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シン・短歌レッス144


「百人一首」

思ったより「百人一首」で苦労している。もともと和歌はあまり好きじゃないのかもしれない。『源氏物語』の和歌とかわかりやすくて好きなんだが。「歌物語」だからかな。物語的なものを求めてしまう。

10 これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂(あふさか)の関 蝉丸

調子がいい和歌で大して内容があるとは思えないが恋なんてそんなものだ。

11 天津風(あまつかぜ雲の通ひ路(かよひじ)吹き閉ぢよ
をとめの姿しばしとどめむ 僧正遍照

強風でスカートがめくれたような感じか?


12 なげきわび空に乱るるわが魂を 結びとどめよしたがひのつま 六条御息所

『源氏物語』から、作者は紫式部なのだが登場人物に憑依したことで、六条御息所の物の怪になっても和歌を詠むというのが凄い。またその内容も。最後に葵が我に返るのだという。

13 空を かよふまぼろし 夢にだに 見え来ぬ魂(たま)の 行方たづねよ 光源氏

『源氏物語』で一番多いのはやはり主役である光源氏なのであろう。光源氏だけで221首という数だから紫式部の才能が伺える。中でも紫の上が亡くなった時の独泳が物語でも天に響く。

14 かこつべきゆゑを知らねばおぼつかないかなる草のゆかりなるらむ 紫の上

紫の上は光源氏が知り合う幼女時代から死ぬまでの和歌があり、和歌の成長も見られると思うのだが、最初に詠んだ和歌がこれだった。そして最後の歌が「おくと見る  ほどぞはかなき  ともすれば 風に乱るる  萩のうは露」「萩のうは露」の儚さ。この歌は最初の歌と対になっているような「かこつべきゆゑを知らねば」。「草のゆかりなるらむ」は草花の女たちの悲運を知っているのか?

15 荻の葉に露ふきむすぶ秋風も夕べぞわきて身にはしみける 薫

薫の和歌だが、紫の上の和歌に絡んでいるような。それも秋風に飛ばされる露なんだが。これは「荻の葉」だった。塚本邦夫が『王朝百首』で間違えたのと同じ間違いをするのか「荻」と「萩」は漢字にすると区別がつかないのでひらがなのほうがいいかも。それだと薫は爺臭い歌だな。

16 袖ぬるる露のゆかりと思ふにもなほうとまれぬやまとなでしこ 藤壺

『源氏物語』は高貴な姫ほど和歌が上手く作られているのは、そのように教育されているからで、近江の君の和歌が下手に作られる(でも面白い!)。のでもわかる。そういう意味では藤壺は見事な歌詠みだと思うのだが、この歌は生まれる子供に対しての「うとまれぬ」は解釈が真逆に分かれて面白いと思った。

17 末遠き  二葉の松に  引き別れ いつか木高き  かげを見るべき 明石の上

ただ紫式部は受領階級なので、受領階級の姫の歌に一番心情が乗っているのだと思う。明石の上の和歌には親子の別離の歌が多く、この歌は我が子と引き離されて成長を見届けなければならない悲しみが出ている。

18 末遠き  二葉の松に  引き別れ いつか木高き  かげを見るべき 玉鬘

玉鬘は光源氏から逃れた姫だが、その先を三途の川に例えているいう。

19 鐘の音の 絶ゆる響きに 音を添へて わが世尽きぬと 君に伝へよ 浮舟

浮舟の辞世の歌というがその潔さがいい。

20 草若み常陸の浦のいかが崎いかであひ見む田子の浦波 近江の君

近江の君は最も笑いを取る登場人物だが、こういう和歌を作ってしまうあえて悪例を示しているように思える。それも教育。

NHK短歌

入門編の「“私”に出会おう」。選者は川野里子さん。レギュラーの内藤秀一郎さんと深尾あむさんが2年目に挑戦。今回はリアルで心を表現。司会はヒコロヒーさん。

   

心を表現するにはものに託すのがいいのだが、そこにリアルさを織り込むことによって心が深まっていく。ヒコロヒーの心無いコメントがいいと思ってしまう。この対比がいいかな。

氷を溶かす、吾
鼻で笑ふ眼差しへ
そんな熱き思ひを
君に玉砕

リアルさがないか?

タイタニックを観る君は
鼻で笑ひ
吾は玉砕
冷房効きすぎ

<題・テーマ>川野里子さん「触れる」、俵万智さん「音」(テーマ)
~8月19日(月) 午後1時 締め切り~
<題・テーマ>大森静佳さん「迷い」(テーマ)、枡野浩一さん「いただきます/ごちそうさま」(テーマ)
~9月2日(月) 午後1時 締め切り~

        


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