田無
田無
2001年田無は消えて西東京市になった
エヴァンゲリオンの話でもなかった
僕が生まれたのは田無病院だった
今はないと母が言っていた
田無の響きに魂の消滅を感じていた
僕の生まれた場所はもう記憶の中にしか存在しない
そんな記憶も僕の記憶とともに消滅する
僕の文学空間
僕の架空の誕生日はユリシーズだった
桜桃忌に生まれたのに医者が勘違いして
ユリシーズの日に直したという
それも母の神話だったのだろうか?
ぶらん、ぶらん、振り子のように僕は生まれた
へその緒を首に巻き付けて架空のオペラを歌う
それでも僕は生きていた
医者に助けられた
恩人の名前も忘れてしまった母だけの記憶
そんな記憶ももう消えてしまうのだろう
田無のように
田無とそっとつぶやいてみる
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