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千夜待つ女もいれば、一夜の女もいる

『千夜、一夜』(2022/日本)監督久保田直 出演田中裕子/尾野真千子/安藤政信/ダンカン/白石加代子/長内美那子

解説/あらすじ
北の離島の美しい港町。登美⼦の夫が突然姿を消してから30年の時が経った。彼はなぜいなくなったのか。⽣きているのかどうか、それすらわからない。漁師の春男が登美⼦に想いを寄せ続けるも、彼女がそれに応えることはない。そんな登美⼦のもとに、2年前に失踪した夫を探す奈美が現れる。彼⼥は⾃分のなかで折り合いをつけ、前に進むために、夫が「いなくなった理由」を探していた。ある⽇、登美⼦は街中で偶然、失踪した奈美の夫・洋司を⾒かけて…。

coco映画レビュアー

この映画は今年の日本映画のベスト級じゃないかな。田中裕子は、アカデミー賞上げたいぐらいの演技だった。派手さはないが淡々として、感情を出すところはきりりとした感じで良かった。尾野真千子の激情的演技が霞んでしまうな。飄々とした安藤政信も良かった。あまり知られてない俳優だと思ったら『キッズ・リターン』で新人賞とか取っている人だった。全体的に重苦しい雰囲気の中で喜劇的な男がいることでメリハリが出来て、脚本も素晴らしいと思う。

題名の意味はいまいちよくわからなかったのだが、なるほどファンタジーだから「千夜一夜」をなぞっていたのか。夫が行方不明になった妻が夫を30年待ち続けるのは「愛」というファンタジーを信じているから。確かに30年ぐらい前はそんな時代もあったかもしれない。

現実的な女を尾野真千子が演じる。こちらは二年待ったけど夫は行方不明。拉致されたという噂(佐渡ヶ島だった)もあり、調査してもらうことに。そのときに調べるのが同じ境遇の女性だったのだ。しかし、若い女は待つことが出来ずに新しい恋人が出来て、とうとう離婚調停してもらって再出発の道を探る。そこにひょっこり帰ってくるのが元夫なのだ。

ダンカンは30年待つ女にしきりに一緒になりたい独身男。狂言回し的な。やっぱこの映画は脚本と人物のキャラ設定が素晴らしい。どうして話題にならないのかな。まあ地味過ぎる内容だとは思うが。キラキラ映画でもないし。

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