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カタロニア解放戦線、自由を夢みてアメリカへ

『LIBERATION MUSIC ORCHESTRA』1969年4月27日~29日/ニューヨーク /チャーリー・ヘイデン、カーラ・ブレイ、デューイ・レッドマン、ドン・チェリー、マイク・マントラー、ハワード・ジョンソン、ポール・モチアン、アンドリュー・シリル

チャーリー・ヘイデンの代表的傑作アルバムとして上げられるのは、このアルバムを置いて他にないでしょう。スイングジャーナル・ジャズディスク大賞にも選ばれています。それまでの少人数のジャズではなく、ビッグバンド(エリントンで紹介したか)のオペラのような組曲です。ジョージ・オーウェル『カタロニア讃歌』からインスピレーションを受けて、創作されたそれまでの作品とは肌合いが違います。その影の力となったのが、女性でアレンジャーのカーラ・ブレイなのです。

HMVの再発でチャーリー・ヘイデンのことを「孤高のベーシスト」と書いてますけど、どこが「孤高」なのでしょうね。チャーリー・ヘイデンほどフリー・ジャズからメインストリーム・ジャズまで多彩なメンバーと共演したベーシストはいないでしょう。実際にこのアルバムのメンバーの凄さと言ったら。『オールド・アンド・ニュー・ドリームス』のデューイ・レッドマンもこの頃からの知り合いでした。このアルバムでは全然目立たないけど。それもガドー・バルビエリという映画『ラストタンゴ・イン・パリ』で音楽を担当したアルゼンチンのテナー・サックス奏者が目立ちすぎるのです。

"The Introduction" (Bley) / "Song of the United Front" (Bertolt Brecht, Hanns Eisler) – 3:07
"El Quinto Regimiento" ("The Fifth Regiment") (Traditional; arranged by Bley)
"Los Cuatro Generales" ("The Four Generals") (Traditional; arranged by Bley)
"Viva la Quince Brigada" ("Long Live the Fifteenth Brigade") (Traditional melody; words by Bart Van Derschelling) – 20:58
"The Ending to the First Side" (Bley) – 2:07

「リベレーション・ミュージック・オーケストラ」レコードで言うところのA面すべてがこの組曲です。「カタロニア讃歌」のストーリー(ノンフィクションですけど)の楽曲にところどころ当時の歌も挟みながらバリエーションに富んだ楽曲が続きます。もっとも長く中心をなす「第5連帯~4人の将軍~第15旅団」はギターのサム・ブラウンのフラメンコ調のギターからどんどん盛り上げていきドン・チェリーのソロが素晴らしい。そのバックでのヘイデンのベースも力が入っている。

それとやはりドン・チェリーがいいアクセントとなっている。オペラで言うところのカウンター・テナーでしょうね。そのアレンジをしたのが才女カーラ・ブレイで、面白いのは「スペイン市民戦争」当時に流行った音源も使われているところです。

"Song for Ché" (Haden) – 9:29
"War Orphans" (Ornette Coleman) – 6:42
"The Interlude (Drinking Music)" (Bley) – 1:24
"Circus '68 '69" (Haden) – 6:10
"We Shall Overcome" (Zilphia Horton, Frank Hamilton, Guy Carawan, Pete Seeger) 1:19

B面は小曲集ですが、A面が「カタロニア讃歌」当時の歌をモチーフにしたのなら、B面は1968年当時の世界情勢の曲で「チェ・ゲバラに捧げる歌」はヘイデンの畢竟の曲。オーネット・コールマンの曲「戦争孤児」も入ってます。そして、最後が「勝利を我らに」で締めくくります。1968年当時のアメリカの民主化運動(公民権運動など)で無くなったキング牧師やマルコムXらに捧げられています(ケネディー大統領も)。

(ジャズ再入門vol.15)

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