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あおヤギさんからの手紙#10 日本再生のカギ-株主資本主義から公益資本主義へ。

こんにちは、衆議院議員の青柳陽一郎です。
最近は日中の気温があがって春らしい天気が続いていますね。

さて、3月16日、党経済調査会(会長:江田憲司衆議院議員)で原丈人さんが講演するというので楽しみにしていました。

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原さんとは、私が2006年に松田岩夫科学技術・IT大臣の政策秘書を務めていた際にお会いしました。日本にイノベーションを起こすためにはどうすればよいかというアドバイスを的確に説明してくれた方で、米国シリコンバレーで大成功を収めた稀代の起業家として強烈なインパクトがありました。また共通の知人もいたことからシンパシーもあったのです。

そんな原さんに久しぶりにお会いできる、そしていま、日本社会に必要な公益資本主義についての話を直接聞ける、またとない機会に期待が膨らみました。

公益資本主義は、まさに我が意を得たり、これが党の政策の本丸になる、アベノミクス継承を掲げる菅政権の対立軸になる概念だと確信し、今回はその「公益資本主義」について投稿します。

原さんが提唱する「公益資本主義」とは

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会社はだれのものか、それは古くて新しい課題。

株主資本主義、株式会社は株主のもので、その使命は株主の価値の最大化、株主配当がすべて、株主へ多く配当した会社経営者が優れた経営者だとする考えで、今日メディアでもプロ経営者なる方が取り上げられることも散見されます。

しかしこの株主資本主義は、確実に日本社会を蝕んでいる。日本の会社の経営資源を削いでしまう、と原さんはわかりやすく説きます。

経営者が株主ばかり目配りすれば、短期配当に注力することになります。それは経営を短期視点で捉えることになり、中長期の視点、研究開発や社員の働き方、従業員の賃金に目が向かなくなります。経営合理化、社員の働く環境や待遇は後回しになってしまう。

象徴的事例として、経営難にあえぐ企業が従業員報酬を大幅削減し、経営の合理化にめどをつけた経営陣が多額のボーナスを受領するケースで、アメリカン航空の場合、客室乗務員340億円の給料減額を社員に呑ませ、その結果、経営陣は200億円もの巨額報酬を得る、日本社会がマネをしようと取り組んでいる企業統治の成れの果てはこうした企業経営です。これは国民に幸せな社会をもたらすことになるでしょうか。

公益資本主義は、会社は社会の公器と捉え、社員、取引先、地域社会、株主、さらには地球まで、その事業収益を適正に分配していくこと、事業を通じて社会に貢献することと定義しています。

もとより日本企業の活動モデルとして近江商人の三方良し(売る良し、買う良し、地域良し)の考え方がありました。日本経済文化の基本に立ち返る、これが多くの国民の幸せをつくることにつながると思います。

菅政権が引き継いだアベノミクスは成功したのか?

我が国は、2012年12月に安倍総理が返り咲き2020年8月まで続く長期政権をつくりました。その原動力となったのが経済政策アベノミクスです。

大胆な金融緩和策、機動的な財政出動、成長戦略という3本の基本政策をパッケージで進めるというものです。この8年以上続く政策に効果があるのか、残念ながら答えはノーです。これまで政府与党は、アベノミクスにより、株価は上がり、大企業の決算は改善し、有効求人倍率は上がったと繰り返し説明してきました。

しかし、株価は日銀、年金、外資ファンドが買い支え、我が国の99%を占める多くの中小企業はその恩恵に与れず、非正規雇用が4割という社会構造を生み出してしまいました。

アベノミクスの目的は本来、2%インフレとGDP・所得・消費の増加です。これらは2012年時点から伸びていません。特に実質所得・実質賃金・個人消費が増えない、それが「実感なき景気回復」と言われる所以です。 

日本は1992年からこの30年、賃金が伸びていない先進国唯一の国となってしまったのです。その間、お隣の中国は30倍の賃金成長があり、GDPも抜かれてしまいました。

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消費は、GDPの6割、民需の7割を占める重要な指標です。消費を伸ばすには、賃金と所得を上げていかなければなりません。アベノミクスはその点、残念ながら失敗したと言えるでしょう。

株主資本主義がもたらした弊害

大企業の決算が過去最高を記録する中、賃金が上がらない原因の一つに、労働分配率の低下があります。2014年の米国型コーポレートガバナンス改革後、それが顕著になったと原さんは指摘します。多くの日本企業が株主配当と自社株買いに走った。その結果利益の100%を株主還元し、その額が従業員給与をはるかに超える還元額となる日本の大企業が出現するようになったのです。

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その結果、企業の利益が上がっても従業員の賃金が伸び悩み、消費は停滞したままとなってしまいました。ファンドや投資家に富が集中しやすい仕組みに企業経営を変えてしまったのです。

しかもファンドには多くの外国ファンドも含まれます。日本の従業員が汗水流して得た利益の多くを外国ファンドがさらっていく。こんな悲しい仕組みはありません。そしてそれは社会の格差を拡大し、格差が社会の分断を助長させてしまうのです。

一億総中流と言われた時代はもう過去の話。今や我が国は、どの世代をとってもOECD加盟国の平均を上回る格差大国になっていることを自覚しなければならないのです。 

株主資本主義から公益資本主義への転換を!

格差と社会の分断は米国でも顕著になりました。そこにコロナ禍が加わり、経済の落ち込みと失業者の増加が襲い掛かったのです。

こうした中、米国の投資家も資本家も、そしてファンドも声をあげ出しました。富の集中から従業員を守るために我々投資家に課税しろと。

米国経営者団体は、2019年8月の米国ビジネスラウンドテーブルで、これまでの常識とされてきた株主第一主義を捨て、①顧客 ②従業員 ③取引先 ④地域社会そして⑤に株主、と価値を提供すると約束し、これまでの方針を転換することを明確化しました。

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2020年一月のダボス会議でもステークホルダー資本主義(公益資本主義)が掲げられました。
世界の経済機関であるOECDやIMFも格差の解消が持続的な経済成長につながるというレポートを発表しています。

巷間言われるESGは、これまでの社会貢献事業(CSR ソーシャルコスト)という概念から投資目標、つまり利益からの貢献ではなく、環境や社会活動そのものが事業になるという概念に変わったのです。これも金融資本主義から脱却している一つの証ではないでしょうか。日本が導入した米国型コーポレートガバナンスはすでに周回遅れなのです。

どうすれば良いか?原さんは次のように提案します。

会社法制を改正し、会社が社員とその家族を守れるようにすることに立ち戻る。

株主資本主義を転換し、会社は中長期の投資を行い、研究開発やイノベーションの誘発に取り組み、中長期的な企業価値を向上させる。四半期決算会計制度を廃止し、配当自社株買いから資本・法定準備金へ資金を積めるようにする。こうしたことを会社が取り組めるように社外取締役の役割を見直す。

私もこれまで国会質疑や集会で、賃金と所得を増やし格差を解消する安心の経済社会を提案してきましたが、まさに公益資本主義がコロナ後の社会づくりのカギになると改めて確信しました。経済政策を転換し、日本も基本に立ち返るときだ、と。

民主主義は中間層がしっかりしていないと機能しない。原さんの言葉です。
株主と経営者が極端に利益を独占する株主資本主義を続ければ貧富の格差はますます広がります。格差は分断につながり、それは社会の不安定化を招きます。

日本の民主主義を守り、社会を平和的に発展させるために社会経済システムを本来の姿に取り戻すため、決意を新たに頑張ります。

衆議院議員 青柳陽一郎