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デヴィッド・ボウイよりレスター・ボウイ

Lester Bowie"All The Magic!/The One And Only"(ECM/1983)

Lester Bowie - trumpet
Ari Brown - tenor and soprano saxophones
Art Matthews - piano
Fred Williams - bass
Phillip Wilson - drums
Fontella Bass - vocals
David Peaston - vocals

TwitterのTLがデヴィッド・ボウイ(生誕祭8日と命日10日)ばかりなので天の邪鬼にもレスター・ボウイを聴く。アート・アンサブル・オブ・シカゴ(正式名はAssociation for the Advancement of Creative Musiciansだから、AACMなんだ。いつもAAOMだろうと思う疑問が今回わかった)のメンバーでルイ・アームストロングに憧れたポスト・フリーのミュージシャン。

フリー・ジャズというよりジャズの根源性を求めながら革新性であれというスタイルで、このアルバムを聴くとよく分かる。一曲目がルイ・アームストロングに捧げられていたり、アルバート・アイラーの曲を取り上げたり。またソロでは、チャールズ・ミンガスに捧げる曲もあれば、マイルスをからかう曲まである。また"All The Magic!"がブラス・ファンタジーのグループ演奏であり、"The One And Only"はソロにプレイによる多重録音というでレスター・ボウイの革新性とテクニックが堪能できるアルバムとなっている。

"All The Magic!"はバンドとして黒人大衆音楽を現在(ポスト・フリーの80年代)に蘇らせるのでマジックなのだ。その後に「ブラス・ファンタジー」というグループを結成するボウイのAACM以外の活動の転換点となったアルバムでもある。アルバート・アイラー"Ghosts" を黒人大衆音楽として演奏していたり、ヴォーカル入りのR&ブルース調だったりのマジック・サウンド。

"The One And Only"のソロ・プレイのレスター・ボウイのトランペットの音の解放感は最初の曲"Organic Echo Part I" の曙感(相撲取りじゃなくて、春はあけぼのという元の意味)がいいです。テクニック的にはあらゆるトランペットの可能性をミンガス・サウンドのように紡ぎ出すミンガスに捧げた"Charlie M. Part II"、かと思うとマイルスを諧謔性にとんだリスペクト曲?"Miles Davis Meets Donald Duck"なんて曲もある。マイルスは自伝で最高にヒップホップなミュージシャンとして、レスター・ボウイを上げているという。


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