『アイアンクロー』意匠としてのアイアンクローはどうして消滅したか?
『アイアンクロー』(2023年製作/132分/G/アメリカ)監督: ショーン・ダーキン 出演: ザック・エフロン/ジェレミー・アレン・ホワイト/ハリス・ディキンソン/モーラ・ティアニー/スタンリー・シモンズ/ホルト・マッキ ャラニー/リリー・ジェームズ ほか
呪われた「鉄の爪」ファミリーの実話ドラマ。「アイアンクロー」といえばフリッツ・フォン・エリックはプロレスファンに馴染みがあるが、プロレス人気だった頃はアイアンクローごっこが流行るぐらいのレスラーだった。ただ決め技がこれしかなく、見た目は地味過ぎるのだが「鉄の爪」という恐怖感か?当時は一つのオリジナル技が必殺技という決め技になったのがだんだんそうした決め技が効かなくなってしまったのはなんだろう?
それだけでスーパースターレスラーのように感じられたのだが(そう言えば筋肉マンの「ウォーズマン」の必殺技がアイアンクローだが、すぐに通用しなくなり他の物語を必要としていくのだった)。技がそれしかないから、プロレスの全盛期は(第二次ブームかな)それほど話題にもならなくなり、例えばフリッツ・フォン・エリックの息子たちはアイアンクローだけではやっていけないのだ。その悲劇と言えるのかもしれない。
父親世代の職人としてのアイアンクローという必殺技は秘伝であるわけだが、そうしたものもメジャー化させたインスタントな味になれた観客(刺激性の強い味覚だろうか)、それを見せる広告化されたプロレスとなっていくのだった。そうした過渡期に来日した息子の突然死という悲劇があり、また次々と連鎖していく息子たちの悲劇は意匠であるオヤジが企業経営化するにしたがって崩壊していくものであったかもしれない。
そういう悲劇性が呪いという昔ながらの物語として映画で語り直されている映画なのだと思う。映画はプロレスファンでなくても面白いが、プロレスファンはどうなんだろう。もっとリアルなプロレスが見たかったとか。日本時代のアイアンクローとか、例えば日本ならジャイアント馬場との熱戦があったはずとか。今見ると茶番っぽいと思うかもしれない。
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