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秋のジャケット展覧会

先日の「ジャズトゥナイト」はジャケット特集で、ジャズ・ファンでもジャケ買いして、部屋に飾っておく人がいると思います。ブルーノートにそういうデザイン的な写真が多かったりします。ただここは写真ではなく、芸術の秋ということで絵に限定しようと思います。本当はユージン・スミスのような写真のジャケットもいいのですが。

セロニアス・モンク『アンダーグラウンド+3』(1968)

まず最初に取り上げるのは「グラミー賞の最優秀アルバム・カヴァー賞」(こんな賞があるとは知りませんでした)を受賞したというこのジャケット。フランスのレジスタンスを描いたものらしいですけど、エミール・クストリッツァ監督の映画『アンダーグラウンド』のサウンド・トラックと間違えそうな絵です。

音楽もレギュラー・メンバーにジョン・ヘンドリックスのヴァーカルがご機嫌なバド・パウエルに捧げた「イン・ウォークド・バド」。ジョン・ヘンドリックスはスキャットでこなしてしまうのだから凄い。ちなみにチャーリー·ラウズは父親の葬儀のためにモンクとの最後のアルバムでこの後半は参加できなかったとか。そのへんの運のなさがチャール・ラウズなのか。

Don Friedman"Circle Waltz"(1962)


Don Friedman – piano
Chuck Israels – bass (tracks 1–5 & 7)
Pete LaRoca – drums (tracks 1–5 & 7)

ビル・エヴァンスとも比較される耽美派ピアニスト、ドン・フリードマンの代表作です。音楽もさることながらジャケットが美しいです。よく見るとなんの絵かわからないですけど。「機械じかけの裸婦」ですか?ピアノがそんなイメージなのか、複雑な構造の中にエロスが宿る。

楽曲は一曲目から素晴らしい。ワルツの自作曲で、ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビイ」を意識したのかもしれないです。チャック・イスラエルはビル・エヴァンス・トリオでやっていたベーシストで、ピート・ラロッカもバシバシ叩くというタイプでもなく繊細なドラミングに徹しています。

「アイ・ヒア・ア・ラプソディ」はスタンダードで他のジャズ・ミュージシャンもよく演奏しています。ビル・エヴァンスとジム・ホールの共演盤が有名。エヴァンスよりもアップテンポで軽快感があり、それが親しみやすさに繋がっていると思います。

ソロ・ピアノによる「ソー・イン・ラブ」は最初はスローなテンポながらアドリブになると急にめらめら燃えるような演奏です。以外に力強い一面もあります。彼の特質がソロだとよく出ているようで。

最初はビル・エヴァンスを意識していながら乗ってくるとガンガン行くタイプでそのへんに親しみやすさがあるようです。

Paul Bley"Alone ,Again"(1975)

ピアノに顔を重ねたシュールレアリスムを思わせる絵のアルバム。耽美派と言えば彼ほど耽美なピアニストはいないと思います。演奏している楽曲も元妻であったカーラ・ブレイとアーネット・ピーコックの曲を惜しげもなく弾き散らかしている。三角関係の最中の孤独さとでもいいましょうか、その頂点で正座させられている痛々しさ。

一曲目の「オジョス・デ・ガト」はカーラ・ブレイの曲。むき出しのピアノ線を掻きむしる音から静かに淡々と過去を振り返るような曲です。

その後に自作曲の「バラード」。それもソロ・ピアノで内に沈んでいきます。

アーネット・ピーコックの曲は「ドリームス」。このアルバムの前に『オープン・トゥ・ラブ』という対になるアルバムがあるのですが、そっちはアーネットの曲が印象的でバランスを取っているのです。その間に自作曲を淡々と。


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