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サイバーパンクだと侮るなかれ、新反動主義

木澤 佐登志『ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』を読んだ。新書全体が黒でデザインされていてページまでもが黒縁の暗黒仕立て。

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ペイパル(電子決算)の創業者ピーター・ティールはルネ・ジラールの影響を受けてニーチェの超人思想やサイバー・パンクのSFの影響下の中でネット世界のブラックマーケットに活路を見出し、リバタリアン系(新自由主義)のオルタナ右翼になる。そしてカール・ヤヴィンのファシズムは人間による支配ではなく、AIや地球外生物(神に代替わりする宇宙人『三体』的な世界だろうか?)で、それを「フナルグル」と名付け全体主義的独裁者となる国家を理想とする。そして、啓蒙哲学(カント)からの超越する「暗黒啓蒙」を提唱するニック・ランドへ。

ブラックマーケットが国家が支配するマネーではなく、ネット(仮想空間)の中で誰も自由に仕えるビットコインによる流通で欧米の支配する資本主義経済から第三国やネット個人の闇の流通網を形成していく。税金逃れの金余り現象の中で起業家の中でそうしたブラックマネーが拡がる。資本主義の形態もそれまでの国家主義的資本主義から脱領土化した資本主義社会の中で暗躍する闇社会となっていく(国家の統制が取れない)。

そこでは国家が脱領土化(ドゥルーズ=ガタリやデリダの80年代の現代思想を取り込んでいく)、ネット世界の新自由主義のなかで強大化していく脱領土化はネット社会で、啓蒙思想を否定する反人間主義(アンチ・ヒューマニズム)というサイバー・パンク上で展開される仮想空間の闇の領域に親和する。ニーチェの超人思想とSFのサイバーパンクとラブ・クラフトのオカルト思想を接続させたものだ。人類のカタストロフィー(終末論)は外部の存在(宇宙人的な知能)に組み込まれていて、そこを抜け出せるのは「闇の思想」を知るものだ。

資本主義を加速させてカタストロフィー後の世界を望む加速主義は、ラブクラフトが描くクトゥルフ神話の新世代(旧世代では異端であった神々)の超人を呼び覚ます(このへんはエヴァっぽい?)。80年代のオウム神理教とか誇大妄想化していくフィクション(虚構世界)が仮想空間(ネット世界)に結びついてブラックマーケットの中だけではなく、それがトランプのような指導者に呼び覚まされ肥大化していく世界は注意する必要があるだろう(ロシアや中国の闇社会の繋がりもあるようだ)。

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