあくまで、感染症対策の一環として、感染に関する現在の状況と見通し(上記(1))、および開催が決定した場合にどのような対策を取るべきか(同(3)事業活動における留意事項)につき意見具申するにとどまるものだ。

この点について尾身会長に昨日の衆院厚労委員会で尋ねたところ、尾身会長は、

「分科会は政府の感染対策に助言。なので、再三申し上げているが、オリンピックが開催すれば地域の感染に影響があるからそのリスクがどうこう、どういうふうにすれば、ということを申し上げている。それ以外のことは責任の外。」

とはっきりと話された。当然報道は一切されなかったが(マスコミは自分たちの方向性以外の事象は全て全て無視が常套手段)。

青山先生

尾身会長

次に、より実質的に、我が国が今、オリンピックを開けない状況なのか?について。

国際的にみれば、わが国の感染状況は明らかに良好な部類。

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100万人あたりの新規陽性者数は、欧米の半分以下だ。グラフの見た目を表現するならさざ波どころか揺らぎレベル。

ちなみに、アメリカの新規陽性者は昨日17821人・100万人あたり53人、日本は3036人・100万人あたり24人、アメリカも日本も減っているが、それでもアメリカは日本の倍。

フランスは、昨日8161人、100万人あたり124人で日本の5倍。

にもかかわらず、テニスの4大大会の一つ全仏オープンが開催され、アメリカでは全米プロゴルフが開かれ、そこには大観衆がほぼマスクなしで集っていた。インディ500にも大観衆が。

主要国は、日本よりも厳しい感染状況なのに、巨大スポーツイベントを次々と開催している。

そして、全米プロゴルフのギャラリー(AFP「全米プロ最終盤のギャラリー殺到」)などまさに「人流」という表現がぴったりだが、この後、アメリカやら当該開催地キアワ・アイランド、サウスカロライナ州で感染者が増えたということもなく、5月24日に384人だったが昨日は102人。

こうした姿勢に呼応するように、アメリカでは消費者物価指数が急騰するなど経済も全開モード。世界は前に向けて歩みを進め始めているのだ。

こういう世界の流れを見ると、なぜ日本ではオリンピック中止ばかり声高なのか疑問が湧く。

そして、オリンピックについては、昨日午前中の質疑で尾身会長も言っていたが、アスリートの心情にも配慮しなければならない。

アスリートにとっては、4年(今回に限っては5年)に1回の大舞台、一生に一度の場合もある。このために常人には考えられぬほどの尋常ならざる努力で、人生をかけているのだ。

日本は、EUが新たに「日本は安全国」として不要不急以外の入国を認めた国(朝日)。

病床が依然逼迫しているところもあるが、基本、医療施設が数あるなかで受け入れが進まず、しかも都道府県によっては余裕があるのにその間の移送もできていない。つまり、国内的な努力が足りていないのだ。

それで返上となれば、当然日本の国際的信用はガタ落ちになるだろう。

まだ、海外報道は、日本の国内世論を紹介している程度だが、やがては海外メディアも気付く。

世界の主要国は日本よりもはるかに高い感染レベルにありながら、国際的なスポーツイベントを行っている。そして、オリンピックは、IOCから押し付けられたのではなく、自ら立候補して受託した大会だ。

安易な中止論が横行している現状を見るにつけ、日本人には責任感が失われつつあるのでは、との疑問が生じざるを得ない。



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