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『TAR/ター』はマーラーが聴きたくなるか?

『TAR/ター』(2022/ アメリカ)監督トッド・フィールド 出演ケイト・ブランシェット/ノエミ・メルラン/ニーナ・ホス/ジュリアン・グローヴァ—/マーク・ストロング

【ストーリー】
ドイツの有名オーケストラで、女性としてはじめて首席指揮者に任命された指揮者リディア・ター(ケイト・ブランシェット)は、天才的能力と、たぐいまれなるプロデュース力で、自身を1つのブランドとして作り上げてきた。しかし、のしかかる重圧、過剰な自尊心、仕掛けられた陰謀により、彼女の心の闇は少しづつ広がっていくー。

「TAR/ター」という題名がわかりにくい。女性指揮者の名前なんだけど「タクト」の意味もあるのかな。バーンスタインの弟子で女性でベルリン・フィルの常任指揮者になったターの権力とスキャンダルの崩壊の映画なのだが、ラストが崩壊していた。ダラダラ159分は長い。隣がスマホいじり始めるし、まあシネコンの客はそんなもんだけど。

オープニングにクレジットロールが延々と出て、今までの映画と違った。なんでだろう。後だとエンディング・ロール見ないで席を立つ人がいるからだろうか?そこで焦らされて、いきなりオーケストラのリハーサル風景(ジュリアードの授業)はいいと思う。でもあまりそういうシーンがないように感じた。ドラマの邪魔になるからか?そういうシーンをもっと期待したのだが。なんならマーラー5番全曲でもいいよ。そうなると映画が違ってくるが。

女性指揮者の権力という前半は面白かった。ケイト・ブランシェットもそういうプライドの高い女性の役柄が合っていた(威圧的な)。この指揮者がレズビアンということでスキャンダルになるのだが、それはターが自分勝手に仕事とプライベートを分けなかったからなのだが、そこまでは面白いと思った。ネットの動画でスキャンダルが拡散されたり、女性指揮者も大変だなと同情的にもなるが、最初の指揮者としての強引さが仕方がないと感じさせてしまうのだ。ストレスで些細な音に反応するとか、そこはホラー映画のようで面白かったが。

全体的に最初の権力者としての強引さがあるから同情していいのかどうか迷う。そこをどっちかはっきりさせた方が良かったかもしれない。エンタメ映画としてはそこがわかりにくいというのがあるのかもしれない。ターに同情できるかどうかというところが微妙なんだと思う。

いろいろな問題を明らかにしているクラシック界の裏側みたいな映画として見れば面白いのかもしれない。ただラストはひっぱりすぎたと思う。終わる所で終われなかったのがこの映画の欠点だろう。

最後のバーンスタインのコトバを聴くシーンはジーンときた。『ベニスに死す』が見たくなる映画かも。


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