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アニメタイプのヒロイン・スパイが○

『崖上のスパイ』(2021年/中国)監督:チャン・イーモウ 出演:チャン・イー、ユー・ホーウェイ、チン・ハイルー、リウ・ハオツン

解説/あらすじ
1934 年冬、満州国のハルビンを舞台に、ソ連で特殊訓練を受けたスパイ・チームの男女4人が、極秘作戦“ウートラ計画”を実行するため現地に潜入する。目的は、日本軍の秘密施設から脱走した生き証人を国外に脱出させ、同軍の蛮行を世界に知らしめること。だが、仲間の裏切りによって、そのミッションは天敵である特務警察に察知されていた。執拗な追跡、次々と放たれる罠により、ついにはリーダーの張憲臣が特務の手に落ちてしまう。残された王郁、楚良、小蘭の3人と、彼らの協力者となった周乙は、八方塞がりの危機を突破し、命がけのミッションを完遂できるのか……。

coco映画レビュアー

チャン・イーモウは中国の市川崑(単にオリンピック監督だった共通点が)なのか。80年代のバブルに市川崑が角川映画で『犬神家の一族』や松竹『細雪』を撮ったような、そんな贅沢な国民映画という感じだった。

テーマが抗日スパイの物語だけに、サスペンス・ミステリーという感じか。内部に裏切り者がいたためにソ連で教育を受けた4人のスパイ(男女混合で一組は夫婦、一組は恋人同士)が暗躍する。密告(というより拷問による自白強要)によって、スパイの捜査は仕組まれており、彼らの行動は読まれているのだが、特務警察の中にもスパイがいたために警察とスパイの闘争=逃走になる。

4人のスパイの中で一人可愛い女子がいて、彼女がけっこうこの映画で注目されたようで、役柄が一見弱そうなのに実は得訓練を受けているから強い女子だったという。ただ彼女は一人残されてスパイ活動をしなければならず(相棒は捕まってしまった)その健気さと見守って上げたいという感じがドラマを盛り上げている。日本のアニメのヒロイン・タイプだった。

夫婦は、満州で残してきた子供も探しているのだが、作戦上夫婦は別行動になり、もう一組のカップルもそれぞれ別れて行動する。こういうところは、脚本の上手さなのか、スパイという目的以外に幼い頃に引き離された子供との再会というドラマもあるのだ。

アクションはすでにハリウッド・スタイルだった。チャン・イーモウは国際的な監督だっけあって、そういうのは研究しているだろう。映画館のシーンは、チャップリンのオマージュも。オープニングの雪の森にパラシュートで降りてくるアクション・シーンとか迫力があり見せ場もある。ドラマ的にも仲間との別離や子供との再会など飽きさせないストーリー展開になっている。スパイ物に歴史的なフィクションだから中国人でなくても(日本は敵国だけど)盛り上がるストーリーだった。

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