孤独な声を聞きながら居眠りしていた映画
『孤独な声』(1978年/ソ連)監督:ソクーロフ 出演:タチヤーナ・ゴリャーチェワ、アンドレイ・グラードフ
迂闊にもほとんど寝ていた映画だったのだが重要性に気がついたのは帰って少しネットで調べて。なんでタルコフスキーに感謝する言葉があったのか映画だけでは理解できなかったのだが、そういうことがあったのかと。つまりソ連では上映禁止処分どころか映画そのものが没収されそうになったのをタルコフスキーが手を回してくれたのだ。
ソ連の権力が恐れたのは強制労働のシーンだろう。映画ではよく分からなかったのだが、プラトーノフ原作ということはそういう映画だったのだ。プラトーノフは最近も注目され始めている旧ソ連の作家。以前ブームだったときに岩波からでた短編集と『土台穴』を読んでファンになった。そうだ『ジャン』という名作があったのだ。世界文学全集に納められていたと思った。
そんなプラトーノフ原作の映画化だと知ったのは後からだった。まあ居眠りしていてはしょうがないが。ソクーロフの映画は眠たくなるのが多いが目覚めたときに異化世界に連れってってくれるのでそれだけで満足している。彼岸性(最近のキーワードだ)のようなもの。それで絵画的な幻想性があるのだが、すでにデビュー作からそうだった。今のテクノクラート史上主義にあるのとは逆のアート作品映画なのだ。技術は、次に凄いのが出たときには見向きもされなくなる(映画史としては貴重なのだろうが)。だからマルチバースがいくら凄くともソクーロフの視線(単一のと書こうとしたが二つの目で見ている)の社会性や芸術性には敵わない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?