見出し画像

ひまわりは枯れても照らす暗幕を


Netflix『これからの人生』2020年製作/95分/イタリア/原題:La vita davanti a se/監督エドアルド・ポンティ/出演ソフィア・ローレン/アブリル・サモラアブリル/ババク・カリミ/
(あらすじ)自宅で子守をしているホロコースト経験者が、自分を襲った家なき子を引き取ることに。反発し合う2人だったが、共に暮らすうちに少しずつ心を開いてゆく。

エドアルド・ポンティ監督はソフィア・ローレンの息子だった。この映画の見所はやっぱソフィア・ローレンの演技力の確かさ。最初は気難しい年寄婆さんなのだが、後半は認知症の年老いた老婆姿で涙を誘う。ホロコースト体験者の女性が身寄りのない黒人少年の面倒を見る物語。

黒人少年の眼力の強さ。人を信じられない者の目。はじめ彼に笑顔はなかった。ソフィアの蝋燭立てを盗むシーンは、『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンの姿を重ねている。黒人の少年は、麻薬の密売人をしたりするとんでもない悪童なのだが、ソフィア・ローレンの婆さんと対立しながら気持ちが通じ合う。それは、彼女が過去にホロコーストで迫害されていたからだった。

ソフィアの記憶が過去へと彷徨いホロコースト時代に立ち返ってしまう。少年は薬中で幻覚(子猫のようにじゃれつくライオン)など見ているから、なんとなく自分と重ねてしまうのだ。そして「病院へ連れて行かないで」、というソフィアと約束する。ホロコースト時代に実験台になったのだ。その過去ははっきり描かれていないのだが。

ソフィアがアパートの部屋で倒れて救急車で運ばれる。少年は、ソフィアを助けに行く(それは命を縮めることだが、病院で植物人間になるよりはいいと考えたのか?)。ソフィアがいつも一人籠もる地下室へ連れて行く。ソフィアの子供時代のミモザの思い出の絵葉書。少年はミモザの枝をプレゼントするが事切れる。涙腺崩壊映画。ソフィア・ローレンの演技は、どこか『ひまわり』を思い出す。アカデミー歌曲賞ノミネート作品。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?