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若者に媚びる短歌界

『短歌 2022年8月号』

【カラーグラビア】
名湯ものがたり みたまの湯(山梨)…三枝浩樹
空の歌…千葉 聡 選

【巻頭コラム】うたの名言…高野公彦

【巻頭作品28首】来嶋靖生・島田修三・米川千嘉子・澤村斉美
【巻頭作品10首】沢口芙美・佐藤通雅・外塚 喬・阪森郁代・田中道孝・浜名理香・紀野 恵・鍋島恵子

【特別座談会】流行る歌、残る歌…大辻隆弘・俵 万智・斉藤斎藤・北山あさひ

【U-25短歌選手権】
優勝作品/準優勝作品/各選者賞
選考座談会…栗木京子・穂村 弘・小島なお

【特別寄稿】
ニュース映画を観る斎藤茂吉…吉川宏志

【作品12首】仲つとむ・金子正男・飛高 敬・楠田立身・内田 弘・小川恵子・若菜邦彦・糸川雅子・佐田公子・難波一義・岩井謙一・梶原さい子
【作品7首】永平 緑・田中滋子・平塚宗臣・大谷宥秀・清水麻利子・室井忠雄・松本高直・守中章子・大月洋子・大森悦子・松下菜水・鈴木陽美・川上まなみ

【連載】
フリージアの記…水原紫苑
挽歌の華…道浦母都子
ぼくは散文が書けない…山田 航
かなしみの歌びとたち…坂井修一
連載 啄木ごっこ…松村正直
歌人解剖 〇〇がスゴい!…棗 隆
うたよみの水源――現代短歌の先駆者を辿る…樋口智子
一葉の記憶 ―私の公募短歌館―…吉田恭大
嗜好品のうた…田中愛子
見のがせない秀歌集…上野春子
短歌の底荷…表現・龍
ふるさとの話をしよう 京都府…川田一路

【歌壇時評】山下雅人・鈴木加成太
【月評】山田富士郎・加藤英彦
【歌集歌書を読む】喜多昭夫・後藤由紀恵
【書評】

【投稿】
角川歌壇…香川哲三・渡 英子・林 和清・大口玲子 選
題詠…河野美砂子 選

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編集後記/次号予告

目次

【特別座談会】流行る歌、残る歌

必ずしも流行る歌が残るわけでもなく、残るからいい歌でもないという。斎藤斎藤氏の残る歌の3つの条件。

一発で耳に残る歌。

エスカレーター、えすかと略してどこまでも えすか、あなたの夜をおもうよ  初谷むい

『短歌 2022年8月号』

構造がしっかりしている歌

心臓と心のあいだにいるはつかねずみがおもしろいほどすぐに死ぬ  平岡直子

人間の普遍的生活様式に根ざしている歌

雨の降りはじめが木々を鳴らすのを見上げる 熱があるのかもしれない  阿波野巧也

上の歌はスマホ時代の歌というのだが、よくわからん。でも、俵万智がいるところで、俵万智の歌をあげているのが

相部屋の感想聞けば「鼻くそがほじれないんだ。鼻くそたまる」  俵万智

俵万智の短歌なら他に誰もが知っている歌よりもあえてこの歌を上げるのって悪意を感じてしまう。

そして、俵万智も穂村弘の短歌として上げたのが

なんとなく次が最後の一枚のティッシュが箱の口から出ている  穂村弘

もっと他にありそうなのに、それぞれの好みの違いを見ると面白い。

大森静佳は三人に選ばれていて俵万智だけ選んでないけど後から大森静佳『手のひらを燃やす』はめちゃいいと言っている。軽いな。

【U-25短歌選手権】

短歌は年代で区切るのが多い気がする。若者に広めることが短歌の生きながらえる道だと思っているのかもしれない。その弊害で実は分断しているのではないかと思うのだ。まあ短歌だけじゃないけどより分断が見える化しているのは、こうした商業誌の分断工作のせいだと思うのだ。はっきり言えば若者に媚びている。短歌も感性のあり方が上手いのだろうけど没個性のような感じを受けてしまうのはその小さな差異がよくわからないのだ。意味不明の内輪短歌が多いような。全然駄目な歌は作らないけど没個性的な。慣れもあるのかもしれない。最近は古い方の短歌に慣れつつあるような。

「かなしみの歌びとたち 第三十二回 前川佐美雄の振幅を読む(下)」坂井修一

この連載は短歌史なのだが、興味深く読んだ。小林秀雄『様々なる意匠』を引用して、近代日本の精神文化が森鴎外のような外国思想を取り入れながら日本精神の意匠(ブランド)を立ち上げようとする歌人たち。小林秀雄はそれを魔術的なものとしているのだが、裏を返せばまがい物で崇高な言葉もないとする。そして、坂井修一もその意見に賛同してもっと深い洞察が必要だというのだ。まったくそうなんだろうけど今の若者短歌とは逆の方向性な気がする。今は短歌界は過渡期なのかもしれない。



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