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憲法が改正されそうな勢いである

『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』カント (翻訳) 中山 元 (光文社古典新訳文庫)

中山元は在野で活躍する哲学者にして翻訳家。難解な思想を平易かつ鮮やかな日本語に置き換える力には定評がある。その彼が世に問う斬新な訳業。カントの著作には特有の難解な哲学用語があり、これまで読者を遠ざけてきた。新訳では〈悟性〉〈格律〉などの専門用語をいっさい使わずに翻訳している。この大胆な試みは哲学の翻訳では特筆すべき快挙。いま初めて、カントは、日本で読まれ始める。

カントの本文よりも解説が丁寧にカント哲学を読み解いてカント哲学の入門書としては良書。最初に「啓蒙とは何か」で哲学する姿勢を示し、続く聖書から読み解く人類史の論考は自然と人間の欲(原罪的な悪)と理性の成り立ちを紐解く。ヘーゲルの歴史が人類の自由を勝ち取る歴史だったするならば、カントの歴史(哲学のグランドデザイン)は永遠平和ということになるので、まだ歴史の過程にある人類ということだ。その中で「永遠平和のために」で提言されている論考は今なお必要とされていることなのか?でも無理無理な話なのか?(2016/09/25)

「啓蒙とは何か。それはみずから招いた未成年の状態から抜け出ることだ。未成年の状態とは、他人の指示を仰がなければ自分の理性を使うことができないということである。人間が未成年の状態にあるのは、理性がないからではなく、他人の指示を仰がないと、自分の理性を使う決意も勇気ももてないからなのだ。だから人間はみずからの責任において、未成年の状態にとどまっていることになる。」「こうして啓蒙の標語とでもいうものがあるとすれば、それは「知る勇気を持て」だ。すなわち「自分の理性を使う勇気をもて」ということだ」

ソ連や中国を牽制しつつGHQでは天皇と手を組んだ。だから9条を廃止することは再び天皇の戦争犯罪を問われることになる(1条の無効化)。平成天皇が象徴として天皇の地位を守りたいのは現憲法を守ることに他ならない。それで9条の成り立ちとしては、国連憲章(カントの「永遠平和のために」)の理念が求められるわけだ。


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