浮草のぼうふら湧くや環世界
『浮草』(大映/1959)
名匠・小津安二郎が愛と微笑みの心でうたいあげた人生の真実!
胸打つ哀愁と感動の文芸巨編が4Kデジタル修復で甦る!
★宮川一夫撮影によるアグファカラーも美しい人情話の傑作。
小津映画の中でも異色作として高い人気を誇る!
★小津映画おなじみの笠智衆、杉村春子に加え、京マチ子、若尾文子、川口浩ら大映スターが加わり、さらに歌舞伎役者・二代目中村鴈治郎を主役に迎えた豪華キャスト。
あややと呼べる若尾文子はこれが一番かな。マチ子姐さんにそそのかされて川口浩を誘惑するシーンの鉛筆ペロッとか、鴈治郎に足蹴にされてよろめきヒドイとか、それでも一座が解散したにもかかわらず一人になった親方に付いて行きますという健気さが好感持てますが、えっ浩の嫁になってしまうの(ため息)。あの「アカン、アカン」の連呼に童貞ならやられるわ。
でも若尾文子が一番の見所でもなく、やっぱ京マチ子と鴈治郎との大雨の軒先隔てた喧嘩のシーンとか、あんなに喧嘩しといてそれでも鴈治郎と仲直りしたい女心とか、駅の待合室での煙草のシーンの格好良さとか。鴈治郎も味がある役者だ。目が三角につり上がったりする頑固親方だった。(2016/02/16)
京マチ子の命日が5/12日で、誰の京マチ子が好きかなと思って観たら、やっぱこの映画は良かった。
今村昌平『赤い殺意』の予告編で「重喜劇」とフリップが出ていたのは、小津安二郎の「軽喜劇」に対抗して付けたのだな。この作品を観ると「軽喜劇」の良さが十分楽しめる。
鴈治郎の旅芸人の親方と息子である川口浩の会話。おっさんのスタイルふるいわ、何が古い、社会性がない、そんなもんあるか、客を笑わせてなんぼじゃ。正確ではないがそんなところ。小津の映画スタイルを代弁させている。
その頑固性が宮川一夫撮影のカットの数々なのだろう。色もこだわりのアグファ・カラー。ハリウッドやヨーロッパ映画よりは湿った質感。その赤といい緑といい、あの時代の色なのかなとも思う。蚊取り線香とか。
それでいて喜劇性は最大限に発揮されている。三馬鹿トリオの役者や子役まで笑いを誘う。それと賀原夏子のシミーズ姿。今ではあんなオバサンはいないだろうけど、自分が子供の頃はいたな。エロいといより懐かしさだった。
鴈治郎の頑固ジジイも今ではもう絶滅種だから懐かしく面白いのだろう。まあ、セクハラやパワハラだらけの映画だがそれを軽喜劇(笑い)として描いているところが今でも再鑑賞に耐えられるのだろう。
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